突然ですが、みなさんはどのようなアニメが好みですか? 今秋放送を開始したアニメだけでも20作品以上あり、過去放送されたアニメは言うまでもなく莫大な数になります。それらのジャンルは様々であり、面白さのポイントも観る人により異なってきます。
現在放送中の『Just Because!』(ジャストビコーズ!)は、ギャグアニメのように笑えたり、謎解きを薦められるミステリーであったり、日常では体験することのない激しい戦闘シーンに興奮するといった、分かりやすい要素がないにもかかわらず、共感してしまう部分の多い、“なんとなく”変わった作品であったりします。
では、その『Just Because!』ですが、どんなところがなんとなく変わっているのか? また、なぜ私たちは本作に共感してしまうのか? 本記事ではそれを紐解いていくと同時に、このアニメの魅力をご紹介していきます。
登場人物たちの次の行動が予想不可能!?
『Just Because!』は高校が舞台の学園アニメです。
高校を中心に物語が展開するアニメは多くありますが、そのテーマは様々。『DIVE!!』のようなスポーツ物や、『ハイスクールD×D 』のような学園バトル物などがその一例としてあげられます。
しかし、『Just Because!』ではそういったテーマにかんするシバリがありません。
本作は第3話までON AIRされていますが、(10月22日時点)物語の中心にいる人物は転校生、野球部、大学受験に苦しむ受験生、吹奏楽部、廃部になりそうな写真部などなど、まったくもって登場キャラの共通項がないのです! このアニメを10人観たとして、10人全員が注目する人物が異なっていても私は驚きません。
本来、アニメの登場キャラたちには何かしらの目的があり、彼らの行動には動機があります。つまり、アニメというモノは登場キャラの目的や行動を起点に物語が進んでいくわけです。
しかし、『Just Because!』は例外。第3話の時点で、キャラたちに目立った動きはなく、平凡な高校生活がたんたんと描かれているだけで、方向性が見えてきません。
「日常系だから方向性が見えなくてもいいんじゃないか」と言ってしまえばそれまでですが、『Just Because!』にはもっと深い何かが隠されているように感じます。
そのひとつが、恋愛要素です。しかし……。
『Just Because!』は恋愛主体の青春物語ではない
物語は主人公、泉瑛太が高校3年生の冬に転校してきたのがひとつの鍵になっています。
あと少しで卒業という微妙な時期に転校してきた彼ですが、特別な理由があって転校してきたわけではありません。転校してきてから何か目標ができたわけでもない瑛太ですが(現状で)、彼の転校は登場人物たちに少なからず影響を及ぼしていきます。
転校してきたばかりの瑛太ですが、彼のことを知っている人物が作中に少なからず存在します。中学時代に野球をしていた瑛太。彼と同じ野球部だった友人の相馬陽斗。陽斗のことを好きだった夏目美緒。この3人は過去という点で繋がりがあります。ちなみに瑛太は美緒のことが好きだったので分かりやすい三角関係になります。
このような背景があるからこそ、今後、『Just Because!』は、「恋愛主体のアニメになるのでは?」という予想が容易にできます。確かに本作の恋愛要素は、物語の重要な鍵になる可能性は高いです。しかし私は、この物語の中心は恋愛ではないと考えています。本作における恋愛とは、あくまでもリアルな高校生活の一部分なのではないでしょうか?
このことは、『Just Because!』という、作品のタイトルにもなっている言葉から読み取ることができます。
今後注目すべきポイントは? “タイトル”に注目!
“Just Because” とは日本語で「なんとなく」という意味があり、私はこの言葉が今後のストーリー展開に大きく関わってくると思っています。
この物語は高校3年生の冬を描いているため、登場キャラたちは、今後の進路を決めなくてはいけないという状況下にあります。
転校生の瑛太は学校推薦で大学への進学が決まっています。
高校では野球部に入らなかった瑛太。なんとなく勉強ぐらいできなければと思い、推薦がもらえるほどの成績は取っていたみたいです。しかし友人の陽斗に大学で何をするのかを問われると、「さあ」の一言を述べるだけ。彼の場合、一般推薦で早めに受験を済ませたかったようです。
また、同じく推薦で大学進学が決まっている吹奏学部の森川葉月。彼女の進学先には吹奏楽部がないという状況です。彼女自身は楽器を演奏するのが好きなようですが、続けるつもりがなく現在使用している楽譜も捨てようとしていました。そんな場面に幼馴染である乾依子が遭遇。2人は以下のような会話を交わします。
依子 : で、葉月は大学にいったら何をするの?
葉月 : とりあえず独り暮らし
依子 : いや、そうじゃなくて
葉月 : 早く卒業して就職かな
依子 : 入学前からそれかい
葉月 : 私は家の仕事を手伝うことになるから……
彼女の家は祖父母の代から続く農家で、彼女自身もそれを継ぐのが普通であるとなんとなく気づいている様子。
一方、大学受験に向けて予備校に通い勉強中の美緒は友人たちが先に進路を決定させ、自分も早く一緒に遊びたいとうずうずしています。
このように、登場キャラたちの行動を観ていると、『Just Because!』という作品は、悩み多い年頃の高校生たちの心情をアニメという表現技法を使って私たちに魅せているように感じます。
本作の登場キャラたちからは、やりたいことが分からなかったり、現状に不満を抱えているといった心情がリアルに伝わってきます。
これは、私たちの生活にも言えることで、視聴者たちはそんな部分に共感したりして、本作を支持しているのではないでしょうか。
物語の方向性の見えない、なんとなく変わった作品、『Just Because!』。このアニメは果たして、今後どんな展開を辿るでしょう? そして、本作が最終回を迎えたとき、視聴者はこの物語のコンセプトをどう捉えるのか?
今後の展開からは目が離せません!
(Text/宮木昴 Edit/水野高輝)
「Just Because!」公式サイト
©FOA/Just Because! 製作委員会