『BEASTARS ビースターズ』(以下、BEASTARS)の作者である板垣巴留先生は女性作家です。
最近は女性作家も珍しくなくなってきました。ですが、漫画全体としては依然、男性作家が多数を占めている印象が強いです。
少数である女性作家ですが、彼女たちの描く漫画は女性ならではの描写が多数あり、非常に高い評価を得ています。
今回はそんな女性作家ならではの魅力を持った『BEASTARS』の3つの魅力を紹介していきたいと思います。
女性作家だからこそ描けるヒロイン
『BEASTARS』のヒロイン・ハルは男性作家では殆どみられないある特徴を持っています。それは性に対して積極的で、かつ奔放であることです。男性作家であれば、ヒロインの特徴をそういった設定にはせず、性に無関心である設定や耳年増なだけである設定を使用するのではないでしょうか。
しかし、ハルは作中で複数のオスと関係を持ち、主人公に好意を寄せながらも別のキャラクターと付き合っています。彼女の様な特徴を持つキャラクターを読者に納得させているのは同じ女性としての考えが上手くキャラクターに反映されているからではないでしょうか。
ハルが性に対して積極的で奔放である理由に自身がか弱い存在である感じていることがあげられています。さらに彼女のセリフに、
「身体を重ねている間だけは対等な存在として扱われている」
ともあります。性に対して奔放である理由にこの理由はなかなか男性から出てこない考え方ではないでしょうか。
男性作者であればハルの様なキャラクターは性に寄り過ぎて、ただの性的なキャラクターになってしまうことや、サブヒロインやモブキャラクターになってしまったでしょう。それをただ性的なキャラクターでは無く、ヒロインとして成り立たせているのは板垣巴留先生ならではの魅力ではないでしょうか。
人間関係の描写が女性作者らしい
『BEASTARS』の魅力は繊細な人間関係を動物同士の関係に上手く落とし込んでいるところでしょう。
思想や主義の違いを肉食動物と草食動物におきかえて表現している点や、生きていく上で感じるコンプレックスを表現する題材に動物を選ぶ点は板垣巴留先生のセンスの高さを示しています。
普通に考えて肉食動物と草食動物が同じ空間で生活しているなどありえません。これを成立させているのは肉食動物が草食動物を食い殺す事を禁止するルールです。このルールによって相反する動物たちが同じ空間で生活できています。しかし、肉食動物は己の中にある肉を食べたいという本能と戦い、草食動物は力では決して肉食動物に勝てない恐怖と戦って生活しています。
『BEASTARS』は一見平和に暮らしているようにみえて、実は危うい関係の上に成り立っている人間関係を表しているようにも感じます。この何とも言えないドロドロした感じは女性同士の人間関係に似ていませんか。
この危うい人間関係というか動物関係が『BEASTARS』をただのほのぼのアニメから、一転して緊張感のある動物関係を描いたアニメへと変えているのです。本作は女性らしい着眼点を持った素晴らしいアニメだと言えます。
主人公の扱い方に女性作家のいい部分が出ている
『BEASTRS』の面白いところはハルの様なヒロインが登場するところや、複雑でどこか危うさを感じさせる動物関係が描かれているところだといます。
また、主人公、レゴシの扱いにも女性作家特有の面白さを発揮しています。
レゴシは弱気でとても主人公とは思えない様な優柔不断さを持っています。そんなレゴシはある日、ハルと出会い、彼女に惹かれることになるのですが、このレゴシの気持ちの正体に悩むことになるのです。
自分の気持ちは肉食動物としての草食動物への食欲からなのか、自身が種族という垣根を越えてハルを愛しているのか……。
食欲も愛もまた本能ですよね。レゴシの気持ちはどっちなのでしょうか。
自身の愛に問いかけるなんて、とても女性作家らしい主人公の扱い方だと思います。今後の『BEASTARS』の展開や、レゴシの気持ちがどちらなのか、とても気になるところです。
(Edit&Text/天乃ひる)
◆CHECK!!
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会