『ガンダム』シリーズでは、不思議なほど“2号機”が敵陣営へ渡っています。GP02サイサリスやブルーディスティニー2号機、クロスボーン・ガンダムX2など、強奪や裏切りによって本来の持ち主から離れていった機体は少なくありません。振り返ってみると、“2号機=奪われる”はシリーズの隠れたお約束にも見えてきます。
◆GP02強奪で定着した“2号機の宿命” 敵に渡ったガンダムたち
「2号機=敵の手にわたる」というイメージを決定づけたのが、『機動戦士ガンダム0083』のガンダム試作2号機・サイサリスです。プラモデル『HGUC 1/144 ガンダムGP02A サイサリス』の説明書によると、本機は圧倒的な破壊力を持つ核兵器を、確実に運用できる機動兵器として開発されました。
そして、戦術核発射テストを行うため、トリントン基地へ持ち込まれます。しかし、その直後にデラーズ・フリートのアナベル・ガトーによって、起動直後に持ち去られました。その後、皮肉にもコンペイトウへ集結した連邦軍の艦隊を壊滅させるのに使用されています。
このように、ジオンの恐怖の象徴であるはずのガンダムタイプの2号機が、ジオンの手に渡ってしまうケースも少なくありません。
たとえば、ゲーム『THE BLUE DESTINY』のブルーディスティニー2号機も、ジオンのパイロットであるニムバス・シュターゼンによって奪われています。
ただ、元々ブルーディスティニー2号機に搭載されているEXAMシステムは、ジオン側で開発されていました。その後、開発者であるクルスト・モーゼスが連邦へ亡命したことで、ブルーディスティニーが誕生しています。そうした背景を踏まえると、敵の手に渡ったというよりは、戻るべき場所へ戻ったというべきかもしれません。
なお、本機は名前にガンダムは含まれていませんが、書籍『データコレクション(13) 機動戦士ガンダム 一年戦争外伝3』(出版社:KADOKAWA、1999年11月27日出版)によると、陸戦型ガンダムをベースにしているため、実質的にはガンダムタイプの2号機です。
本機は、最終的にユウ・カジマの乗るブルーディスティニー3号機と、熾烈な一騎打ちを演じています。紹介した機体は、どちらも「最新機が敵に渡ってしまう」という軍としては最悪の不祥事ですが、物語としては因縁のライバルが誕生する最高に熱い展開でもありました。
◆味方の裏切りで失われた2号機 X2やF90に待っていた悲劇
ガンダムタイプの中には、味方に裏切られる形で、敵の手に渡る2号機も存在します。たんなる強奪ではなく、内部の裏切りによって失われた2号機たちは、後味の悪さを残しされました。
たとえば『機動戦士クロスボーン・ガンダム』のクロスボーン・ガンダムX2(以下、X2)は、パイロットであるザビーネ・シャルの離反によって、機体ごと敵陣営へ持ち去られています。元々、ザビーネは主人公陣営であるクロスボーン・バンガードのやり方に不満を持っていました。そんな中、全戦力を投入した作戦が失敗に終わり、不満を募らせたザビーネの離反を招いています。
その後、X2は木星帝国軍へと渡り、キンケドゥ・ナウの駆るX1と熾烈な戦いを繰り広げました。最終的にはX1によってコックピットを貫かれ、機体は失われています。
また、組織に潜んでいたスパイによる裏切りで、敵陣営の手に落ちた2号機ガンダムも存在します。漫画『機動戦士ガンダムF90』に登場するF90 2号機も、火星に潜むジオン残党のオールズモビルの内通者によって持ち去られ、火星独立ジオン軍仕様へと改造されてしまいました。
最終的には、火星にてF90 1号機と熾烈な戦いを繰り広げ大破しています。書籍『B-CLUB』(出版:バンダイ、出版日1991年10月号)によると、サナリィに回収されF90Ⅱへと改修されました。
このように2号機が味方の背信という形で盗まれ、ドロドロした人間ドラマの引き金になるのは、シリーズの隠れたお約束となっています。また、奪われた2号機が、敵陣営によって改修されるケースもたびたび見られました。実際、X2はX2改に、F90 2号機は火星独立ジオン軍仕様へと改修されています。
◆実はアムロ機も“持ち出し”だった? 主人公が奪った2号機たち
敵陣営だけでなく、どさくさに紛れて主人公によって持ち出された2号機も存在します。むしろ、初期の『ガンダム』では2号機が持ち出されることで、物語が始まるケースも多々ありました。
まず、『機動戦士Ζガンダム』のガンダムMk-IIは、ティターンズに反感を持ったカミーユ・ビダンによって強奪され、全3機がエゥーゴに持ち込まれました。その内、カミーユがカクリコンから手に入れたガンダムMk-IIは、肩に02とマークされていることからも分かる通り、 ガンダムMk-IIの2号機となっています。
さらに遡れば、『機動戦士ガンダム』の主人公機であるガンダムも、正規パイロットではない民間人のアムロが、軍の機体を勝手に動かして私物化しています。そういう意味では、 Mk-II同様主人公によって持ち出された機体といえるでしょう。
そして、アムロの機体も書籍『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション (3) 連邦軍編』(出版社:講談社、1984年7月1日出版)をはじめ、多くの書籍で言及されている通り、RX-78シリーズの2号機です。
このように2号機は常に「本来あるべき場所」から引き離されることで、歴史を動かしてきました。
──ガンダムシリーズの2号機は、なぜか“本来いるべき場所”から引き離される運命を背負っています。GP02サイサリスのように敵へ強奪される機体もあれば、クロスボーン・ガンダムX2やF90 2号機のように、味方の裏切りによって失われる機体もありました。さらに、ガンダムMk-IIやRX-78-2のように、主人公が持ち出したことで歴史が動いたケースも存在します。
軍にとっては最悪の事件でも、物語としてはそこから宿敵との因縁や、新たな戦いが始まっていきます。だからこそ、“2号機が奪われる”という展開は、長年にわたって繰り返されながらも、ガンダムファンの印象に強く残り続けているのかもしれません。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 ガンダムGP02A」 (C)創通エージェンシー・サンライズ』


