まもなく春休みシーズンが到来するということで、『ドラえもん』をはじめとした多くのアニメーション映画が上映をスタートする一方、新たな施策を繰り出しているのが既に上映を開始しているアニメーション映画たちです。

 現在、上映されている映画たちは、新たな入場者特典を用意したりや追加の映像などを加えることで、既に映画を観たという人もまた映画を観にきたくなるようなリピーター施策を行っています。

 ただ、一方でこういった施策のサイクルの中では「もっと遅れて行けば良かった」と思う人も出てきているのではないでしょうか?

◆予想を超える集客に「33.5巻の配布は終了」? 早めに行くだけではダメ?

 相当な量を用意しているはずの入場者特典ですが、それでも用意していた量が全然足りないというケースが時折起こってしまいます。それが起きてしまったのが『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』です。

 この映画では、入場者特典の第1弾として冊子『ハイキュー!!33.5巻』が200万名限定のプレゼントとして用意されていました。

 しかし、200万部という相当な数を用意していたにも関わらず公開から数日──、場合によっては初週末中に配布が終わってしまう映画館が続出。週明けに観にいった人では公開が始まってから時間が経っていないにも関わらず、入場者特典がもらえなかったという人が多く生まれてしまいました。

 当初から入場者特典の第2弾〜第5弾の配布を行うことは発表されていて、第2弾は3月9日からの配布を予定されています。第1弾の特典の配布期間が3週間も設けられていたことを考えると、かなりの想定以上のペースで来場者がいたのかが分かります。

 これを受けて既に第1弾入場者特典の『ハイキュー!!33.5巻』は、カバー違いの復刻版を今後の入場者特典として再配布することを発表しています。

 欲しかったという人には、嬉しいチャンスではある一方、既に映画館に足を運んでいたにも関わらず予定数を超えて配布が終わってしまいもらえなかった人にとっては残念な出来事となってしまいました。

◆『鬼滅の刃』のちょっと変わった試み 「映像という特典」を追加!

 入場者特典が「モノ」じゃないケースも登場しています。『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』では入場者特典としてグッズを配布することに加えて、「入場者特典映像」を放映し始めました。

 この入場者特典映像はアニメーションを制作しているufotableのメイキングを観られるもの。

 第1弾では甘露寺蜜璃と時透無一郎の『刀鍛冶の里編』のアクションシーンを制作過程とともに編集し、4分間の新規映像として本編に加えて劇場上映しています。

 3月16日からは第2弾、4月6日からは第3弾の放映も予定されていて、現在とはまた別の映像が流されます。

 「週替わりでおまけ映像が変わる」というケースこそこれまでもよくあったのですが、今回の『鬼滅の刃』のように公開当初にはなかった映像特典が後から加わるというケースが近年登場してきています。

 たとえば、ロングラン上映を果たした『ONE PIECE FILM RED』は興行の最終1ヵ月限定で参加キャストや監督、原作者のコメントをフィナーレ映像として流した例がありました。

 一方で今回の『鬼滅の刃』の追加映像特典が加わったのは公開から1ヵ月未満の出来事。公開まもなく足を運んだ人はどの映像特典も観られないというのは少し残念です。

◆来場者特典もしっかり予習しないといけない?

 ここで取り上げた例のように、今アニメーション映画では当たり前のように入場者特典が付いたり、それが週替わりで変わっていったりと観に行くタイミングによって得られるものが変わっています。

 それはちょっとした「オマケ」かもしれませんが、小冊子のような作り込まれたグッズの有無が数日違いで発生したり、当初は付いていなかった映像が後から数分も追加されたりするのは、体験として少しフェアではありません。

 観客もあらかじめ足を運ぶ映画館に入場者特典の在庫があるのか調べたり、配布期間がいつなのかを調べないと「ちょっと損をするかもしれないですね」と言ってしまえば終わりですが、早々に映画館を足を運んだ人が後から損をするようなことにならないように、入場者が集中する時期の入場者特典の十分な見積もりや追加特典のスケジュールを早期に発表するなど、興行する側にはリピーター施策と同じくらい、初動で足を運んでくれたファンが残念がるような事態にならないよう頑張ってほしいところです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『アニプレックス チャンネル』より


アニメ『ハイキュー!!』公式サイト
©2024「ハイキュー‼」製作委員会 ©古舘春一/集英社


ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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