チリのアニメ映画『オオカミの家』の上映が一部の映画館で始まりましたが、東京のシアター・イメージフォーラムでの上映は、初週末の上映回は全回満席。平日の昼間の回であってもほぼほぼ席が埋まるほど異様な人気を見せており、あまりの反響からか関西の映画館では、9月の上映予定が一週間前倒しになるという異例の事態が起きています。
これだけの勢いを持った『オオカミの家』とは、いったいどんな映画なのでしょうか? 実は製作工程も、作品の内容も“普通じゃない”作品となっていました。
◆等身大の人形を使って製作した?驚愕のホラーアニメーション
『オオカミの家』は、2018年にチリで製作されたストップモーションアニメーション映画。
ストップモーションアニメーションといえば、登場キャラクターの人形を少しずつ動かして撮影することでおなじみですが、この映画はもっとスケールが大きいのが特徴です。
等身大の人形や部屋のセットを製作し、壁や床を何度も塗り替えたり、突然立体化させたりと、次元を破壊するようななかなか見たことのない映像に仕上がっています。
『オオカミの家』が恐ろしいのは、この製作スタイルで描く物語がなかなかに不穏なものになっているのが、もう一つのポイントです。
物語の舞台は1973年のチリのピノチェト軍事政権の時代。とある集落から脱走した少女・マリアが森の中のとある一軒家に迷い込むという話で、マリアは家の中で2匹の子ブタに遭遇したり、マリアを追ってオオカミが現れたりといった展開を迎えます。
その描き方が終始、不気味です。登場するブタが異形へと変身していったり、人型の人形が黒く染まっていったりとホラー映画を観ているかのような体験に仕上がっています。
トレーラーからも一目瞭然の異様な映像体験が公開前から話題となっており、多くの集客を獲得しました。
しかも、この映画で題材となっている集落というのが、かつて実在した元ナチスにより築かれたコロニア・ディグニダという施設がベースとなっており、現実の出来事とも交錯する内容となっていることがよりこの映画の不気味さを際立たせます。ただの創作で終わらせられない後味が、本作により深みを与えてくれています。