◆なぜニンテンドー3DSは3D文化を救えなかったのか?

 もしニンテンドー3DSが立体視が効く映像再生機として浸透していたら、3Dソフトを取り巻く現状も今とは変わっていたかもしれません

 実際、今でこそ配信は終了していますが、当時ニンテンドー3DSではゲームの他に、ディズニー作品の『シュガー・ラッシュ3D』『ベイマックス3D』、ワーナーブラザースジャパンの『LEGO®︎ムービー3D』、任天堂発の『ピクミンショートムービー3D』など一部の3Dアニメーションの配信を行なっていました。

 ニンテンドー3DSも映像再生機としての道も模索はしていたのでしょう。

 しかし、そもそもゲーム機を映像再生機器として使う人が少なかったことや、3D映像の長時間の利用は目に負担があったこと、ニンテンドー3DSでの再生機能がスクロールバーと一時停止ボタンしかないという簡素なものだったりと、結局3Dの映像作品を観られる端末であることは知る人ぞ知るレベルに終わります。

 そしてなにより決定的なのはそもそも3D映像がほとんど需要がなかったことが一番だといえます。

 いまの時代でもSwitchに立体視機能をつけてほしいという声はほとんど聞きませんし、映画であっても「あの映画は3Dで観たかった!」という感想もあまり聞きません。多くの人にとって3D立体視は求められていなかったのでしょう。

◆実は名作!3Dで体験しておきたいアニメ映画たち!

 じゃあこのまま3D作品は過去のものとして捨て置いていいのでしょうか?

 3Dソフトが観れなくなるということは、当時3D機能を活かした映画たちを体験する方法が失われてしまうことも意味しています。実はそんな立体視を活かした名作は、とりわけアニメーション作品に多くあります。

 たとえば、ドリームワークス・アニメーションのヒットシリーズ『ヒックとドラゴン』(2010)。本作ではドラゴンに乗って飛行する場面を主人公の視点で楽しむ場面が用意されており、3D効果によってより臨場感の増す体験となっていました。

 日本作品では『ONE PIECE 3D 麦わらチェイス』(2011)が傑作です。海王類や巨人族といったスケールの大きな存在を体験できる展開が用意されたアトラクション要素の強い、唯一無二の『ONE PIECE』映画となっています。

 そのほかにも『怪盗グルー』シリーズなどのミニオンでおなじみのイルミネーション・エンターテインメント作品などは、そのほとんどに当時3D効果を意識した演出を多く作中に取り入れていたことも忘れてはいけません。

 これらの作品の本来の意図であった3D映像の演出をそのまま楽しむことができない時代が来てしまったいま、せめて不定期にでも3Dリバイバル上映を行ってくれないでしょうか。

 たとえば、今年に入って『タイタニック ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』の上映が行われましたが、こちらは興行通信社の発表する動員数ランキングでも新作に並んでトップ10にランクインするほどのヒットとなりました。

 アニバーサリー企画などのイベントとしてならば、まだ3Dの活躍の余地は残っているのかもしれません。3Dテレビは生産されず、ニンテンドー3DSも終了する今、映画館に3D文化の最後の砦となって頑張ってもらうしかありません

〈文/ネジムラ89〉

※サムネイル画像:Trygve / stock.adobe.com(画像はイメージです)

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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