少年漫画では、ストーリーにバトル要素を取り入れて人気が出たら、それ以降のストーリーをバトル漫画として進めていくことがしばしばあります。
以下の4つの作品は、そのような路線変更してさらに人気が高まった作品といえるでしょう。
◆路線変更はストーリーだけじゃない?──『ドラゴンボール』
今やバトル漫画の代名詞的な『ドラゴンボール』ですが、本作は冒険活劇からバトル漫画に路線変更してさらに人気が出ました。
序盤は西遊記をベースとしたギャグシーンの多い作風で、少年期の悟空がドラゴンボールを探す旅に出たり亀仙人のもとで修業を積んだりするストーリーです。
そしてストーリーだけではなく、悟空のキャラクターにもテコ入れがされ、強さを追い求める主人公というキャラクターに変わっていきます。
結果として作品の人気が一層高まったのはもちろん、主人公も人気キャラへと上り詰めました。ライバルキャラが主人公の順位を上回ることも多々ある公式の人気投票では、ベジータを上回る票数を獲得することも。
連載終了から約30年経っているにもかかわらずゲームなど派生作品が続々発売されており、さらに2024年秋には完全新作アニメ『ドラゴンボールDAIMA』の放送が予定されています。
人気は今でも衰えることはなく、路線変更によって大きく運命が変わった作品といえるでしょう。
◆シリアス展開になってもギャグは不滅!──『ジャングルの王者ターちゃん♡』
もともとは下ネタ満載のギャグ漫画でしたが、格闘漫画に路線変更してさらに人気が出ました。
当初は1話7ページという短めのギャグ漫画でしたが、のちに15ページの長編漫画になります。
路線変更してからは『新ジャングルの王者ターちゃん♡』とタイトルも改め、一転してシリアスな戦闘が中心になりました。
そしてストーリー中では、環境破壊について取り扱うなどメッセージ性の強い作品へと変わります。
しかし路線変更してからもシリアスなバトルの間にギャグシーンが挟まることもあり、根っこの部分は変わっていないといえるでしょう。
結果として1993年から1年間アニメが放送されるなど、路線変更によって一層人気の作品へと進化しました。
シリアスなストーリーに下ネタ多めのギャグが入ってくるという作風は、のちの徳弘先生の作品である『狂四郎2030』や『昭和不老不死伝説 バンパイア』などに受け継がれていきます。
◆涙なしには見られない作品だった!?──『幽☆遊☆白書』
もともとは1話完結のオカルトコメディでしたが、バトル漫画に路線変更してさらに人気が出ました。
初期は霊界死闘編と銘打たれ、車にはねられそうになった子供をかばい霊体となった幽助が生き返るための試練を通して、生きている人々や成仏できない魂を手助けします。
内容としては人情味のあるストーリーが中心で、たぬきが自分の命の恩人であるおじいさんの孫に化けて会いに行くエピソードなど、のちの本作とは同じ作品と思えないという声も多いです。
幽助が生き返ってからはバトル漫画色が強くなり、コメディ的な序盤とはうってかわってシリアスでハードなストーリーへと変わっていきます。
アニメ版は初期のエピソードがごっそり削られ、わずか5話にして幽助が生き返る展開のため、この初期路線を知らない人も少なくありません。
昨年はNetflixで実写版が配信されるなど、今でも根強い人気を誇る作品になりました。
◆初期設定がウルトラマンすぎる?──『キン肉マン』
格闘漫画のイメージが強いですが、初期はギャグ漫画でした。
内容としてはウルトラマンなど変身ヒーローのパロディ的なもので、当時のキン肉スグル(以下:スグル)にはにんにくを食べると巨大化してビームを出したり、空を飛んだりできるようになる能力が備わっていました。
さらに驚くべきことに連載前の読み切りでは、キン肉マンはウルトラの父の行きずりの子とされています。つまり設定上は当時のウルトラ兄弟の末っ子(非公認)です。
このような設定もあり、初期はウルトラマンのように怪獣などの敵を倒していくストーリーでした。
休載などが重なり色々な壁にぶつかった後に、第20回超人オリンピック編がスタート。ここからは以前のギャグ路線とはうってかわって格闘路線に変わり、ギャグもありつつシリアス中心のストーリーへと変わっていきます。その結果、一層人気を博していきました。
その後第2次怪獣退治編にてギャグ路線に戻ることもありましたが、格闘路線の根強い人気から再び第21回としてオリンピック編が開始します。
格闘漫画に転向したことで、アニメ化やキャラクターのフィギュア型消しゴム(通称、キン消し)のブームなど社会現象化しました。
第1次ガチャガチャブームはキン消しのブーム時とされており、路線変更によって、おもちゃ業界の未来をも変えたといえるでしょう。
──こうした路線変更が行われたマンガは『ジャンプ』作品に多いです。そうした背景にはアンケート方式の存在などインターネットが普及していなかった時代から、読者の声が編集サイドに届きやすかったという特徴があるでしょう。
近年このような路線変更するマンガがあまり見られないのは、アンケートの結果が以前ほどマンガに影響しなくなったという理由もありそうです。
〈文/michel 編集/諫山就〉
※サムネイル画像:Amazonより