読書の秋ですね、リターン。
ということで、前回に引き続き本の話題、と言ってもしつこくまた漫画です。
書店や電子書籍サイトなどに山と並んだ漫画たちを前に、皆さんは何を重視して作品を選んでいますか?
キャラクター、ストーリー、世界観、設定などこだわりは色々あると思いますが、その中でもキャラクターはこだわりたい度上位に入りますよね。
物語の顔と言っても過言ではないキャラクター。登場人物が魅力的であればあるほど、私たちはどんどんその世界に惹きつけられます。
ですが、数ある作品を巡っていると、魅力はあるけど最低のヒーローに遭遇することも少なくないのではないでしょうか。
「最低」という言葉は幅が広いので、女癖、詐欺師、変態、それ以上の犯罪者といった様々なジャンルが当てはまりますが、ここでは女癖の悪さをチョイスします。
最近、自分史上最低のヒーローに出会いました。
どう控えめに言ってもクズ男、ビックリするレベルのクソ野郎です(口が悪くなってすみません!)。
小学館フラワーコミック『後にも先にもキミだけ』に登場する彼の名前は、有村速人。……既にタイトルからJARO感が漂っておりますが。
ここではそんな史上最低のヒーロー、有村速人について何がどう最低なのかを交えながら掘り下げていきたいと思います。
胸キュン不可能?とんでもないヒーロー
まずざっくりとあらすじを紹介すると、
――高校2年生の有村速人と直江芙美は付き合い始めの恋人同士。傍若無人な速人に振り回される芙美。破綻しそうでありながらちょっとずつ進展していく、「不思議で痛い恋愛コメディー」。
そう、不思議で痛い恋愛コメディーなのですが……正直、不思議どころかわかりやすく痛いです。
ヒロインの芙美ちゃん。かなりいい子で受け身女子。可愛くて周りから好かれるタイプなのでもっといい男がいそうなもんですが、彼女は何があってもどんな仕打ちをされても速人を受け入れてしまいます。
菩薩か!
そして、芙美の相手役であるヒーロー、速人。こいつがですね……もう、実在していたら我慢ならないほどのクソ野郎なんです。
物語は芙美と速人が付き合い始めて2か月が経った頃からスタートします。この時点で速人、かなりオープンに浮気を繰り返します。しかもただ女子と一緒にいたとかそういうレベルではなく、身体の関係に及んでいるんですね。元カノ、部活のマネージャー、後輩、のべつ幕無し。ありえねぇ……。私ならもう1巻が終わるまでだって耐えられません! 速攻別れます、1巻の途中から別の相手と恋愛します。
で、ここが乙女的萌えポイントだと思うのですが、
・速人は基本的には芙美のことが一番好き
・ほかの女は遊び、しかもすぐ飽きる
・せいぜい5回が限度らしい
そうなんです。何と彼、オンリーワン要素を兼ね備えているんです。と言ってもこれがまた酷くて、芙美以外の女子に対してはやるだけやったらポイ、別れ方も後世に名を刻めるほどの傍若無人ぶり。
これは……読者はヒロイン目線で見ているからまだ愛されていると感じられるかもしれませんが(あまり感じたくもないですが)彼に手を出されるその他大勢の女子側で考えると恐怖以外の何モノでもありません。
速人は芙美が絡むと自分の親友にも牙をむきます。女子が羨むほど仲良しだったトップオブ親友の岳に対しても、彼が芙美に惹かれていると感じるや否や全力で切り捨てようとしたり。
そういう日常にだんだんと疲れてくる芙美。きっといつかは別れるんだろうな、とある意味達観した考え方をしています。流石菩薩女子。
でも彼はそんなつもりがなかったようで……ある日、速人と岳の仲に溝が出来たことを気にする芙美の元に速人がやって来ます。その時、彼女は言ってしまうのです。
「いつかは終わるんだろうなって思いながら一緒にいるのが、ツラくなってきたのかもしんない…」
それを聞いて、
「よくわかった。もう おまえなんか要らねえ」
と怒って去って行く速人。そこで大変なことを言ってしまったと気づく芙美、心の底から後悔します。でも私は声を大にして言いたい。
お前にそんなことを言う資格があるのか!? と。
速人はそれから暫く芙美を放置します。でもその間も他の男が寄り付かないように手を回すと言う用意周到ぶり。そしてある日、フラッと芙美の家にやって来たと思ったら……
婚姻届けを持ってきやがった!!!!!
