『映画大好きポンポさん』『漁港の肉子ちゃん』、そして『竜とそばかすの姫』とこの夏は次々と傑作と言える映画が公開されており、アニメ映画好きとしては、天にも昇るような幸せを感じている今日この頃。しかし、夏休みシーズンに突入したここに来て、また新たな傑作アニメーション映画が登場してしまいました。

 その名も『サイダーのように言葉が湧き上がる』ですよ。

 音楽レーベルのフライングドッグの10周年記念作品として制作された劇場オリジナル長編アニメーション映画。『四月は君の嘘』などを手がけたイシグロキョウヘイ氏が初めて長編作品の監督を務めた作品でもあります。

 郊外に暮らしている話し下手な少年のチェリーと、前歯にコンプレックスを持つ少女のスマイルの二人の青春恋愛物語で、素朴な内容でありながら新鮮で気持ちの良い映像体験に仕上げた見事な映画となっていました。

 あまりの感動に、上映終了後に私は売店に直行。「見終わった後にもう一度映画を反芻したい。」「この映画がいかにして作られたのか知りたい。」といった気持ちが“湧き上がってきた”ので、早速映画のパンフレットを買おうと思ったわけです。

 しかし、驚きはそのパンフレットにもあったのです。

 2021年のベストパンフレットとでもいうべきその仕上がりに感動させられました。

◆まさかの装丁!レコード風パンフレット!

 皆さんは映画のパンフレットといえばどんな物を想像しますか?

 大抵の相場は700円〜1,200円ぐらいの価格帯のわりには、それほどページのない冊子のような物をイメージするのではないでしょうか。

 おそらく『サイダーのように言葉が湧き上がる』も同様のパンフレットが出てくるのだろう、と思っていたのも束の間。売店の人が取り出したパンフレットに驚きました。なんと厚めのケースに収められた、通常のパンフレットに比べたら明らかに大きなパンフレットとなっていました。

<『サイダーのように言葉が湧き上がる』のパンフレット(著者私物)>

 しかも、その中央には大きな円にくり抜かれていて、その中からは少女が笑顔を覗かせています。一見、パンフレットと知らなければレコードのようなデザインとなっています。

 こんな素敵な装丁のパンフレットとなっているとは! すでにこのデザインと知った時点で、私の中で「良い買い物をした」という確信に変わりました。ちなみにお値段は税込1,200円です。

◆なぜパンフレットがこんなデザインなのか?

 映画を観ていない人には一体なぜこんなデザインなのか、そもそもポスターにもその姿が見えないキャラクターがこれほどパンフレットの表紙に写り込んでいるのはなぜなのか、と疑問に思うでしょうが、実はこのレコード型デザインは劇中に登場するキーアイテムを再現した物となっています。

 『サイダーのように言葉が湧き上がる』では、バイト先の老人であるフジヤマが必死に探している亡き妻の歌声が収録されているレコード版を探すことが、一つの目的として描かれます。映画の冒頭からフジヤマは空のレコードジャケットを抱え続けており、映画でも強く印象に残るであろうことから、映画を観た人にとっては思わず「本物だ!」とときめいてしまうデザインとなっています。

 流石に表面だけだと映画のパンフレットには見えないということか、裏面はしっかり映画のメインビジュアルが添えられています。

<『サイダーのように言葉が湧き上がる』のパンフレットの裏面(著者私物)>

◆中身もしっかり充実しているぞ!

<『サイダーのように言葉が湧き上がる』のパンフレット内側(著者私物)>

 ちなみにケースから外すと、表紙もレコードを模していながらも、しっかり中身は映画パンフレット。映画のあらすじから、登場人物紹介にキャストや制作陣のインタビューなど充実した内容となっています。

 中でも注目は、映画に登場する俳句の一覧。主人公のチェリーの趣味が俳句で、実は映画の随所にストーリーに沿う形で度々俳句が演出として登場するのですが、パンフレットではその俳句の一覧も掲載されています。まさに痒いところに手が届く内容となっていました。

 また人によっては重要であるスタッフロールもしっかり収録。いまだに一部しか掲載してくれない映画パンフレットもありますが、個人的にはじっくり制作陣のお名前を噛み締めたいので、パンフレットに掲載するのが当たり前になっていって欲しいと常々思っています。

◆フライングドッグ10周年記念ならでは

 思えば音楽レーベルのフライングドッグの記念作ということで、レコードデザインのパンフレットはまさにピッタリのアイデア。よくよく考えたら音楽レーベルの記念作なのだからミュージシャンが主人公の映画などに挑戦してもおかしくないのですが、そこをあえて歌は歌でも“歌詠み”を主人公に持ってきたりと捻りが加わっているのもニクいところです。

 作中ではそんなレーベル名にもかけた“フライング”というワードを使った俳句も登場。

「夕暮れのフライングめく夏灯」

 俳句にレーベル名を取り入れるなんて、あからさまに思われかねないはずなのですが、作中でも自然に登場させて、しかも「あっ、良いな」という活躍の仕方をする句となっており、バランス感の良さのようなものを感じます。

 そして、肝心の探し求めていたレコードの音源を務める大貫妙子さん。そして主題歌を務めるnever young beach。さらに劇中音楽を担当する牛尾憲輔さん。それぞれの役割は違いながらも、いずれも映画の中で印象的な活躍をしてくれているところも、しっかり“音楽映画”。青春恋愛映画という主軸に加えて、企画を踏まえた音楽要素も見所になっているところも、改めてこの映画の手堅さを感じるところです。

 

 ――興行通信社の発表する映画の週末動員数ランキングなどにも『サイダーのように言葉が湧き上がる』のタイトルが上がってきておらず、こんな良い映画ならもっとお客さんが入って欲しい! そんな風に訴えたくなるところなのですが、どうやら口コミでの評判は高く、実は今回紹介したパンフレットも売り切れの映画館も多いそう。『サイダーのように言葉が湧き上がる』はこの夏見逃し注意の一本なので、映画もパンフレットも逃さないようにしておきましょう!

〈文・撮影(パンフレット)/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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