今では人気声優として活躍している人でも、下積み時代は大変な苦労をしたようです。林原めぐみさんは、オーディションで審査員にあるモノを配って合格を勝ち取ったとか──。また、ベテラン声優の中には、意外な経歴を持った人も存在します。『ドラゴンボール』のセル役や、『サザエさん』の穴子さん役で知られる若本規夫さんは、声優になる前、驚きの職業についていました。
◆人気声優のあまり知られてない裏話
現在、ベテラン声優として活躍している人たちも、かつては下積み時代を経験していますが、声優になる前やデビュー後、人知れず驚きの苦労をしていたようです……。
●オーディションで審査員にミカンを配って合格!?──林原めぐみさん
『エヴァンゲリオン』シリーズの綾波レイ役などで知られる林原めぐみさんは、衝動的に声優オーディションに応募します。
声優を目指した経緯については、2001年出版の著書『明日があるさ SWEET TIME EXPRESS ちょっトク文庫版』(出版社:KADOKAWA)に詳しく書かれています。
高校卒業後、看護師を目指していた林原さんは、看護学校へ願書を提出したときの学校職員の態度に腹を立て、たまたま目にしたアーツビジョンの声優無料養成オーディションに応募。
およそ600人が参加するオーディション会場の張り詰めた空気の中、たまたま近くの八百屋で買ったミカンを審査員に配った林原さんは、「ミカンの子」として強烈なインパクトを残したのです。
この奇抜な行動が功を奏したのか、優秀な成績のおかげか、「アーツビジョン付属日本ナレーション演技研究所」の第1期生に特待生の1人として見事合格を果たします。
しかし、林原さん本人はミカンの件を覚えていないのだとか。
林原さんは両親から「声優を目指すのであれば、看護学校を卒業して正看護婦免許を取得すること」を条件に出され、1985年から3年間、看護学校と声優養成所両方に通い、正看護婦免許を取得した努力家でもあります。
●女にフラれて役者を目指す──大塚明夫さん
『ブラック・ジャック』シリーズの主人公のブラック・ジャック役や、『ONE PIECE』のゴールド・ロジャー(ゴール・D・ロジャー)役などを務める大塚明夫さんは、父親の大御所声優・大塚周夫さんと親子2代で活躍しています。
2021年12月に『声優グランプリ』の公式Webサイトに掲載された「【声優への道】声優・大塚明夫インタビュー「声優として生きるためのヒント」という記事で、大塚さんが声優になった経緯が明かされました。
大塚さんはもともと役者になるつもりは毛頭なく、マグロ漁業の船に乗ろうと考えていたものの、歯の治療が間に合わなかったうえ、乗る予定だった船も座礁して乗れなかったそうです。また、役者として活動する前は父・周夫さんとうまくいっていなかったのだとか。
転機となったのは同級生の女性との再会でした。
その女性に想いを寄せていた大塚さんは、ある劇団の準劇団員と交際していた彼女が言った「男の人は夢があるほうがいい」という言葉に強く心を打たれ、役者を目指すことにしました。
大塚さんは2003年12月放送のラジオ番組『Earth Dreaming〜ガラスの地球を救え!』に出演したときもこの話題に触れ、この女性にはフラれてしまったことを明かしています。
不純な動機ではありましたが、大塚さんはデビューを果たし、2017年放送の「人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙!3時間SP」では第10位にランクインするほどの人気声優となっています。
大塚さんの人気は本人の努力や才能の賜物ですが、きっかけを作った女性の一言の影響も大きいものでした。
詳しく読む⇒「女にフラれて役者を目指す!?」「審査員にミカンを配って合格!?」 人気声優4人のおもしろエピソード
◆意外な経歴を持つ声優
今を時めく人気声優の中には、最初から声優を目指したわけではなく、もともとは一般企業に勤め、そこから声優の夢を追いかけた、意外な経歴を持つ人もいます。中には、警視庁機動隊員だった声優も存在します。
●若本規夫さんは警視庁機動隊員だった
『ドラゴンボール』のセル役や、『サザエさん』の二代目・穴子さん役などで知られる若本規夫さんは、2021年4月に『マイナビニュース』に掲載された「未来は日々の鍛錬の先に。元警視庁機動隊、声優 若本規夫のけもの道を行く孤高の精神」というインタビュー記事の中で、過去に警視庁機動隊員だったことを明かしています。
若本さんは早稲田大学法学部出身。卒業を控え、進路に迷っていたところ就職課に「ドキドキする仕事はないですかね?」と相談した彼は、警視庁を紹介されたといいます。
当時、学生運動が過激化し、日本各地で暴動が発生する中、警察学校を卒業し警察官となった若本さんは、機動隊員として学生運動の鎮圧などに従事しました。
また、2022年出版の『若本規夫のすべらない話』(出版社:主婦の友社)によると、交番勤務をしていた若本さんは、交通違反者に情が移り、何度か見逃していたところを上司に見つかってしまったといいます。
上司から説教を受けた若本さんは、「自分は法を執行する側の人間ではない」と悟り、1年で警察官を辞めることに。
その後は知人の誘いで日本消費者連盟の事務局メンバーとして働き、仕事にやりがいを感じていたものの、そこは組織内の人間関係が悪く、ある日の会議で口論となり上司に手をあげて解雇されてしまったそうです。
2007年出版の『アニメージュ』2月号(出版社:徳間書店)内に掲載された「この人に話を聞きたい 若本規夫」によると、声優を目指した経緯は「消費者連盟で上司を殴り飛ばし、解雇された後に安酒をかっくらって電車で帰る途中、シートで横になっていると上の棚に置いてあった新聞が顔に落ちてきた」ことがきっかけだったそうです。
新聞に掲載されていた声優養成所「黒沢良アテレコ教室」のオーディションの広告が目に留まり、若本さんは参加。見事合格を勝ち取って現在に至ります。
●金田朋子さんはブルボンの社員だった
『アニメ おしりかじり虫』のおしりかじり虫18世役などで知られる金田朋子さんには、製菓会社ブルボンの社員だった過去があります。
2008年にNHKのポータルサイト『週刊!ハタラキング』で配信された「ぶっちゃけ大変でした!〜20代、私の仕事〜 Vol.29 金田朋子(前編)」という記事の中で、小学校から大学まで関東学院の一貫校で学び、大学では建築学科に在籍したものの、建築の世界は自分には向いていないと思い、建築関係の職を諦めたことを明かしました。
その後、ブルボンのお菓子が好きという理由だけで株式会社ブルボンに就職し、新潟本社で勤務しながら弁当の個数の確認などを担当していました。
しかし、工場人たちなどに「なんでそんな東京の方から来ちゃったんだ? 冬になったら雪に埋もれちゃうよ」と言われ「さすがに冬は迎えられないなぁ」と思い、冬が来る前に退職。
その後は新規開店したデパートに再就職し、おもちゃ売り場で勤務していたころ、姉にすすめられて夜間の青二塾東京校第二部に入所し人気声優となりました。
詳しく読む⇒セル役、穴子役の若本規夫は「警視庁機動隊員」だった!? 意外な経歴を持つ4人の声優
〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01〉
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