『トイ・ストーリー』シリーズや『ファイン・ディング・ニモ』、最近だと『リメンバー・ミー』など公開規模やヒット作などの影響で「3DCGアニメといえばピクサー」というぐらい、長い間3DCGアニメーション映画の代名詞としてピクサー作品が活躍してきた時代が続きましたが、その時代にも大きな変化が訪れようとしています。
ソニー・ピクチャーズ・アニメーション制作の『スパイダーマン:スパイダーバース』の登場をきっかけに生まれた流行の変化が、3DCGアニメーションを従来のスタイルとは別のスタイルへと導き始めています。
◆『スパイダーバース』とともに3DCGアニメーションが新たな境地へ!
『スパイダーバース』の続編にあたる『スパイダーマン:イントゥ・ザ・スパイダーバース』が今年6月、ついに公開されましたが、本作のように3DCGアニメーションに2Dアニメーションの要素を盛り込んだスタイルの作品がもはやひとつのジャンルとして確立してきた気配があります。
もともと『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)の大ヒット作品の登場で、アメリカの3DCGアニメーション制作会社が続々と2Dアニメーションのテイストを盛り込んだスタイルの作品へと移行してきました。この映画が興行的にも賞レースにおいても高い結果を残して以来、同スタイルの方向性での作品が続々と制作されていきます。
ピクサースタジオの『あの夏のルカ』や『私ときどきレッサーパンダ』。ドリーム・ワークス・アニメーションの『バッドガイズ』や『長ぐつをはいたネコと9つの命』。『スパイダーバース』を制作したソニー・ピクチャーズ・アニメーション自身が送り出した『ミッチェル家とマシンの反乱』……、などここであげた作品はいずれも3DCGアニメーションにいかに2Dアニメーションの要素を盛り込むかを模索した作品だったといえます。
『スパイダーマン:イントゥ・ザ・スパイダーバース』は、キャラクターだけでなく、いくつもの世界観やアニメーションのスタイルを行き来する長編作となっており、前作よりもさらにスケールアップした課題に挑戦していました。
前作の発表から5年。やはり作品のクオリティーの部分でもしっかり次の段階へ進んでいることが感じられたわけですが、変化はアメリカの3DCGアニメーション全体にも起きていると言えます。
従来の3DCGアニメーションのスタイルを維持しつつもその中で何を描くかに注力する作品と、『スパイダーバース』シリーズのような2Dアニメーションスタイルをいかに取り込んでいくのかに挑戦した作品という2つの方向性が生まれています。