北海道を舞台に金塊の争奪戦を描いた『ゴールデンカムイ』の実写映画の公開が、きょう119日から始まりましたが、主人公の杉元佐一をはじめ、この作品の登場キャラにはモデルがいるとファンの間で噂されています。

◆「不死身の分隊長」と呼ばれた男──杉元佐一のモデル「舩坂弘」

  主人公の杉元佐一は作者から自身の曾祖父がモデルだと明かされている一方、ファンの間では兵隊や不死身という共通点から「不死身の分隊長」と呼ばれた舩坂弘がモデルの1人ではないかといわれています。

 舩坂弘は、第二次世界大戦時のパオラ=マリアナ戦役の最終決戦となった、アンガウルの戦いで活躍を見せました。

 彼は、擲弾筒と臼砲を使ってアメリカ兵を200人以上倒したと、自著『英霊の絶叫- 玉砕島アンガウル』で語っているほか、この戦いで数えて大小24ヵ所におよぶ負傷をしていたにもかかわらず、アメリカ兵に頸部を撃たれ野戦病院に運ばれるまで、不死身の姿で戦ったといいます。

 舩坂弘は、傷が治りやすい体質だったようで、動けなくなるような傷を負っても数日で回復して歩いていたそうです。

 野戦病院に運び込まれた船坂ですが、3日後には目を覚まし、周りにあった医療器具を破壊し暴れ回ったといいます。

 やがて彼は、自著の『英霊の絶叫 玉砕島アンガウル戦記』によると、ペリリュー島の捕虜収容所に身柄を移されました。収容所では米軍の弾薬庫の爆破を企てたようですが、こちらは未遂で終わっているようです。

 そのことなどから舩坂には、「不死身の分隊長」という異名がつきました。

 一方、『ゴールデンカムイ』の杉元は、日露戦争のときに見せた鬼神のような戦い方や驚異の回復力から、どんな武器でも彼を殺せないと言われ、「不死身の杉元」と呼ばれていました。

 その不死身ぶりは凄まじく、刃物や銃で攻撃されてもすぐさま反撃に転じたり、ヒグマと真っ向から戦っても怯まずに撃退したりしています。

 さらに、頭を銃で撃ち抜かれ脳みそが欠けても脅威の回復力で生還して、再び戦いへ身を投じていました。これらの活躍は正に不死身の名にふさわしいでしょう。

 杉元も舩坂弘も「不死身」と称されるだけのエピソードがあり、その共通点から、舩坂弘は杉元のモデルの1人だと考えられています。

 なお、杉元佐一という名前や日露帰りの若者という設定は、作者が曾祖父をモデルにしていると過去のインタビューで語っていました。

 作者の曾祖父は203高地で戦った屯田兵だったことから、本作の主人公を日露帰りの若者にしようと考えたそうです。

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◆実在した「昭和の脱獄王」──白石由竹のモデル「白鳥由栄」

 作中で「脱獄王」と呼ばれる白石由竹のモデルは、「昭和の脱獄王」として有名な白鳥由栄だと作者が過去のインタビューで語っています。

 白鳥由栄は、1940年代に網走刑務所に収監されていたとき、味噌汁の塩分で鉄格子(視察孔)の釘を錆びさせてこれを外し、その小さい穴から関節を脱臼させて脱獄しました。

 また、札幌刑務所では持ち込んだ金属片でノコギリを作って床板を切り、食器でトンネルを掘り続け脱獄しています。

 彼は関節を自由に外せる特殊体質だったうえ、1日に120キロ走れる健脚や、手錠の鎖を引きちぎる怪力の持ち主だったそうです。

 一方、『ゴールデンカムイ』の白石由竹は、前橋監獄や金沢監獄、秋田監獄など全国の監獄を脱獄してきたことから「脱獄王」と呼ばれています。

 彼は白鳥由栄と同じで、生まれつき関節を容易に外せる特殊体質だったことから、鉄格子を外した視察孔や小さなトイレの穴から脱獄してきました。

 また、彼は体のあちこちに釘や針金を仕込んでいたり、監獄の特徴を見抜き奇抜な作戦を思いついたりなど、ポテンシャルの高さがうかがえます。

 アシリパの父親へ会いに網走監獄へ侵入する際には、その能力の高さを買われ、彼が侵入経路を導き出して監獄へ侵入する計画を立てました。

 作者が明言していることから、白鳥由栄が白石のモデルであることは間違いなく、2人には脱獄エピソードや特異体質など、多くの共通点が見られます。

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◆「不敗の牛島」と呼ばれた──牛山辰馬のモデル「牛島辰熊」

  作中で「不敗の牛山」の異名で呼ばれる牛山辰馬のモデルは、不敗というあだ名や柔道家という共通点から「不敗の牛島」と呼ばれる牛島辰熊ではないかと、ファンの間で考察されています。

 牛島辰熊は、60キロもあるローラーを引きずりながら走り込みをしたり、大石を抱え上げて筋トレを行ったりと、過酷なトレーニングで体を鍛えています。

 また、最強の柔道家と言われ、当時の柔道日本一を決める明治神宮大会で3連覇し、その後にできた全日本選士権の第2回・第3回を連覇しました。

 実質5回も日本一の座を手にした記録は、まさに「不敗」というあだ名にふさわしいでしょう。

 一方、『ゴールデンカムイ』の牛山は、その異名通り「不敗」を誇り、その強さは作中最強と言われています。

 柔道家の彼は、向かってきた馬を足払いだけで倒したり、ヒグマに背負い投げをして追い払ったりなど、体一つであらゆる敵を倒してきました。

 また、彼は柔道家ということもあり、作中では大木に帯を縛り付けて背負い投げの打ち込み練習をする姿が描かれています。

 なお、作者は牛山のモデルについて明言していません。

 しかし、以前に行った対談企画で相手から「「不敗の牛島」ならぬ「不敗の牛山」」と言われたとき、作者は特に否定しませんでした。このことから、牛山のモデルは牛島だと考えてもよいのではないでしょうか。

 ──このように『ゴールデンカムイ』には、過去に実在した人物をモデルにしているキャラがいます。

 ほかにも、土方歳三や石川啄木など、実在した人物がそのまま登場していることも。

 モデルになった人物を知るとキャラへの理解が深まり、この作品をより楽しめるかもしれません。

〈文/林星来 @seira_hayashi

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《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。

 

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映画『ゴールデンカムイ』公式サイト
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