2020年秋アニメは、百合作品が多かっただけに、次なる百合作品を求めている方も多いのではないでしょうか。そんな方たちにオススメしたいのが、危険あふれる裏世界を女2人で生き抜く物語『裏世界ピクニック』。
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
本作は、ハヤカワ文庫JAから出版されている宮澤伊織さんによる小説が原作のアニメです。キービジュアルからも見て取れるように、女性2人が主人公の作品。2人が巻き込まれる危険な裏世界での冒険に加え、2人の織り成す百合関係が魅力の作品となっています。
裏世界という秘密を抱え危険を乗り越えていく、そんな中で育まれる2人の信頼を越えた想いや、甘々なイチャラブだけじゃない相手を想うが故の喧嘩、すれ違い、そういった酸っぱい出来事も丁寧に描かれているのが本作の特徴です。
◆女の2人旅 実話怪談がモチーフの『裏世界ピクニック』とは?
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story03/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
百合だけでなく、裏世界でのサバイバルもしっかり描かれているのも『裏世界ピクニック』の見どころ。
『裏世界ピクニック』は、実話怪談をモチーフにしたサバイバルホラー作品。しかも、なんちゃってホラーではなく、結構ビックリしてしまうような、しっかとしたサバイバルホラー作品です。
本作の主な舞台は、裏世界と呼ばれる不思議な異世界。世界各地にあると思われる入り口から侵入することができ、その中では物理法則などが無視される不思議な空間が広がっています。
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story02/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
そこには、「くねくね」や「八尺様」など、実話怪談においてたびたび語られる危険なクリーチャーが存在。時には「グリッジ」という自然の即死トラップのようなものまで登場します。
つまり裏世界は、ピクニックという呼ばれ方がそぐわないような危険な場所です。
作中では裏世界に迷い込み、死んでしまうキャラが大勢登場。なんちゃってサバイバルではなく、そういったドキドキがあるのがこの作品の魅力です。
「次は、主人公たちが死んでしまうのではないか?」
そんな緊迫するような場面が多々描かれています。
本作では、そんな危険な状態にある中、協力して生き残る主人公2人の関係がとてもいい雰囲気を出しており、2人の嫉妬や共依存関係が強く描写されています。
◆主人公2人の関係が尊い 今季の百合カップリング「空魚」と「鳥子」ってどんなキャラ?
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story02/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
サバイバルホラーを土台に描かれる百合要素ですが、あまり直接的な表現が多いわけではありません。嫉妬や共依存関係が強く描写されていると述べたように、本作はいわゆる関係性萌えというモノが描かれています。危険な裏世界を生き抜くため、お互いがお互いを必要とし、時には想い合い、時には嫉妬し合う、そんな関係が尊いのです。
まずは、そんな想い合っている2人を紹介。
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▼紙越 空魚(以下、空魚)
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story01/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
本作の主人公であり、基本的には空魚視点でこの物語は描かれています。
大学に通う成人女性。心に結構ブラックな部分を抱えており、暗い過去を平然と話す場面や、精神的に不気味な面を見せることもある根暗キャラです。そんな空魚の趣味は廃墟探検。しかも1人で……。
裏世界に迷い込んでしまった原因も、何を隠そうこの廃墟探検。花の女子大生が1人で廃墟探検なんて、それだけで精神的に闇を抱えていそう雰囲気を感じ取れますよね。
人に感情を伝えることが苦手で、自分の中に溜め込んでしまうタイプ。それが原因で鳥子ともトラブルになることも……。
また、独占欲が強い面もあり「これは自分だけのモノ」と必死に守ろうとするのが可愛い。しかし、それが原因で、自身の感情に振り回されることがしばしばあります。少し面倒くさい系の女性という表現がマッチしているかもしれません。
▼仁科 鳥子(以下、鳥子)
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story01/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
本作のもう1人の主人公であり、空魚のパートナー。
才色兼備でなんでもできそうに見えますが、実はあまり人付き合いが得意ではありません。そのため、一度仲良くなった人物への思い入れは強く、とことん相手を大切にするタイプ。裏世界で行方不明になった友人・冴月を探すため、危険を顧みず裏世界を探索する行動力の高い女性でもあります。
鳥子は、目的があれば危険でも飛び込んで行くクレイジーな女性で、そのクレイジーさは、行動の端々に表れており、裏世界で拾った銃を平然と持ち歩き、必要とあらば躊躇わず発砲。また、裏世界で手に入れたアイテムを売って資金にする強かさも兼ね揃えています。
上記の通り愛情の深いタイプなので、自分の好きな相手や友人に何かあると居ても立っても居られません。動揺を露わにし、衝動的に行動してしまう場面もあります。空魚と同じように、少し面倒くさい系の女性と言えなくもありません。
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どちらも、少し面倒くさい一面を持っていますが、百合となると、これくらいの性格がいい雰囲気を出すのかもしれません。
『裏世界ピクニック』では、こうした色気の欠片もないようで嫉妬深い空魚と、サバサバしているようで想いの深い鳥子の2人が織り成す湿度の高い百合関係が魅力となっています。
◆女だけの三角関係!? 『裏世界ピクニック』で必見の百合成分とは?
