20208月、大人気漫画『アクタージュ act-age』(以下、アクタージュ)の原作担当が強制わいせつの疑いで逮捕される事態となり、大きな波紋を呼んでいます。

アクタージュ かわいい 画像<画像引用元:https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/act-age.html より引用掲載 © SHUEISHA Inc. All rights reserved.>

 『アクタージュ』は「週刊少年ジャンプ」で連載されていた作品で、非常に多くの人気を集めていた作品でした。この作品は、2018年上旬に連載を開始した比較的新しい作品ですが、実は現在の「ジャンプ」において、56番目に長い連載歴を持つ作品でもあります。

 また、その人気度合いは現在の「ジャンプ」の看板作品『ONE PIECE』『僕のヒーローアカデミア』『ブラッククローバー』に続くとも言われており、これからさらに人気が高まるであろうと予想されていた作品でした。

 今回は、そんな人気漫画『アクタージュ』がどんな作品だったのかを紹介していきます。

「ジャンプ」では珍しい役者をテーマにした作品『アクタージュ』とは?

アクタージュ かわいい 画像02<画像引用元:https://www.shonenjump.com/studio_daikokuten/ より引用掲載 ©︎studio_daikokuten ©︎TATSUYA MATSUKI.SHIRO USAZAKI/SHUEISHA>

 『アクタージュ』とは、「週刊少年ジャンプ」で連載されていた役者をテーマにした作品です。役者がテーマと言っても様々な漫画がありますが、本作では、映画や舞台に出演するまでの稽古の様子、撮影現場での出来事、どのようにして役を演じるのかなどが描かれており、内容としてはかなり本格的な漫画でした。

 この物語は主人公・夜凪 景が芸能事務所のオーディションを受けるところから始まります。彼女は無名で役者経験もない状態から始まるのですが、実は演技に関して素人ではありません。独学でかなりレベルの高い演技ができる天才として登場するのです。

 そんな天才、夜凪 景ですが、オーディションでは演技とは別の理由で落選してしまうことに……。しかし、審査員の1人である演出家・黒山 墨字により才能を見出されます。

 ここまでの情報では一見、才能溢れる主人公が女優に憧れ、夢の業界に兆戦していくキラキラした物語に思えますよね。

 しかし、『アクタージュ』はそんなキラキラした青春物語ではありません。むしろ、突如業界に現れた魔王が大暴れするようなギラギラした物語なのです。

 夜凪 景が出演した現場は、基本的に大荒れで多くの人を驚かせるような結果になっていきます。

 例えば、

・オーディションをすれば、他の候補者に才能の違いを叩き込み悩ませる

・エキストラの仕事をすれば、町人Aにも関わらずそのシーンを飲み込むほどの白真の演技をし、監督を困らせる

・映画に出演すれば、脇役なのに主役に張り合うほどの名演技を見せ、共演者の闘争心を煽る

 この作品の夜凪 景というキャラクターは、才能の赴くままやりたい放題する業界人にとっては自分たちの価値観を壊す魔王のような存在として描かれています。

 凡人と天才の差をまざまざと見せつけてくる作品でもあるので、ある種の俺TUEEE作品とも言えるかもしれませんね。

アニメ化も目前と囁かれていた…終わるのが惜しすぎる『アクタージュ』の魅力とは?

夜凪 景 アクタージュ かわいい 画像<画像引用元:https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/act-age_2.html より引用掲載 © SHUEISHA Inc. All rights reserved.>

 『アクタージュ』は、バトルやギャグ、スポ根が多い「ジャンプ」の中では、珍しいテーマの漫画で、「ジャンプ」らしくない作品とも言われていました。それは、役者がテーマでは読者に作品が伝わりにくいのではないかと思われたからです。

 「ジャンプ」作品の特徴は誰にでもわかる面白さ、凄さにあります。バトル漫画では、派手な戦闘描写、ギャグ漫画では、多くの人にウケるようなネタ、スポ根漫画では、驚くようなスーパープレイと、わかりやすい凄さが売りなのです。

 その点、役者をテーマにしたこの作品はキャラクターたちの凄さや実力の違いを描くのが難しく、玄人好みの作品になるのではないかと懸念されていたのです。しかし、連載されてみると『アクタージュ』はそれらの懸念を払拭するほどの人気を誇る作品になりました。

 その人気を支えた魅力は繊細な絵と読者を引き込む物語が上手く噛み合っていた部分にあります。と言うのも、『アクタージュ』は原作担当と作画担当が分かれているタイプの漫画で、作者が1人で描いている作品ではありません。

