ストーリーの進行やキャラクターの心情の変化によって、オープニングやエンディングで流れるムービー演出が変わるアニメがあります。

 細かな演出から大胆な変更まで制作スタッフの作品への愛がハンパなく、主題歌を飛ばせないと視聴者からはうれしい悲鳴が。

 また、ストーリーとリンクして変わる演出がエモ過ぎて、オープニングで泣けると話題になったアニメもあります。

◆エモい演出にオープニングから泣けてしまう──『この音とまれ!』

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 ストーリーが佳境を迎える第2クールのオープニング「Harmony」の終盤では、エモい演出が連発。

 鳳月さとわが堂島晶や母親と和解するストーリー進行に沿って、演出が変わるオープニングムービーに、本編が始まる前から泣けると話題になりました。

 まずは、オープニングでバランスを崩して倒れそうになる鳳月さとわのシーンです。このシーンの堂島晶は、最初さとわの後ろで背中を向けて立っています。

 過去のコンクールでさとわの演奏を聞いて、自分の才能のなさを思い知らされた晶。そのため、時瀬高校筝曲部の外部指導者として迎えられた彼女は、当初さとわを嫌って冷たい態度をとっていました。しかし、久遠愛をはじめとする部員たちの真剣さ、ひたむきな姿勢に心を打たれ、さとわとも和解。

 これを受けて第21話のオープニングからは、バランスを崩すさとわに晶が手を差しのべて助けるようになります。また、オープニングの最後のカット、時瀬高校筝曲部メンバーと顧問の滝浪涼香がいるシーンにも晶も加わりました。

 次に演出が変わるのは、10年連続全国大会出場の記録をもつ超名門、姫坂女学院箏曲部のメンバーがいるシーンです。第23話で凰かずさ率いる姫坂女学院箏曲部が王者の覚悟を見せる演奏をします。

 すると第24話のオープニングでは、シルエット状態だったキャラクターが穂澄だと判明。選抜メンバーに選ばれず、悔しい思いをしながらもサポートメンバーとしてかずさたちを支えた生徒にスポットが当たります。

 また、自分が奏でる音をつまらないと感じていた珀音高校の神崎澪は、県大会でほかの部員たちと演奏する喜びを知ることに。その結果、これまで暗い表情で歩いていた神崎のシーンは、第25話から頬を紅潮させて楽しさを全身で表現する演出に変わります。

 最後は、さとわの母親が雨の中、夕日を見ながらたたずんでいるシーンです。さとわは中学生のときに、母と仲違いして鳳月会から破門されていました。

 しかし、県大会で時瀬高校の演奏を聞いた母に娘の気持ちが届いて、長年のわだかまりが解けます。それを受けて最終話の第26話では、満開の桜の木の下でさとわと母が並んでいるエモいシーンに。

 『この音とまれ!』では、キャラクターの葛藤や気持ちの変化がしっかり描かれています。それだけにストーリーの進行とリンクして、オープニングムービーが変わる演出は感動を呼びました。

 なお、第1クールのオープニング「Tone」では、シルエット状態だったキャラクターの正体が次第に明らかに。ストーリー進行につれて、ライバル校の生徒たちが姿を現します。

◆なでしことリンの距離感でメールの文面が変わる──『ゆるキャン△』

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 第1期のオープニングでは『ゆるキャン△』のタイトルロゴが出たあと、アウトドアチェアに座っている志摩リンが持っているスマホ画面の文面が一瞬アップに。各務原なでしこから「リンちゃん! 一緒にキャンプいこう!!」と誘いがあり、それに対するリンの返答が変わっていきます。

 1人でキャンプをするのが好きだったリンの最初の返事は「やだ」でした。しかし、第6話と第7話でなでしこと一緒に四尾連湖でのキャンプを経験すると、第8話から返事が「考えとく」に。

 そして、なでしこを含む野外活動サークルのメンバーとクリスマスキャンプ中の最終話では、返事が「いいよ」に変わっています。オープニングで一瞬しか映らないスマホ画面ですが、リンの心情に応じて変わっていく細かな演出です。

 なお、意図的なのか本編の時間の都合なのかは分かりませんが、なでしこが風邪を引いている第9話ではオープニングがカットされています。そのため、リンがスマホでなでしこからのキャンプの誘いの文面を見ているシーンはありません。

