『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 』(以下、本好きの下剋上)は、2018年、2019年の「このライトノベルがすごい!」ノベルズ部門第1位を獲得した注目の作品です。
その作品が秋アニメとして現在放送中! これはもう観るしかないでしょう!
この作品には異世界ものにもかかわらず冒険しなかったり、中世を感じさせる世界観に魅力的なものがあり、大変注目されています。その中でも特に注目されている点は作品のテーマです。
『本好きの下剋上』はアニメ作品としては珍しい「本を作る」ということをテーマとしている異色の作品。
今回はそんな全く冒険をせず本作りに情熱を懸けるアニメ、『本好きの下剋上』の異色さと、作品の持つ魅力について語っていきたいと思います。
冒険をしなくても異世界転生アニメは面白い
異世界転生アニメといえば冒険をしたり、モンスターと戦ったりするバトル物やファンタジー作品を想像するのではないでしょうか?
しかし、『本好きの下剋上』はそんな異世界転生アニメでありながら全く冒険をせず、モンスターなども出現しません。
この作品のテーマは「本好きによる本作り」になります。本作りと言っても書く方ではありません。本そのものを作ります。本の中身を作るアニメなら他にもありますが、本そのものを作ろうとするアニメはこの『本好きの下剋上』だけではないでしょうか。
主人公のマインは「本だけあれば生きていける」と思っている程の本好きです。しかし、転生した先は本が貴重な世界、さらには本なんて一生買えない庶民として転生してしまうのです。本だけあれば生きていけるのによりにもよって本が手に入らない世界に転生するなんて不運過ぎる!
これでは一生本を読めないまま第2の人生が終わってしまいます。ですが、彼女は本を読むこと諦めたりはしません。「本がなければ作ればいいんだ」この発想によって何も持たない幼い庶民の少女マインは本作りを始めるのです。
好き過ぎて本を作ろうとするのも凄い話なのですが、マインの異常な本への愛は時に視聴者を笑わせ、時にはドン引きさせてくれるいいファクターとなっています。
『本好きの下剋上』の面白い部分はマインが前世の知識以外本当に何も持っていない点です。特別な力もなく、生まれた家に恵まれたわけでもない少女がゼロから本を作ろうとします。
文字の勉強から始め、材料集めをし、初めから紙の本は作れないので、木の繊維を編んだ本や、粘土を固めた本、など様々な試行錯誤をしていくのです。無いも無い状態から現代知識の力で本が作られていくストーリーはとても目新しいものを感じます。
『本好きの下剋上』は細かい設定がいい世界観を出している
『本好きの下剋上』は中世の世界観を上手く描いた作品になっています。本が貴族にしか入手できない価格になっていることや、世間の識字率の低いこと、市場などでは数字のみ使われていることなど文字について細かい設定がされています。
本物の中世がどうだったかは置いておいて、中世を感じさせる世界観を上手く再現しているのではないでしょうか。
本作の世界観の中で特によく表現されている点が2つあります。
1つ目は街並みです。中世はこんな街並みだろう、こんな生活をしていたのではないかというイメージが詰まっています。
例えばマインの住む家は全体的に日当りが悪く暗い描写がなされています。これは明るい電球やランプが貴重であることや日当りを考えられた建築をする余裕がないという描写なのではないでしょうか。
さらに街並みは全てレンガで同じ外見をしています。これらの描写は中世の庶民の生活を上手く表現している部分でしょう。
2つ目は文字の練習から始まる所です。
マインは前世で日本語を習得していましたが、転生後の世界では違う文字が使われています。彼女は小学低学年ほどの年齢ということもありますが、全くその世界の文字がわからない所から始まります。文字が読めない、書けないでは本作りどころではありません。
しかし、識字率の低さから文字を教えてくれる人を探すのも一苦労です。あっという間に文字を書けるようになるのではなく先生に教わりながら徐々にできるようになる様子は世界観に適した表現となっています。
また、逆に計算では、現代の知識を利用し、凄い才能を見せています。数字がわかってしまえば計算の仕方は現代知識で可能なのです。
世界観を壊さず転生作品のお約束も忘れません。『本好きの下剋上』は忠実に描くと部分とエンタメ作品として爽快感をも描き分ける素晴らしい作品と言えます。
丁寧なアニメ化がされているため、とても観やすい
『本好きの下剋上』は丁寧にアニメ化された作品となっています。
この作品はストーリーの性質上、冒険や試合などの緊迫したシーンがありません。そのため、全12話の内に視聴者が展開に飽き、中弛みする事が考えられていました。ですが、アニメ化に伴い1話ごとに話のテーマを設定し、また次の話も気になる構成になっています。これらから監督である本郷みつるさんの作品への読みや理解の深さが窺えます。
また、他の登場人物たちの描写も丁寧に描かれています。
マインが本来知らないハズの現代知識を使っていることへの違和感を抱いている登場人物や、どれだけ現代知識的には正しいことを言っていても「子供の言っていること」とすぐに理解してもらえない事など登場人物の行動に違和感がない様に描かれています。
異世界アニメによくある「どうしてそういったことをしたのか」などの疑問を抱かずに観ることができるでしょう。
――この様に『本好きの下剋上』は派手な演出や展開はないものの独自のテーマや丁寧な描写によって魅力的なアニメとなっています。他の異世界アニメとは異なり、普段アニメを観ない人にでも勧めることのできる作品と言えるでしょう。皆さんも、この機会に異色の異世界転生アニメ『本好きの下剋上』を一度観てみてはいかがでしょうか。
(Edit&Text/天乃ひる)
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TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイト
©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会