『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:Re:』の上映が8月9日から始まり、結束バンドの露出も一気に増えています。各所で楽曲なども耳にすることも多くなると思うのですが、注目してほしいのはその歌詞。特殊な制作体制のおかげでかなり聴きごたえのある内容となっています。
◆本気でバンドやってみた!『ぼっち・ざ・ろっく』のすごいところ
そもそも前提として、TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』は挑戦的で特殊なことをやっているアニメシリーズです。
原作は『まんがタイムきららMAX』で連載中のはまじあき先生の4コマギャグ漫画で、アニメシリーズではそこに演奏などの、漫画では表現できなかった実際の音楽の要素を肉付けして、結束バンドがより実際に活動しているかのように見せてくれています。
中でも作中に登場する結束バンドの楽曲については、実際に登場キャラクターたちが曲を作ったらこんな感じになるだろうというイメージのもと制作されており、歌唱はボーカルの喜多郁代役の長谷川育美さんを始め、アニメのキャストが担当してより臨場感を出しています。
結束バンド自体の人気の高さから、結束バンド名義でのライブツアーや音楽フェスへの参加もしており、さすがにボーカル以外の演奏までもキャストのメンバーで再現するところまでは至らないものの、後藤ひかり役の青山吉能さんがギター初心者ながらギターを特訓して、実際のライブで演奏を披露するという一幕もあったりとアニメ以外の舞台でも盛り上がりを見せています。
◆ぼっちちゃんらしい歌詞だけどキャッチーな歌詞たちの正体
そんな結束バンドの楽曲なのですが、TVアニメ第4話「ジャンピングガール(ズ)」でも描かれていたように、作詞を主人公である後藤ひとりが担当しているという設定があります。そのため結束バンドの曲はいずれも「ぼっちちゃんが書きそう」な歌詞として制作されているという特徴があります。
曲によって作詞を担当するアーティストは実は異なっており、後藤ひとり曰くの“根暗でどんより”した歌詞をいろんなプロの方が“ぼっちちゃんになりきって”書いてくれています。
その結果、何が起きているかといえば後藤ひとりがゴリゴリに作詞の才能がある人物と化してしまっているのが面白い点です。
たとえば、TVアニメシリーズのオープニングテーマ「青春コンプレックス」の作詞を担当しているのはシンガーソングライターのヒグチアイさん。TVアニメ『「進撃の巨人」The Final Season Part2』のエンディングテーマ「悪魔の子」なども歌っている方です。そんなヒグチさんの手がけた本作の歌詞は、序盤で屈折してそうな性格を描きながらサビの「かき鳴らせ」のフレーズでフラストレーションを解き放つ、気持ちの良い曲を作りあげています。
TVアニメの第4話〜7話のエンディングテーマに起用されている「カラカラ」の作詞は、ジェニーハイのボーカルとしても知られる中嶋イッキュウさんが担当しています。
本作のボーカルは山田リョウ役の水野朔さんが歌っているという点でも結束バンドの中でも特殊な曲でもあるのですが、歌詞の面でもかなり尖っています。「前借りしてる この命を使い切らなくちゃ」「スカート揺れる教室の隅で ずっと溢れる夢を抱きしめてた「きっとやれるわ」」など、もはや高校生とは思えないぐらい達観したセンスのフレーズが並んでいて、関心させられます。
いずれも後藤ひとりらしい鬱屈した性格が前提にある歌詞なのですが、どれもキャッチーなフレーズがサビに用意されていたり、興味をひかれる表現があったりと、隠しきれない“プロのお仕事”ぶりが顔をのぞかせているのが面白いところです。
そして、今回の劇場版シリーズに合わせて結束バンドも新曲を続々と発表しています。今回も前提は“後藤ひとりが作詞をしている”という体裁で制作されています。ぜひ映画の予習・復習に結束バンドの曲を聞くときは、ぼっちちゃんが歌詞を書いているというイメージをしながら聞いてみたり、実はどんな人が楽曲の制作に参加しているのだろうと調べて、その豪華な布陣に驚いてみてください。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!」公式サイトより
©はまじあき/芳文社・アニプレックス