 また、『ゆるキャン△ SEASON2』のオープニングでも、リンのスマホにうれしい演出が。リンは図書館で斉藤恵那とスマホで写真を見ています。

 それらの写真は毎回オープニングで変わっており、1話前で撮ったものに。なでしこたちとの思い出の写真を、リンが毎週チェックして笑顔になる演出は、エモさを感じずにはいられないです。

OPからEDまで一瞬も目を離せない笑える演出──『ヒナまつり』

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 普段から新田義史は、行きつけのバー「Little Song」のバーテンダー桜詩子を口説いており、第7話ではヒナに母親が必要だと判断して思いきって告白。しかし、バッサリとフラれてしまうと、第8話のオープニングから詩子の登場シーンが徐々に減っていきます。

 オープニングでの詩子の主な登場は、河原にたたずむヒナを新田と一緒に迎えに行くシーン、バーテンダーをしている三嶋瞳を見守るシーン、ホームレスをしていたアンズの引き取り先として紹介した中華店のシーンです。

 詩子は浅賀商店街の中心的存在であり、ホームレスに炊き出しをしたりアンズの引き取り先を世話したりと人情味がある性格をしています。

 しかし、金になると判断したら中学生の瞳をバーテンダーとして働かせたり、辞めさせないように無理やりマンションの賃貸契約をさせたりする非道な面もあるキャラクターです。

 第7話で新田と恋人関係になる未来がなくなると、第8話から河原にいるヒナを迎えに行くシーンから姿を消します。また、このほかに登場人物が総登場するシーンもありますが、第9話からはそこにも姿がありません。

 さらに詩子の非道な面が明らかになってくると、第10話から瞳を見守る詩子、中華店でアンズの横にいる詩子も消滅。オープニングでの詩子のシーンは、泣いている瞳に無理やり賃貸契約をさせているシーン、泣いているアンズからお金を巻き上げる(実際はアンズが万引きした商品の代金を回収している)シーンだけになります。

 しかし、最終話となる第12話では復活。ヒナを河原に迎えに行くシーン以外で再び登場しています。

 なお、エンディングでは新田をフッた第7話から詩子が登場しなくなります。また、ヒナが新田のもとから去ることを決意した第8話、スキー合宿で遭難したという知らせが入る第11話では彼女もエンディングに登場しません。

 特に注目してほしいのは、新田が大事にしている壺やお皿をヒナが超能力で空中に浮かせている朝食シーンです。このシーンからもヒナがいなくなり、宙に浮いてた壺やお皿はテーブルの上に並べられています。

 ほかにもエンディングのバーのシーンでは、瞳がカクテルを出している回があったり、グラスを拭いている回があったり。オープニングからエンディングまで、じっくり楽しめる笑える演出がされています。

◆最後の最後でお約束のハプニング──『エロマンガ先生』

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 通常のエンディングは風呂の脱衣所で和泉紗霧が、「adrenaline!!!」の曲に合わせて体を揺らしたり飛び跳ねたりして、洗濯が終わるのを待っています。

 最後は洗濯物が入ったカゴを持っている紗霧で終わるのですが、最終話だけ風呂から上がって来た素っ裸の和泉正宗と鉢合わせ。

 お互いびっくりして硬直状態になりますが、裸の正宗に紗霧が洗濯カゴや洗剤を投げつけて終わります。最後の最後でアニメおなじみの風呂上がりに、ばったりハプニングがあり、びっくりしてテレビの前で固まってしまった視聴者もいるかもしれません。

 通常のエンディングではムービー演出がずっと同じだったため、油断して最後を見逃してしまっている人もいるかも……。なお、取材と称して島に行く第9話、第10話は水着回ということで、特殊なエンディングムービーになっています。

 第9話ではタイトルロゴの『エロマンガ先生』の上から「山田エルフ大先生」と書き換えられ、エンディングではエルフの水着姿ばかりに。同じように、第10話では「千寿ムラマサ先生」となり、ムラマサの水着姿を堪能できます。

 

 ──『「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』のオープニング「紅蓮華」で流れるムービーには、柱が勢ぞろいしているシーンがあります。しかし、第21話・第22話にかけて全員の姿が現れるまで、冨岡義勇と胡蝶しのぶ以外の柱たちはシルエット状態です。

 主題歌の演出ムービーが変わるアニメには、良作が多い気がします。それだけスタッフが、細かいところまでこだわっている証拠であることは忘れてはいけないでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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