◆偽物のほうが本物より本物らしい?偽物を題材にした作品──『偽物語』
<画像引用元:Amazonより>
『偽物語』には偽物に関するさまざまな名言があり、ファンの間でも「深い名言が多い」と話題になっています。
この作品は偽物と本物をテーマにしており、主人公の阿良々木暦(あららぎこよみ)の妹である火憐(かれん)と月火(つきひ)を中心にストーリーが描かれています。
火憐を中心に描いた上巻「かれんビー」では囲い火蜂に憑かれた火憐を助けるために暦が貝木泥舟(かいきでいしゅう)と対峙し、月火を中心に描いた下巻「つきひフェニックス」ではしでの鳥に成り代わられた月火を守るため影縫余弦(かげぬいよづる)と対峙しました。
作中では、火憐が「正義の味方の偽物」だと暦に指摘されたり、しでの鳥に成り代わられた月火が「偽物の妹」だと影縫に言われたりしていました。
このように偽物が多く登場しますが、なかでも偽物として圧倒的存在感を放つのが偽物を自称する貝木泥舟です。彼は詐欺師なうえ偽物の怪異を専門としますが、「つきひフェニックス」では偽物に関するとある名言を放ちファンの中で話題になりました。
「つきひフェニックス」では、しでの鳥に成り代わられた月火が偽物か本物か、影縫と暦がたがいに主張し合います。影縫は一歩も引かない暦に考えを改めますが、その際に彼女は以前に貝木が言った「偽物の方が圧倒的に価値がある。そこに本物になろうという意志があるだけ、偽物の方が本物より本物だ」という言葉を口にしました。
この深すぎる言葉はたちまちファンの間で「論点のすり替えっぽいけど、不思議と魅力がある」「本物を目指す人には心強い言葉」と話題になりました。確かに論点のすり替えのように感じますが、詐欺師の貝木が言うからこそ不思議と説得力が沸くのかもしれません。
──美術品やブランド品の世界では贋作より本物のほうに価値があるといわれることがあります。しかし、そもそも本物のほうが優れているという考え自体が間違っていたり、本物を目指すことで偽物が本物を超えていたりすることもあるでしょう。高級カニカマが話題になったのも、偽物が本物に追いついたからだと言えるのではないでしょうか。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
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