※この記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で総帥として現れたシャアは、それまで何をしていたのでしょうか。『機動戦士Zガンダム』後の空白期間には、ミネバ救出やサイコフレームを巡る暗躍など、逆襲へつながる重要な動きがありました。
◆アクシズからミネバ奪還
グリプス戦役の最終局面、クワトロ・バジーナとして戦場を駆けたシャア・アズナブルは、ハマーン・カーンとの激闘の末、宇宙の彼方へと消えました。その直後の動向については、アニメ作品では一切描かれていません。
しかし、一部のゲーム作品では、グリプス戦役終戦直後のシャアが確認できます。例えば、PS用ゲーム『機動戦士Zガンダム』では、シャアの手引きによって、ミネバ・ザビがスウィート・ウォーターに潜伏する様が描かれていました。
また、ゲーム『機動戦士ガンダムU.C. ENGAGE』の「アムロとシャアの軌跡」というエピソードでは、グリプス戦役後のシャアの動向について、より詳しく描かれています。
グリプス戦役後、シャアはアクシズに潜入。プルやグレミー・トトの妨害を受けるものの、ミネバを連れ出すことに成功します。そして、アクシズ内の同志の協力を得ながら、シャアはミネバとともにアクシズから姿をくらましました。
しかし、その後の二人の動向には、不明瞭な部分が多く残されています。少なくとも、『逆襲のシャア』でシャアが総帥として表舞台に立った際に、シャアの傍らにミネバの姿はありませんでした。
そのため、何らかが理由でミネバとシャアは離ればなれになり、逃亡生活を送っていたのでしょう。それはシャアが抱き始めた「隕石落とし」という過激な思想にミネバが同調できなかったのか、あるいは彼女の安全を案じたシャアによる決断だったのかは不明です。
◆ジオンの復讐装置を巡る戦いとサイコフレーム開発
ミネバ救出後のシャアは、次なる野望である、アムロ・レイとの決着、そして地球寒冷化作戦の実行に向けて動き始めます。その中でシャアが目をつけたのが、サイコミュ装置を素材に組み込むことで汎用性を高めたサイコフレームです。
漫画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア BEYOND THE TIME』では、このサイコフレームを手に入れるため、スウィート・ウォーターでその開発者であるナナイ・ミゲルに接触。正体を隠すために、サングラスをかけ、髪を黒に染めた印象的な姿でナナイと親交を深めていく姿が見られます。
その後、サイコフレームを手に入れたシャアは、ニュータイプ専用機の開発を進めていきました。宇宙世紀0090年頃を描いた漫画『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』では、サイコフレームを搭載したシャア専用ディジェに自ら乗り、テストを行なっています。
そんな中、旧ジオン公国が残した、「ザビ家の復讐装置」と呼ばれる兵器の存在を察知。アクシズ降下作戦の成功を確実にするため、復讐装置の獲得に動き出しました。復讐装置を巡る戦いでは、ジョニー・ライデンや、ヤザン・ゲーブルと交戦しています。
グリプス戦役のころよりも操縦技術に磨きがかかっており、『機動戦士ガンダムMSV‐Rジョニー・ライデンの帰還』第16巻における戦いでは、ヤザンを「本当にあの金ピカを操っていた男なのか?」と驚愕させていました。
『機動戦士ガンダムMSV‐Rジョニー・ライデンの帰還』第26巻における最終決戦では、ザビ家の復讐装置が、宇宙を滅ぼしかねないものと知ると、ジョニーたちに協力し、復讐装置を無力化しています。
◆サザビー開発とサイコフレームリーク
漫画『機動戦士ムーンガンダム』では、サイコフレームの基礎技術確立、実証を行うため暗躍しています。第1巻では、ティターンズ残党にあえてサイコフレームの情報をリーク。サイコプレートを装備したGドアーズを開発させています。
そして、データ取りが終わると、用済みになったティターンズ残党の情報をロンド・ベルにリークし、アムロに処理させました。この際撃破されたGドアーズの残骸がムーン・ムーンに流れついたことで、『機動戦士ムーンガンダム』の主役機であるムーンガンダムが誕生しています。
『機動戦士ムーンガンダム』第10巻では、南極に降下して、サザビー初期試験型の試験を行っていました。そこへミネバ・ザビの影武者と、ムーンガンダムのパイロットであるユッタ・カーシムが降下してきます。
一時はムーン・ムーンの真実を明かし、ユッタを味方に取り込もうとするものの失敗。その後、ニュータイプとしての力を示しすぎたユッタを消そうとしますが、影武者ミネバや、カミーユの思念によって妨害されたため、ムーンガンダムを仕留めきれず撤退しました。
この一連の出来事の中で、シャアを最も失望させたのはアムロ・レイの反応でした。アムロもムーンガンダムを追って南極へ降りてきたものの、かつての鋭敏さを失ったかのように、自分を感じ取れなかったアムロに、シャアは激しい落胆を覚えます。
そして、アムロの感覚が鈍ったのは、「つまらないモビルスーツに乗っているから」と考えたシャアは、サイコフレームの提供を決意。これが、『逆襲のシャア』における、サイコフレーム技術のリークにつながってくるのです。
──ミネバと別れて以降、シャアは常にアムロとの決着を見据えて暗躍していました。さまざまなメディアで描かれた、かつての戦友への失望が、サイコフレームの技術供与へとつながっていく過程は、シャアの執着心をより鮮明にしているように感じます。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「評伝シャア・アズナブル《赤い彗星》の軌跡」(出版社:講談社)』

