強い機体ほど、パイロットにやさしいとは限りません。『ガンダム』シリーズには、高性能と引き換えに、搭乗者へ重すぎる負担を強いる機体が登場します。性能を突き詰めた先に生まれた、危険すぎる機体たちにはどのようなモノがあるのでしょうか──?
◆ニュータイプへの危機感に取り憑かれた機体
ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』に登場するブルーディスティニーは、蒼く塗装された不気味な姿と、圧倒的な戦闘能力で知られています。そんな本機の本質は、搭載された特殊OS「EXAMシステム」です。
このシステムは、ジオン公国軍から亡命したクルスト・モーゼス博士によって開発されました。ゲーム内において、博士はニュータイプに対する恐怖感から、オールドタイプがニュータイプを殲滅できる力を得ることに執着しましたと設定づけられています。結果、この危ないシステムが生み出されます。
EXAMシステムは、ニュータイプの殲滅を目的としたシステムです。最大の特徴は、システム内には封じ込められたニュータイプの少女の意識を利用し、ニュータイプが発する特殊な脳波を感知・追尾できる点であることが、ゲーム『機動戦士ガンダム外伝3 裁かれし者』ステージ4にて解説されています。これにより、オールドタイプが操縦していても、機体に常人を超えた反応速度と機動性を付与できます。
ただ、システムを起動した際の、パイロットへの負荷は一切考慮されていません。そのため、EXAM起動後、システムによってもたらされる加速は、一般的な兵士が耐えられるものではなかったのです。さらに、パイロットにはシステムによるニュータイプの殲滅衝動など、精神的負荷もかかると、ゲーム『機動戦士ガンダム外伝1 戦慄のブルー』内で説明されています。
そのため、戦闘中にパイロットの肉体的、精神的にかかる負荷は想像を絶していました。実際、1号機の稼働試験中には、システムの暴走とあまりの負荷に耐えきれず、テストパイロットが命を落とすという凄惨な事故がゲーム『機動戦士ガンダム外伝1 戦慄のブルー』内では起きています。
また、EXAMシステムには、同様のシステムを搭載した機体を、ニュータイプと誤認識する特性があることが、ゲーム『機動戦士ガンダム外伝2 蒼を受け継ぐ者』で解説されています。そのため、EXAM搭載機が戦場に複数揃うと、同士討ちを始めるという欠陥まで抱えていたのです。
戦場を蹂躙する力を手に入れる代わりに、パイロットの命すら捧げなければいけない本機は、まさに「蒼い死神」の異名に相応しい機体といえるでしょう。
◆人格すらも書き換える欠陥機
『機動戦士ガンダムU.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』の主役機であるガンダムデルタカイは、百式の系譜を継ぐ可変機であると、書籍『モビルスーツ全集10 可変モビルスーツ・モビルアーマー』(出版社:双葉社、2016年3月9日出版)で説明されています。しかし、そんな本機の本質は可変機構ではなく、内部に埋め込まれた「n_i_t_r_o(ナイトロ)」と呼ばれるサイコミュ装置にあります。
本システムの特徴は、ニュータイプ適性のないオールドタイプに擬似的にニュータイプ能力を付与し、ファンネルなどのサイコミュ兵装の使用を可能にすることです(プラモデル『HGUC 1/144 ガンダムデルタカイ』の取り扱い説明書参考)。つまり、投薬を行わずに、現場で強化人間を作り出せるお手軽さが、本システムの肝となっています。
ただ、能力を付与する方法は、パイロットが命を落とす危険すらある、非常に恐ろしいものです。
『機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』(出版社:KADOKAWA、2013年8月23日)によると、n_i_t_r_oはシステム側からパイロットの脳へ、膨大な情報を流し込むことで、強制的に脳を作り替えていくといいます。つまり、ニュータイプ機を操れるように、パイロットの脳を最適化するのです。
この過程で、パイロットの脳にはとてつもない負荷がかかり、人格にすら影響を及ぼします。そのため、温厚な人物でも、一度 n_i_t_r_o 搭載機に乗れば、攻撃的で情緒不安定な性格へと塗り替えられてしまうのです。
そして、脳への負担は最終的に人格だけでなく、身体にすら影響を及ぼし、治療を行わなければ、命まで落とす危険性があります。『機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』では、イング・リュードが本機に乗り続けた結果、脳に異常をきたし、最終的には命を落としました。
ちなみに、初期の n_i_t_r_oにはリミッターがないのか、一度でもシステムを起動すればパイロットが命を落とす、異常な仕様となっていることに『機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』では触れています。機体の性能を追求するあまり、パイロットを使い捨ての部品として扱う n_i_t_r_o は、宇宙世紀の技術史における闇の象徴といえるでしょう。
◆最大加速で空中分解必至
『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に登場するヅダは、ツィマット社(ツィマッド社)が開発した試作モビルスーツです。背面に搭載された土星エンジンからもたらされる驚異的な推力で、当時のモビルスーツとしては最高峰の機動力を誇っています。
しかし、その輝かしい性能の裏には、出力に機体強度が追いつかないという、兵器として致命的な欠陥が潜んでいました。
ヅダの原型機であるEMS-04は、かつてジオン公国軍の主力機選定においてザクIと争った試作機です。試験では、ザクを遥かに凌駕する機動性を発揮し、総合性能の高さを見せつけました。
しかし、飛行試験中に空中分解事故を起こし、制式採用の座を逃しています。それからもツイマット社では本機の改良を続け、宇宙世紀0079年には土星エンジンを搭載したヅダが完成。
OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話では、最終評価試験を行うために、4機がジャン・リュック・デュバル少佐とともに第603技術試験隊所属の支援艦ヨーツンヘイムに配備されました。しかし、テスト中に3番機がエンジンの暴走を起こし、再び空中分解してしまいます。さらに、地球周回軌道上における救助活動でも、1番機が空中分解を起こし、パイロットの命が失われました。
このように、改良を重ねても、ヅダの機体強度の低さは解消されていなかったのです。結果、上層部から評価試験の中止が命じられ、ヅダは事実上不採用の烙印を同OVA内で押されました。しかし、機体強度が許す範囲での機動性に関しては、ザクⅡを凌駕する性能だったとことは疑いの余地もありません。
──設計思想に人命を軽視した考えが見え隠れする機体たち。高性能の代償に魂や命を差し出す必要があるのなら、それは兵器として最悪の欠陥を抱えていると言わざるを得ません。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 ブルーディスティニー1号機」(C)創通・サンライズ』

