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 かつて新海誠監督といえば『秒速5センチメートル』と言われても過言ではないほどカルト的な人気を誇る映画でした。10月10日(金)に公開された、劇場用実写映画『秒速5センチメートル』は、2007年に新海監督により発表されたアニメーション映画を実写化した作品です。

画像引用元:『劇場用実写映画「秒速5センチメートル」ティザービジュアル ©2025「秒速5センチメートル」製作委員会』

<画像引用元:『劇場用実写映画「秒速5センチメートル」ティザービジュアル ©2025「秒速5センチメートル」製作委員会』>

 今でこそ『君の名は。』『天気の子』、『すずめの戸締まり』といった大ヒット作を持つ新海誠監督ですが『君の名は。』が登場するまでは監督の代表作としてよく名前が上がるのが『秒速5センチメートル』でした。かつてアニメーション映画『秒速5センチメートル』はどんな評価を受けていた作品だったのでしょうか。

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◆せつない恋愛アニメーション映画の代名詞だった『秒速5センチメートル』

 今でこそ新海誠監督は『君の名は。』が記録的なヒットを果たして、多くの人がその名を知るアニメーション監督となりましたが、それまでは知る人ぞ知る人物でした。

 かつて新海誠監督の代表作としてよく名前が上がるのが、大半を一人で制作したことで衝撃を走らせ監督の登場を知らしめた2002年の短編『ほしのこえ』と、そんな『ほしのこえ』と共通して距離と時間がキーとなる約60分の長編『秒速5センチメートル』です。

 『秒速5センチメートル』といえば“せつない”恋愛映画として高い支持を獲得した映画でした。子供時代にロマンティックな恋愛体験を経た主人公が、成長していくに連れて変化していく関係性や心情を3つの連作短編という形で発表した作品でした。

 子供時代に運命的とも言えるような体験を経ていても、それが大人になるに連れて疎遠になっていったり、それでも良かった思い出として過去が心に残り続ける様子は、多くの共感を得たり、悲劇として心に刺さる人を続出させることになりました。

 映画館での興行こそ小規模な上映ということもあり突出した数字ではなかったものの、Blu-rayやDVDでのソフトは当時でもトータルで10万本という高セールスを叩き出しました。

 『秒速5センチメートル』で描かれる悲劇性は、『君の名は。』の公開当時もよく比較対象として名前が上げられました。

 『秒速5センチメートル』と『君の名は。』はクライマックスの展開が似ているところや、その上で顛末としてはまったく逆の着地になっているところが『秒速5センチメートル』を知っている人たちからは当時驚かれ、そのうえで『君の名は。』が爆発的なヒット作となったことからもより『秒速5センチメートル』という作品の存在感が増すことになりました。

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◆高い海外評価 実は日本に負けず劣らず話題の作品だった?

 実は『秒速5センチメートル』の人気は日本だけでなく、海外でも日本に負けず劣らず高い支持を受けています。

 賞レースにおいても結果を残していて、日本では毎日映画コンクールのアニメーション映画賞。海外では第1回アジアパシフィック映画賞の最優秀アニメ賞やイタリアのフューチャーフィルム映画祭のランチア・プラチナグランプリなどを受賞し、日本に留まらない評価を獲得しています。作品のソフトも通常版の販売の後にわざわざインターナショナル版が発売された所などにもその人気の大きさが感じられます。

 中でもアジアでの人気が高く、特に中国では『君の名は。』の登場以前からカルト的な人気を博していました。

 その影響の一例として、2018年に公開されたアニメーション映画『詩季織々』があります。

 本作はリ・ハオリン監督が『秒速5センチメートル』に感銘を受け、『秒速5センチメートル』の制作を務めたコミックス・ウェーブ・フィルムとの日中合作企画にまで発展した作品です。オムニバス形式であったり、生活風景の美麗な描写であったりと『秒速5センチメートル』の影響を強く感じる仕上がりとなっていました。

 また一方で、公開からそれほど時間が経過していない2009年には中国中央テレビで放送されたTVアニメ『心灵之窗』で、『秒速5センチメートル』の場面を明らかにそのまま模倣したシーンが複数発見されるというネガティブな事件も発生しています。

 それほど『秒速5センチメートル』は海を越えてまで強い影響を与えていた作品だったのです。

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◆“今”実写版として生まれ変わることの意味

 そんな当時から長き時を経た実写映画化を果たすことになった『秒速5センチメートル』ですが、特大ヒット作ではない『君の名は。』や『天気の子』ではなくなぜこちらを? という人もいるかもしれません。しかし実際は人気や影響、作品の規模感や実現性から考えるとむしろ実写化が必然とも言えるちょうど良さを持った作品でした。

 今回の実写版ではアニメーション版のシーンを再現しつつも、よりキャラクターのディティールが肉付けされたり、新たなドラマも加えられたりとまた別の体験ができる仕上がりとなっています。

 『秒速5センチメートル』はかつてこそ“知る人ぞ知る”人気作だったわけですが、アニメーションの名監督として新海誠監督の名前が広く知られるようになった今、再び生まれ変わった『秒速5センチメートル』は、かつてよりもさらに大きな影響を日本や海外にもたらしてくれる存在になるかもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:『「秒速5センチメートル」ビジュアル  (c)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films』

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