間もなく東京国際映画祭や新千歳空港国際アニメーション映画祭など、注目の映画祭が開催となります。こういった映画祭には、日本未公開かつ全国上映が発表されていないようなアニメ映画も公開されるので、油断ができません。
2017年も間もなく終わりを迎える今回は、日仏共同制作のアニメ映画、『MUTAFUKAZ』や、スペインのアニメ映画、『サイコノータス~忘れられた子どもたち~』など、気になる作品が日本初上映を果たします。
そんな、映画祭にて日本上陸を果たした海外のアニメーション映画で、最近日本上映が発表されたばかりの注目の作品があります。
その名も『ぼくの名前はズッキーニ』です!
私、本作をすでに鑑賞しておりまして、かなりのイチ押し作品と認識しております。2017年10月末現在、劇場で新作映画を80本近く鑑賞してきていますが、その中でも今年ベスト級に大好きな映画がまさにこの『ぼくの名前はズッキーニ』です。
『ぼくの名前はズッキーニ』とはどんな映画?
原題は『Ma vie de Courgette』。スイスとフランス合作の海外では2016年に公開となった映画です。アニメーション映画といっても、本作は “ストップモーションアニメーション”という1カットずつ撮影していくいわゆるコマ撮りアニメでして、立体的で独特な味のある映像が特徴です。
物語の舞台は、孤児院。主人公の少年イカ―ルくんは母親を事故で亡くしてしまい、孤児院に送られます。その孤児院で、それぞれが複雑な事情を持った子どもたちやそれを見守る大人たちとの出会いを経ていく物語となっています。
タイトルにもあるように、このイカ―ルくんは“ズッキーニ”という名前を名乗るのですが、その理由は亡くなったお母さんがよくその名で呼んでいたという理由があります。
国内外での評価はどれほどなのか?
『ぼくの名前はズッキーニ』は海外の映画賞で多くの支持を得ており、2016年のアヌシー国際アニメーションフェスティバル(アニメーション映画では非常に箔のある映画祭)では最優秀作品賞と観客賞を同時に受賞するという快挙を果たしました。
そしてここ日本でも、東京アニメアワードフェスティバル2017の長編コンペティションに『ズッキーニと呼ばれて』のタイトルでノミネートされ日本上陸を果たしました。同じくノミネートを果たした『手を失くした少女』というこれまた傑作に最高賞であるグランプリを譲ったものの、本映画も見事、その下の優秀賞を獲得しました。
ここが良いんだ『ぼくの名前はズッキーニ』
そしてその東京アニメアワードフェスティバル2017で、まさに私は本作を鑑賞する機会を得られたわけですが、本当に素晴らしい映画でした。
本作のどこが魅力かといえば、なんといっても“楽しく”て“笑える”ところです。
「孤児院が舞台で、子どもたちが複雑な事情を抱えている」なんてあらすじを聞くと、なんだか暗い印象を持ってしまうかもしれませんが、観ていて辛い映画かといえばそんなことありません。それよりも、むしろ非常に温かい映画です。
それぞれの子どもたちが、元気いっぱいに好き勝手喋って、遊んで、喧嘩して。それを優しく大人たちが見守る優しい世界。そんな世界を本映画は描いています。
そんな幸福そうな日々でありながら、時折、子どもたちが見せる仕草や発言が影を落とす瞬間があり、それだけ楽しい日々が描かれていながらも不思議と『ああ、この子達にはもっと幸せになって欲しい! 』という気持ちになります。
そして、映画のクライマックス、ある事件をきっかけに一致団結する子供たち、そしてそれを経て“ズッキーニ”くんが迎えるある結末はとても感動的で、エンドロールでは幸せな涙が止まらなかったのをよく覚えています。
なのでまさに あの 『ぼくの名前はズッキーニ』の全国公開ということで、私はかなり大きなニュースと思っております。
アニメ映画のライター業を務めはじめて以来、散々いろんな映画を推しているのですが、中でも特に推しの一作となっていますので、ぜひ多くの人に映画館に足を運んでいただけたらと思います。
日本での全国上映は 2018年2月10日 です。前売り券の購入特典として、特製クリアファイルが限定1000枚用意されているそうですよ。要チェックです。
そして、冒頭で紹介した今後全国公開されるのかどうか、という期待のかかる海外のアニメーション映画達も各地の映画祭にて間もなく日本上陸です。合わせて一足先にチェックしてみるのもいかがでしょうか。もし全国上映されなければ、どんなに傑作でも本当に最初で最後の鑑賞チャンスになってしまうかもしれませんからね。
(Edit&Text/ネジムラ89)