◆最後のシーンに隠されたメッセージ

 極めつきの見事なバランス感として忘れてはいけないのが、エンドロールが終わったあとに挟まれるまさかのシーンです。

 ガウマからもらったカニを家族で食べる蓬たちの姿。味はどうか聞いた蓬に対して、母親が返す返答が意外なことに「普通」の一言でした。

 この突き放したようなシーンをなぜ挿入したのか疑問に思う人もいるでしょうが、ここにもそれぞれの価値観があることを示しているのかもしれません。

 カニなんてただでさえ高級品なのですが、このカニはガウマにとっては大切な人から受け取った因縁のお土産のはずです。

 しかしそんなカニでも“届かない人にはやっぱり届かない”というこの突き放した着地が、怒涛のクライマックスの展開で火照った私たちを冷静にしてくれます。

 確かに『グリッドマン ユニバース』はとびっきりの迫力で魅了してくれました。しかし、それが必ずしも万人に届くわけでもないし、それが当たり前であることを最後のお母さんの一言が思い出させてくれるのです。

 『グリッドマン ユニバース』は虚構に魅せられてきた私たちをさんざん魅了させておきながら、「熱くなりすぎるなよ」と釘を刺してくれています。

 グリッドマンはみんなのものだし、グリッドマンが響く人もいれば、そんなに響かない人もいる。そのよくよく考えれば当たり前のことを忘れないように注意したいです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネ画像:YouTubeチャンネル『ぽにきゃん-Anime PONY CANYON 』より


劇場版『グリッドマンユニバース』公式サイト

Ⓒ円谷プロ Ⓒ2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会

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