怖いです、やることが極端すぎてもう怖いです!
芙美のことをちゃんと好きな速人、他の女はつまみ食いするだけで満足できるけど(この辺りも最低の物言い)芙美に対しては「0」か「100」しか選べない、だから婚姻届けを書かないならもう二度と会わないと彼女を脅し始めます。
いやいやいやいや、これもう恋愛コメディというか……ホラーでしょ。
でも芙美は速人のことが大好きなので、高校卒業まであと半年の間普通のクラスメイトとして過ごしてそれでサヨナラなんて考えただけでも……と泣いてしまいます。結局婚姻届けも書いちゃうし。
その後、芙美の親友・奏絵と岳がごちゃごちゃしたり、とある出来事がきっかけで速人と芙美の母親に確執が生まれそうになったりと、大きくストーリーが動きますが、4巻で二人は高校を卒業、大学生になります。
大学入学を機に芙美と速人は同棲を始めるのですが……ここからがまた大変なことに!
大学生になったけど・・・
同じ大学に通い始めた芙美と速人。付き合っていることも同棲していることもオープンにしているのに、それでも多くの女子たちが速人に群がってきます。
彼に耳クソほどの魅力も感じていない私には全く理解できません。
その中に曲者がいました。美人女子大生・静磨。芙美が速人の恋人であることが許せない彼女の特技は略奪愛です。
……デンジャラス。
そして速人はどういうつもりか、その静磨と一回イタしてしまいます。芙美を守るための行動らしい……のですが、理解の範疇を越えているよ、先生。
で、それで増長した? 静磨の策略で、芙美があわや同級生の毒牙にかかりそうになる事態に! 速人以外の男性に手を出されてしまったと絶望する芙美ですが、後に未遂だったことがわかります(ホッ)。
その間、速人は芙美を監禁。そして下っ端同級生を脅して真相を明らかにしたと思ったら、即座に黒幕である静磨に復讐。先輩から渡された彼女の部屋の合鍵をコピーし、皆にラブホ代わりに使ってもいいとばら撒いてしまいます。
静磨を完膚なきまでにボロボロにした速人、家に帰って芙美とイタし始めるのですが、そこでひと言。
「俺 もう一生浮気しねー」
今まで以上にデレる速人。
でもそれは……この期に及んでまだやってた奴の台詞ですよね、あんなに芙美にメロメロだったのに隠れて浮気をしていたのか? と思わず深読みしそうになりました。
同じ気持ちだったのか、それをサラっとスルーする芙美。
その後も速人のデレ期は続きます。人手不足のため芙美がサッカー部のマネージャーを始めると仲間たちに嫉妬しまくり、一生浮気しない宣言をスルーされたとボロボロ泣き始め、家に帰れば甘い言葉を吐き続け……流石の芙美もドン引き。
この間の一件があって、今の生活が当たり前ではないことを実感したと速人。
芙美を失うことを考えて、とっくに失っていてもおかしくなかったことに気づき、芙美に気持ちを伝えます。
「今日も無事で 俺だけのものでいてくれてありがとう」
感動のあまり涙する芙美、彼女を優しく抱きしめる速人。でもそんな胸キュンシーンでも私は思ってしまうのです。
……ほんとかぁ?
結婚詐欺師が改心したとしても、泥棒が足を洗ったとしても、またやるんじゃないかという疑いを持ってしまう気持ちと同じ。やはり日ごろの行動が物を言うのです。
まだまだ言いたいことは山盛りですが、このまま書き続けると夜が明けてしまいそうなのでこれくらいで止めておきたいと思います。
全8巻で完結済みの本作。実は別途小説も発売されています。そのタイトルは、
『後にも先にもキミだけ~最凶カレシと恋のトリコ』。
……うん。
記事内で紹介した場面はほんの一部分、本編には上記以外にも様々なエピソードが詰まっています。
ここまでの紹介で、
「あ、私は速人のこと好きかも」
「最終的に私が一番なら何をされても大丈夫だよー」
と、思ったそこのあなた。
近い将来、速人ばりのだめんずに引っかかってしまうやもしれません。
……気をつけて!!
(Edit&Text/彩乃)