ピンクの覆面をかぶり、正体を徹底的に隠し続けた昭和の国民的アイドル。歌手のクレジットまで偽名にするほどの徹底ぶりで登場したその人物の正体は、小泉今日子さんでした。
アニメの世界に芸能人が「本人役」として登場するケースは、実は思いのほか存在します。既存キャラクターとの夢の共演、本人の特徴を忠実に再現したキャラクターデザイン──普段とは異なる角度からスターを楽しめるのが、本人役出演の醍醐味といえます。
◆「あたし仮面(仮)」として姿を現した昭和の国民的アイドル──『あたしンち』
2024年に連載30周年を迎え、YouTubeでもアニメ『あたしンちNEXT』が配信された『あたしンち』には、小泉今日子さんが本人役で出演していました。しかも、その出演方法が非常にユニークなものでした。
2代目アニメ(『新あたしンち』、2015年10月〜2016年4月放送)のオープニングテーマを担当した小泉今日子さんは、エンディング後のおまけコーナーに登場。しかし当初は本人としてではなく、「あたし仮面(仮)」というピンクの覆面姿のキャラクターとして出演し、歌手クレジットも同名義で表記されていました。正体を徹底的に伏せる姿勢は視聴者の関心を集め、唯一無二の歌声からピタリと当てた人も少なくなかったといいます。
正体が明かされると、アイドルらしい華やかな衣装をまとった「あたしンち画風」の小泉今日子さんが登場。視聴者に演者を当てさせるというエンターテインメント性あふれる演出が話題を集めました。
◆世界的ミュージシャンが劇中でプロデューサー役に──『バクマン。』
2010年にアニメ第1シリーズが放送された『バクマン。』には、L'Arc〜en〜CielのHYDEさんが本人役で登場しました。
登場したのは第21話「文学と音楽」。マンガ家兼トップアーティスト・KOOGYのプロデューサーという設定で出演し、ライブを称えるシーンでは声優・森久保祥太郎さんとの絶妙な掛け合いを披露しています。
さらに、HYDEさんが当時ボーカルを務めていたユニット・VAMPS(現在活動休止中)の楽曲「GET UP」「EUPHORIA」が劇中歌として使用されたほか、原作漫画ではVAMPSのギターやアクセサリーがKOOGYの私物として描かれるなど、作品との多彩な結びつきが随所に見られました。
◆コナンの世界に飛び込んだ人気女優──『名探偵コナン』
推理マンガの金字塔『名探偵コナン』では、毎年劇場版のゲスト声優が注目されますが、1996年から続くアニメシリーズにも芸能人が本人役でキャスティングされることがあります。女優の上戸彩さんもその一人です。
上戸彩さんが本人役に挑んだのは、2006年放送の第437話「上戸彩と新一 4年前の約束」。工藤新一に調査を依頼する役柄で登場し、コナン・蘭・園子ら人気キャラクターとの共演を実現しました。過去の回想シーンでは新一との2ショットも描かれ、意外なつながりを軸にしたオリジナル展開が大きな反響を呼びました。
その後、上戸彩さんは2018年公開の劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』でゲスト声優としても出演を果たし、約12年ぶりのコナンとの再共演が実現しています。なお、同シリーズには松尾貴史さんや中山秀征さん、倉木麻衣さん、市川海老蔵さんらも本人役として出演しており、多彩な顔ぶれが作品を彩っています。
◆「アンミカ節」がアニメの世界に響く──『僕とロボコ』
2022年にアニメが放送され、2025年には劇場版『僕とロボコ』が上映された『僕とロボコ』には、モデル・タレントとして幅広く活躍するアンミカさんが本人役で登場しました。アニメ第27話「理想とロボコ」に出演し、主人公・ロボコが憧れる理想の女性として描かれています。
トレードマークの黒いストレートロングヘアや印象的な大きな口など、本人の特徴が忠実に再現されたキャラクターは一目でアンミカさんと分かるほど。
劇中では「夜はあかん、朝考えよう」「学びと発見があれば人生に失敗なんてないんやで」といったポジティブな名言が飛び出し、まさに「アンミカ節」が炸裂するシーンが話題を呼びました。また、第19話・第20話にはお笑い芸人のケンドーコバヤシさんがボンドの担任「ケンコバ先生」として登場し、シュールな笑いをさらに加速させています。
──小泉今日子さん、HYDEさん、上戸彩さん、アンミカさん……それぞれがユニークな形でアニメの世界に登場し、作品に新たな魅力を加えてきました。本人の個性やパブリックイメージを巧みに活かした本人役は、ファンにとって予想外のサプライズであり、作品そのものの話題性を高める効果もあります。アニメを見返す際には、「本人役」という視点を持ってみると、また新たな楽しみ方が広がるかもしれません。
〈文/士隠カンナ〉
《士隠カンナ》
1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。
※サムネイル画像:Amazonより 『「あたしンち」第5巻(出版:朝日新聞出版)』