 絵と物語、それぞれの得意分野を合体させることによって両方評価される漫画が生まれる……。『アクタージュ』はまさにその成功例と言えるでしょう。

アクタージュ かわいい 画像03<画像引用元:https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/act-age_2.html より引用掲載 © SHUEISHA Inc. All rights reserved.>

 『アクタージュ』は透明感のある絵が魅力で、特にカラーの塗りが評価されていました。そのあまりの繊細さから単行本の表紙や扉絵では、オーラすら感じると言われたほどです。

 まずなんと言っても、他の「ジャンプ」作品とはキャラの目が違います。目は口ほどに物を言うという言葉がありますよね。まさにそれです。単純に言えば、書き込みが多いだけなのですが、その書き込みの違いであらゆる感情の違いを表現しています。そういった技術力の高さがこの作品の魅力の一つと言えるでしょう。

 また、『アクタージュ』は絵良さを上手く物語に利用しています。

 先ほど説明しましたが、「ジャンプ」で人気を得るにはキャラの凄さが読者にわかりやすいことが重要です。その点を『アクタージュ』は、主役と脇役を使い分けることで表現していました。

 作中では、主役である夜凪 景に対して脇役が自ら負けを認めることにより主人公の凄さを表現する方法がよく使われています。

 周囲が主人公をアゲアゲする手法は、非常によく使われるのですが、文字だけの説明やつまらない絵なら、こういった展開に読者は納得しなかったでしょう。しかし、『アクタージュ』では、負けを認めた脇役だけでなく読者までもが主人公に畏れを抱くほど美しい絵を利用することによって説得力を持たせています。

 また、大事な見せ場となるシーンでは、必ず絵で表現する点が素晴らしいです。言葉を尽くすのではなく、必要な場所に必要な絵を持ってくる物語構成が、この作品の魅力だと言えるでしょう。

 このように『アクタージュ』は原作と作画、双方の完成度が非常に高い作品です。

 今回この作品の魅力について、いくつか紹介しましたが、言葉では表現しきれないものがまだまだたくさんあります。

 『アクタージュ』は未完となってしまいましたが、気になる方は、ぜひ読んでみてください。

なんで最終回!? 原作者逮捕ってどういうこと?

アクタージュ かっこいい 画像<画像引用元:https://www.shonenjump.com/j/rensai/act-age.html より引用掲載 © SHUEISHA Inc. All rights reserved.>

 ここまで、『アクタージュ』の紹介をしてきましたが、ここからは今回の騒動についての顛末を紹介していこうと思います。

 202088日夕刻『アクタージュ』ファンの間に激震が走りました。

「アクタージュ原作者逮捕」

 罪状は、強制わいせつ罪。容疑者は調べに対し「おおむね間違いありません」などと容疑を認めているという……。

 詳しい経緯などは、ニュースなどを見ていただくとして、『アクタージュ』への影響を簡潔に説明しますと、おしまいです。全てが潰えてしまいました。

 原作は2020811日発売の「週刊少年ジャンプ」3637合併号をもって打ち切り。

 2022年に予定されていた『アクタージュ』の舞台も中止。

 アニメ化目前とまで言われていたのに……。終わってしまいました。

 今まで作者さんが亡くなって未完となった作品はいくつか経験してきましたが、まさか逮捕されて未完になるとは……。とても残念です。

『アクタージュ act-age』連載終了に関するお知らせ

 この「ジャンプ」編集部の打ち切り報告を聞いて、嘆くファンが大勢いる一方で「処置が重すぎる。作画担当の宇佐崎しろ先生やファンのことも考えて」という声もインターネット上で見られました。

 一見、重すぎる異例の処置に思えますが、実は過去にも、「ジャンプ」で連載されていた作品『世紀末リーダー伝たけし!』の原作者が逮捕された事件があり、その時も未完のまま打ち切りとなりました。

 確かに、誰にとっても残念な事態ですが、「ジャンプ」ほどの雑誌ともなれば、今後の影響を鑑みて打ち切りにするのは仕方がないのかもしれませんね。

 作画担当の宇佐崎しろ先生の次回作に期待して待つことにしましょう。

 

 ――以上が、未完のまま終わりを迎えることとなった『アクタージュ』の紹介となります。

 本当に期待の作品であり、アニメ化や舞台が楽しみだった作品なだけに残念ですね。

 この作品はひどく中途半端なところで終わっていますが、舞台「羅刹女」編までは、綺麗に終わっています。また物語の特性上、それほど多くの謎を抱えた作品ではありませんので、今から読んでも損はないでしょう。興味のある方は読んでみてはいかがですか。

(Edit&Text/天乃ひる)

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