株式会社京都アニメーションをみなさまはご存知ですか? 京アニで親しまれているアニメ制作会社の京都アニメーションは、『らき☆すた』、『CLANNAD』、『涼宮ハルヒの憂鬱』、『けいおん!』や『中二病でも恋がしたい!』など、アニメファンなら一度は耳にしたことのある名作を何度も制作しています。
そんな京アニが2009年より主催している“京都アニメーション大賞”は小説、漫画、シナリオという3部門から大賞作品と激励賞作品を毎年選出しています。 この“京都アニメーション大賞”は、見事受賞した作品は賞金のみならず、そのままアニメ化の可能性まであるということで期待されています。
実際に『中二病でも恋がしたい!』は小説部門の奨励賞を取ったのちに、京都アニメーション制作ということでアニメ化されました。
今年で第10回を迎える“京都アニメーション大賞”ですが、驚くことに現在大賞を取った作品はほとんどありません。
それほど選考がシビアであり、本当に面白い作品を見極めているということなのでしょう。
そんな7年間のうち、唯一大賞を受賞したのが今年の1月より放送中の『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』です!
ですから、当然『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』に関する京アニの気合いの入れ方はアニメ化前より多くの点からひしひしと伝わってきます。
ということで本記事では本作の魅力に関して、アニメ放送前に公開されたPVの中から、第4弾のPVに焦点をあてて紹介したいと思います。
ヴァイオレットの純粋で実直な雰囲気をよく表している
まず、軽く本編を私なりに紹介します。
今作の主人公であるヴァイオレットは、戦時中に軍人として育てられ、戦場では兵器として生きてきた過去を持っています。戦時中の彼女は兵士としては優秀でしたが、平和な未来へと向かっている現代では通用しません。そればかりか道具のように扱われてきたため、普通の人間が持っている感情というものが欠落しています。
そんな彼女を道具としては見ずに、ひとりの人間として愛情を注ごうとしていた人物がいました。彼が死に際にヴァイオレットに告げた言葉は「愛してる」でした。
本作はヴァイオレットの純粋な性格が魅力です。それはPVからもよく伝わってきます。アニメ化前にPVは第4弾まで公開されていますが、その中でも最もPV第4弾が本作の魅力を適切に伝えられていて、私は気に入っています。
PV第4弾の前半ではヴァイオレットの純粋な雰囲気を上手く表すための作りが多く取られています。
「愛してるを知りたいのです」
「こういうのなんというのでしょうか? 」
前半にピックアップされているヴァイオレットのセリフの多くは、疑問形になっています。これはヴァイオレットが感情というものを理解していないことをよく表しており、彼女の知りたいという純粋な気持ちも表しています。 また私が個人的に好きな要素として、眼があります。
彼女の眼の輝きは純粋さを引き立てますが、その眼の輝きを強調するかのようにブローチが多く登場しています。このブローチはPVからもわかるようにヴァイオレットにとってとても重要な物なのですが、それに負けず劣らず輝いているヴァイオレットの眼を見ると彼女の純粋さがひしひしと伝わってきます。
人の心を理解することの難しさは何もヴァイオレットだけではない
PV第4弾前半ではヴァイオレットの過去とこれから、また彼女の愚直なまでの純粋さを伝えているのに対して後半では、人の心を理解するのが難しいのはヴァイオレットだけではないというメッセージがあると私は感じています。
本作はヴァイオレットが「愛してる」の意味を理解することが目標ですが、それはヴァイオレットが無知だからではありません。
PVの中盤ではこれらのセリフがピックアップされています。
「心を伝えるって難しいね」
「ありがとうって伝えたいだけなのに」
それに対してヴァイオレットのセリフが以下のように続きます。
「あなたの涙を止めて差し上げたい」
「旦那様は心に何か隠しているのではないのですか? 」
ヴァイオレットに感情というものが欠落しているのは間違いありませんが、多くの人たちがヴァイオレットと同じく感情というものに苦悩していることが分かります。またそれと同時に彼女は他者のことを気遣い、少しずつ成長していることもうかがえます。
――本記事では『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』のPV第4弾を前後半に分けることで、その魅力を考察してみました。
『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』の魅力が少しでも伝われば嬉しいです。
殉職した大切な人が最後にヴァイオレットに残した言葉「愛してる」。その言葉の意味を理解するのがヴァイオレットの目標でもあります。しかしそれを知ることはヴァイオレットにとってつらいことかも知れません。
本作はヴァイオレットの純粋さとそれを取り巻く人から見えてくる人の心を理解することの難しさを表した王道の物語と言えます。純粋なヴァイオレットを通じて、感情というものの難しさを教えてくれます。
『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』はとても美しいアニメだと私は思っています。ぜひ本編もいかがでしょうか?
(Edit&Text/宮木昴)
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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会