エンディングクレジットをじっくり見ると、「これは絶対にねらっている」と思わずにやりとしてしまう瞬間があります。声優の名前と役名が一致していたり、キャラクター名の由来が担当声優と深くつながっていたり——そんな「ざわざわ」するキャスティングが話題を呼んだアニメ作品があります。
◆「野ざわ...雅子」の贅沢な使い方で話題沸騰——『中間管理録トネガワ』
『カイジ』シリーズの代名詞とも言える効果音「ざわざわ」。アニメ『中間管理録トネガワ』では、このざわボイスのキャスティングにとびきりのこだわりが発揮されました。担当したのは、名前に「ざわ」「さわ」の音が含まれる声優ばかり。
花澤香菜さん、沢城みゆきさん、芹澤優さん、小澤亜李さん、黒沢ともよさん、井澤詩織さんといった面々が名を連ねました。
中でも驚かせたのが、大御所声優・野沢雅子さんのチョイ役参加です。エンディングのキャスト表には「野ざわ...雅子」とひらがなで「ざわ」を強調した遊び心ある表記が施され、視聴者の間では「野沢雅子の贅沢な使い方」「沢や澤がつく声優どんだけいるんだよ」と大きな盛り上がりを見せました。
また、第8・9話の『1日外出録ハンチョウ』では、タイトルをもじって潘めぐみさん(表記はハンめぐみ)とチョーさんという「ハンチョー」コンビが出演するなど、徹底した言葉遊びの精神が光ります。
◆プロレスラー夫婦まで登場した佐々木さん大集結——『佐々木とピーちゃん』
第1話のモブキャラクター枠に、佐々木睦さん、佐々木未来さん、佐々木健さん、佐々木祐介さん、佐々木拓真さん、佐々木奈緒さん、佐々木愛さん、佐々木亜紀さんと、佐々木姓の声優が勢ぞろい。さらにはプロレスラー夫婦の佐々木健介さんと佐々木久子(北斗晶)さんまでも出演し、一気に注目を集めました。
キャスティングされた声優たちの多くが、香盤表を見て笑ってしまったと語っており、収録ブースに多くの佐々木さんが集結するという異例の光景が生まれました。演出時に名字では区別がつかないため、下の名前で呼び合う新鮮な体験が続いたそうです。
最終話での佐々木望さん(『幽☆遊☆白書』の浦飯幽助役で有名)の登場を望む声も多くありましたが、佐々木姓キャスティングが第1話のみにとどまったのは惜しまれるところです。
◆ガンダムファンへの「ご褒美」が随所に散りばめられた『名探偵コナン』
赤井秀一を演じるのは、『機動戦士ガンダム』でシャア・アズナブルを担当した池田秀一さん。そして、そのライバルキャラクターとも言える安室透には、アムロ・レイ役で知られる古谷徹さんがキャスティングされています。「これはキャラクターより先に声優ありきで設計されたのでは」という声がファンの間で一気に広まりました。
実際、原作者の青山剛昌先生は大の『ガンダム』ファンとして知られており、作中には随所にガンダム愛が刻まれています。
赤井秀一の別名・沖矢昴は、シャアの本名「キャスバル」が由来。妹の世良真純はシャアの妹「セイラ・マス」から命名されており、安室透の愛車がガンダムの形式番号RX-78にちなんだRX-7であることも、ファンなら思わず膝を打つポイントです。
さらに興味深いのは、安室透のキャラクター名が当初「白井」だったという経緯です。「連邦の白い悪魔」から着想を得たと思われるこの名前は、池田秀一さんに赤井役のライバル登場を伝えた際の一言——「それなら声優は彼で決まりですね」——をきっかけに、古谷徹さんの起用とともにキャラクター名も変更されたとされています。
黒の組織での安室透のコードネーム「バーボン」にも、隠された由来があるといわれています。古谷徹さんが『機動戦士ガンダム00』で別名義「蒼月昇」としてリボンズ・アルマークを演じたことから、リボンズ→バーボンというコードネームになったのではないかという考察がファンの間で生まれています。
『ガンダム』でかつて宿命のライバルだったアムロとシャアが、コナンの世界でも因縁深い二人を演じている——そのロマンにざわめくのは、ガンダム世代のファンだけではないでしょう。
◆主人公は「小野」しばり? 3部作続いた偶然に「もはや小野の奇妙な冒険」——『ジョジョの奇妙な冒険』
第3部「スターダストクルセイダース」の空条承太郎役に小野大輔さん、第4部「ダイヤモンドは砕けない」の東方仗助役に小野友樹さん、そして第5部「黄金の風」のジョルノ・ジョバーナ役に小野賢章さん——主人公を演じる声優が3部にわたって小野姓で続いたことが、ファンの間で大きな話題となりました。
小野賢章さん本人も、キャスティングが決まった際に「冗談ではないか」と思ったと語っており、その驚きは自然なものでしょう。ただし、3人全員がオーディションを経て選ばれた実力派であり、各キャラクターへの声のはまり具合は作品を観れば明らかです。
名前で選ばれたわけでないことは明らかですが、それでも「もはや小野の奇妙な冒険」「ジョースター家がいつの間にか小野一族になっている」とネットでネタにされ続けるほど、印象に残る偶然の一致でした。
──ちなみに『名探偵コナン』の高木刑事と千葉刑事は、それぞれ声優の高木渉さん・千葉一伸さんの名前がそのままキャラクター名に採用されたケースです。当初は名前が設定されていなかったものが、テストアフレコのやりとりがきっかけとなり、そのまま定着したといいます。
つい飛ばしてしまいがちなエンディングクレジットですが、キャスト一覧を眺めてみると、制作陣の遊び心や偶然の産物が隠れているかもしれません。
〈文/士隠カンナ〉
《士隠カンナ》
1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。
※サムネイル画像:『TVアニメ「中間管理録トネガワ」キービジュアル (C)福本伸行・萩原天晴・三好智樹・橋本智広/講談社・帝愛グループ 広報部』

