漫画の世界では、一度完結した作品が時を経て続編としてよみがえることもあれば、逆に「そろそろ終わる」と言われながらも長年連載が続く作品もあります。伏線が残されたまま物語を終えたことで読者を期待させ続けているものや、作者自身が結末を決めていると語りながら、いまだ最終回を迎えていないものなど、その背景にはさまざまな事情があるようです。どちらのケースも、多くのファンが物語の行方に注目し続ける理由となっています。
◆「続編の可能性」を捨てきれない漫画
『るろうに剣心−明治剣客浪漫譚−』など、昭和・平成の時代に最終回を迎えた漫画が、令和の時代になって続編を連載するケースをたびたび見かけるようになりましたが、次の3つの漫画は連載終了前から続編の構想があったとされるものの、いまだに実現していません。もしかしたら、作者の気分や都合次第では、続編が実現するかも!?
●本編未回収の伏線は続編への布石──『ダイの大冒険』
1989年から1996年まで『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』は、数多くの伏線を残したまま終了した漫画です。
たとえば、黒の核晶の爆発で命を落としたと思われていたダイが、最終話でロン・ベルクにより生きていることが明かされます。しかし、その行方は最後まで謎のままとなっているのです。
また、第216話で聖母竜マザードラゴンは、「ある邪悪な力によって生命が尽きようとしている」と語っていました。
大魔王バーン以外にも別の悪がいることを匂わせる発言ですが、真実が明かされないまま物語が終わっています。このほかにも未回収の伏線がいくつもあり、この漫画は続編をほのめかす終わり方をしています。
それを裏付けるかのように、本誌連載終了から7年後、2003年に発売された『JUMP REMIX』版のコミックスに掲載された完結記念コラムで、原作の三条陸先生が続編にあたる「魔界編」の構想があったことを語っています。
そのコラムの中では、ラーハルトを復活させた理由や、大魔王バーンと冥竜王ヴェルザーのほかに第3の敵がいたことなど、かなり具体的な構想があったことを明かしています。
三条先生は、読者や編集部からの連載続行の要望があったので、念のため伏線を用意しておき、構想だけは練っていたとも語っていましたが、作画担当の稲田浩司先生の体調不良なども重なり、続編は実現しませんでした。
そんな稲田先生ですが2016年に快復し、再び三条先生とタッグを組み現在は『ジャンプSQ. RISE』で『冒険王ビィト』を執筆中です。
まずは『冒険王ビィト』の完結に全力を尽くすと考えられますが、その連載が終わったら、かつて三条先生が練っていた「魔界編」の構想が、日の目を見ることがあるかもしれません。
●続編の可能性はゼロじゃなかった──『SLAM DUNK』
1990年から1996年まで『週刊少年ジャンプ』で連載された、井上雄彦先生の『SLAM DUNK』は、最終回の276話の最後に「第一部完」と書かれていたり、最終巻が発売された当初は「以後続刊」と表記されていたりしました。
なぜこのような表記がされたのか、公式から真実が語られることはありませんが、注目すべきは1996年という年です。これは、最初に紹介した『ダイの大冒険』の連載が終わった年でもあります。つまり三条先生のように、『SLAM DUNK』においても、同様に続編の議論が編集部との間で交わされていた可能性は十分に考えられます。
しかし、たとえ構想があったとしても、それが世に出る可能性はかなり低いと思われます。なぜなら、井上先生の公式Webサイトで「現在「スラムダンク」2及び続編の予定はございません。」と明記されているからです。
しかし、続編の可能性はまったくないのかというと、その可能性も井上先生自身が否定しています。同サイトには、「誰かにやらされるものではなく、自分が楽しんで描いてこそのスラムダンクなので、そういう気持ちでとりくめる時がきたら、第2部があるかもしれません。」と書いてあります。
実際、連載終了後の1998年には、『週刊少年ジャンプ』に宮城リョータを主人公にした読み切り漫画『ピアス』を掲載しています。
さらに、2005年には、「スラムダンク1億冊ありがとうファイナル」というイベントを開催し、廃校となった神奈川県立三崎高等学校校舎の黒板に、漫画『スラムダンク-あれから10日後-』を描いているのです。
またこのほかにも、井上先生が監督・脚本を務め、2022年に劇場公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』や、今年3月の卒業式のシーズンに合わせて井上先生がX(旧Twitter)に投稿した海南大附属高校3年の牧紳一の卒業イラストなど、幅広い展開でファンたちを驚かせました。
これらのことを踏まえると、『SLAM DUNK』の続編は、もしかしたら実現するかもしれません。
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◆「作者が終わると発言」←まだ続いている漫画
アニメや漫画もいつかは放送や連載の終わりを迎えます。しかし、「間もなく終わる」と発表していながら、いつまで経っても終了しない作品もいくつかあります。
●「もうオチは決まっている」発言から5年以上経過──『名探偵コナン』
『名探偵コナン』は、原作者の青山剛昌先生が、100巻で終わることを示唆していました。
連載25周年を迎えた2019年に、青山剛昌先生が4月24日放送の日本テレビ系『1周回って知らない話』に出演。取材を行ったタレントの「100巻あたりで物語は動くのか?」との問いに、青山剛昌先生は「100巻だとキリが良い」「もうオチは決まっているからね」と発言したのです。
SNSを中心に「100巻で最終回を迎えるという意味なのか?」「あと4巻ですべてをまとめるならすごすぎる」といった声が出ましたが、2025年3月現在も同作は連載されており、コミックスは第106巻まで出版されています。
ストーリーの都合や編集部との話し合い、ファンの要望など理由は定かではありません。しかし、いまだ見ぬ最終回に、読者の関心は高まるばかりです。
●30年前から最終回が決まっていた?──『ガラスの仮面』
1975年に連載を開始し、休載をたびたび挟みながらも40年以上続く人気長編マンガ『ガラスの仮面』。
2018年5月、原作者の美内すずえ先生は、自身のSNSで「『ガラスの仮面』は、必ず最終巻まで描き続けます」と宣言しました。
また、2019年1月に『朝日新聞』の書籍の情報サイト『好書好日』で公開された、「「ガラスの仮面」創作の源はここにあった 美内すずえ先生異業種対談集「見えない力」」で、最終回の内容は30年前から決まっていると明かしています。
美内すずえ先生は、夫が2016年頃に倒れて要介護5と認定され、介護生活を送っているのだとか。
「頭の中ではもう結論は出ていますし、最終回の内容やページ構成、主人公がどんなことを喋るかも30年くらい前からすべて決まっています」「ただ、なかなかそこに行きつかないんですよ(笑)」「例えば東京から新幹線に乗って、終点の博多まで行くとするじゃないですか。そうすると静岡の辺りで富士山の噴火が始まったとか、米原の辺りで大雪が降って動きませんとか。そうやって今は、あちこちで止まったり、脱線したりしているような状態です」と語っており、まだまだ作中に詰め込みたい内容があるようです。
詳しく読む⇒最終回が決まって30年経つのに…… 「作者が終わると発言」←まだ続いている3つの漫画
〈文/アニギャラ☆REW編集部〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」新装彩録版 第25巻(出版社:集英社)』