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story01/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
『裏世界ピクニック』では、湿度の高い少しドロドロした百合関係が描かれます。というのも、本作の百合関係は恋愛で言うところの三角関係。空魚視点から見ると好意の方向が「空魚→鳥子→行方不明である鳥子の友人・冴月」となっています。この一見一方通行のような関係が本作ではいい雰囲気を出しているのです。そのため、ドロドロとした百合関係が好きな方にはピッタリの作品と言えます。
まず、鳥子の紹介でも説明しましたが、鳥子が裏世界に潜っているのは冴月を探すためです。ではなぜ、空魚まで裏世界に潜っているのでしょうか。
空魚が自分だけの世界を求めているというのもありますが、主な理由は、鳥子を想うが故です。想い人を1人で危険な世界に行けせるわけには行きませんよね。危険を犯してまで気になる相手のために、付いて行くなんて尊いです。そんな一途な空魚が激しく嫉妬するものがあります。それは、鳥子が裏世界で探している友人・冴月について。
冴月を必死で探す鳥子は、時として冴月ばかりを考えているような態度を取ってしまうことがあります。鳥子のそんな態度は、危険を犯してまで鳥子のために裏世界に来ている空魚にとって堪らなくなってしまう場面が多々あるのです。
<画像引用元:https://www.othersidepicnic.com/story/story01/ より引用掲載 ©宮澤伊織・早川書房/ DS研>
モチロン、鳥子は空魚をないがしろにしているわけではありません。彼女が危険な状態になれば自分を顧みず助け、裏世界の秘密を共有する仲であり、共に裏世界を生き抜くバディともなっています。
しかし、空魚視点で観ると、自分と裏世界を共有しパートナーともなっているのに、いつまでも行方不明になった冴月のことを心配している鳥子が二股しているように感じてしまうのです。そう、鳥子のパートナーである空魚にしてみれば、冴月は嫉妬の対象となるのです。女しかいないのに、面倒な二股、三角関係になっていますね。
三角関係のようになっていますが、本作では、空魚、鳥子共にお互いがなくてはならない存在となっています。それは、サバイバルホラー視点から見た場合でもそうですし、百合的な関係性から見てもそう。
そんななくてはならない2人がお互いをどう想い、どんな関係を気づくのか、その点もこれからのストーリーを見る上で注目したいポイントです。
――サバイバル要素も強いですが『裏世界ピクニック』は、嫉妬と共依存関係を全面に出した百合作品と言えます。
本作の百合は、最初こそ、感情的なものだけで直接的な行為はありませんが、話が進んでいく毎に、濃厚濃密になっていきます。それは時にキスにまで発展することも……。
空魚と鳥子がどうやって出会ったのか、どのように関係を進めていくのか、お互いがお互いをどう思っているのか、ぜひアニメを視聴して確かめてみてください。
〈文/天乃ひる〉
©宮澤伊織・早川書房/ DS研