2019年11月15日(金)より、Netflix独占で『クロース』というアニメーション映画が配信をスタートしました。
制作はスペインのアニメーション制作会社、SPA Studiosです。
"有名だけど生い立ちが不明なキャラクターを描きたかった"
"背景にシールを貼ったような図にしたくはない。
これはCGを使わない現代のアニメだね"Netflix映画『クロース』
監督セルジオ・パブロスが制作秘話を明かす特別映像を公開📽
サンタクロース誕生の物語は、こうして作られた🎅 pic.twitter.com/ZwjsqfycV0— Netflix Japan (@NetflixJP) November 11, 2019
クリスマスをテーマにしたアニメーション作品は無数にありますが、本作もそんな雑多な作品の中の凡庸な一本じゃないかと思っていました。しかし、鑑賞し始めてビックリ、クリスマス系作品どころか、そういう域を越えて、アニメーション作品としても傑作と言える一本だったのです。
『クロース』とはどんな作品か
主人公は、郵便配達員のジェスパー。だらしない生活を送っていたことで父に見限られ、町民同士の争いが絶えない辺境の町・スミレンズブルクに配属されてしまいます。そこで6000通もの配達ノルマを課せられたジェスパーは、町外れに住むおもちゃ小屋を持ったお爺さんを利用して、子供達にプレゼントを求める手紙を書かせることを思いつきます。そんなジェスパーの行動が、町の人々に思わぬ影響を与えていく……そんな物語となっています。
感動的な話で、大人から子供まで楽しめる、まさに王道のエンターテイメント作品となっていました。
2019年の手描きアニメーションの一つの最先端だ!
本作には様々な魅力があるのですが、なんといっても1番の魅力はそのアニメーション。
お洒落で上品な雰囲気のあるウェルメイドなキャラクターデザインや、古き良きカートゥーンアニメを思わせる各々の表情や動きが素敵です。
そして、それらを他においても、見事としか言いようがないのが、本作を手描きアニメーションで制作しているところです。昨今は3DCGの技術も発達しており、手描きアニメかと思ってよく見たら、実は3DCGアニメだったなんてことも、たまにあります。ですが、この『クロース』という作品は、立体的なタッチがあまりにも滑らかに動くので、キャラクターの立体的な造形が3DCGアニメのように思わせられて、なんとそれの逆の体験ができるのです。
手描きアニメーションといえば、ディズニーですら現在は長編作品を作らなくなっている状態です。というのも、ディズニーは『プリンセスと魔法のキス』や『くまのプーさん(2011)』で手描きアニメーションブランドの再起を図ろうと思ったものの、興行的に十分な結果を残せず、それ以降は3DCGアニメーションでの制作をメインとするようになってしまいました。アニメーションの最高峰であるスタジオですら手放した手法で、この作品はできていると思うと、非常に感慨深いです。
ディズニー出身のセルジオ・パブロス監督
なぜディズニーの話をしたかといえば、実はこの『クロース』の監督を務めるセルジオ・パブロス監督は、ディズニー出身の方だからです。『ヘラクレス』や『ターザン』、『ノートルダムの鐘』や『トレジャー・プラネット』など、多数のディズニーの手描きアニメーション長編に、アニメーターやキャラクターデザイナーとして参加してきた過去を持ちます。
作中のキャラクターの顔の筋肉の動きなどにも、ディズニー作品を思い起こさせる瞬間があるので、ぜひ注目して見てほしいですし、セルジオ監督がディズニーの長編手描きアニメーションの灯を、こうして『クロース』という作品で再び灯してくれていると思うと、懐かしさとも近い感動がありました。
セルジオ監督の参加した傑作はディズニーだけにあらず!
そしてさらに驚くべきは、セルジオ監督は、実はディズニー作品だけでなく他のアニメーションスタジオの傑作にも多く携わっている方なのです。
例えばイルミネーションエンターテインメントの看板シリーズである『怪盗グルー』シリーズのエグゼクティブプロデューサーであり、原案を作ったのも、他でもないセルジオ監督その人。この人あってこそ、ミニオンが生まれたと思うと、どれだけすごい人なのかと痛感します。
また、ブルースカイスタジオの長編作『ブルーはじめての空へ』ではキャラクターデザインを。ワーナー・ブラザース・アニメーションの長編作『スモールフット』では原作とこちらでもエグゼクティブプロデューサーを務めています。
スタンプラリーかのように、海外の有力アニメーション制作会社の傑作に、順に名を連ねていくセルジオ監督の仕事ぶりはまさに驚異的。恐れ多くも、この『クロース』を観るまでセルジオ監督のことを意識してませんでしたが、今後は彼が参加している作品は、ぜひとも逃さずチェックしていきたいという気持ちにさせられました。
クリスマスの定番作品になることを期待!
『クロース』が劇場上映がされないのは惜しいのですが、身近な端末で楽しめるという意味では、十分ありがたいこと。
クリスマスシーズンを目前に配信された本作が、ぜひ2019年以降のクリスマスシーズンの定番アニメになってほしい、なんて思わせられるほど、素敵な体験がつまったアニメーション作品です。
『クロース』という作品のこと、そしてセルジオ監督のこと。
ぜひ一人でも多くの人にチェックして欲しいところです。
(Edit&Text/ネジムラ89)