『ジャンプ』作品には見た目が弱そうなうえ、登場シーンも少ないのに強さを見せたキャラクターがいます。その中にはメタボ体型だったり、出番が少ないモブキャラなのに主人公に勝ち逃げしていたりするツワモノも。次の4人は、主人公を苦しめた意外なキャラクターたちです。
◆ケンシロウを苦しめたメタボキャラ、ハート様──『北斗の拳』
シンが作り上げたKING軍の幹部ハートは、脂肪の塊と呼ぶにふさわしいメタボ体型をしています。しかし、ムダに太っているわけではなく、この脂肪を活かしてケンシロウを追い詰めました。
ハートは経絡秘孔を突いて内部から破壊する北斗神拳を、分厚い脂肪によって封じます。この特性によって無敵の強さを誇っていたケンシロウに、最初にダメージを与えたキャラクターです。
このことからも分かるように、外見とは裏腹にシン配下で最強の実力者であり、KINGの素性と南斗聖拳の正体も知っていました。
キャラクターも強烈で、普段はていねいな口調で話し、乱暴な部下をたしなめるなど紳士的です。しかし、血を見ると性格が変わって、部下たちの命を奪ってしまう残酷なところもあります。
最終的には連続の蹴りで脂肪をかき分け、その奥にある秘孔にトドメの一撃を入れる北斗神拳奥義、北斗柔破斬によってケンシロウに敗北。ハートはあの有名な「ひでぶっ」の断末魔をあげて死にました。
ただ、そのキャラクターの濃さ、見た目と強さのギャップから人気が高いです。そして、ケンシロウを追い詰めた実力の持ち主ということもあり、ファンにハート様と呼ばれて愛されています。
◆ピッコロ大魔王より強いミスター・ポポ──『ドラゴンボール』
ミスター・ポポはずんぐりむっくり、いわゆるメタボのような体型ですが、昔から地球の神様の付き人をしている実力者です。
武術の達人であり、実際にピッコロ大魔王に勝った悟空を手玉にとっています。そのため、実力的にはピッコロ大魔王より上なのでしょう。
そして、神様のもと修業していた悟空に武術を教えていたのはミスター・ポポであり、あまり印象はないですが、悟空の師匠の1人といえる人物です。
また、ナメック語を話したり、神龍の模型を作り直して再生させたり、武術以外の能力も優れています。
見た目からすると動きがにぶそうですが、心を空にすることで雷よりも早く動けるほどの素早さの持ち主です。立場上、再戦することがなかったとはいえ、悟空に勝ち逃げした数少ないキャラクターになります。
◆キン肉星ナンバーワンの3枚目キャラ、シシカバ・ブー──『キン肉マン』
シシカバ・ブーはビビンバをめぐる戦いで、キン肉マンを圧倒しています。牛丼の早食い勝負で勝ち、一騎打ちでもキン肉マンを一撃で気絶させました。
しかも、シシカバ・ブーは勝ったにもかかわらず、ビビンバがキン肉マンに好意を寄せていると知ると、いそぎよく身を引くナイスガイ。バーベキュー族の超人でキン肉星ナンバーワンの3枚目キャラという位置づけですが、宇宙超人カーニバルチャンピオンなどのタイトルを獲得したことがある実力者です。
キン肉マンを破った相手としては、プリンス・カメハメやミキサー大帝が有名でしょう。しかし、プリンス・カメハメとの対戦では、キン肉マンは慢心から油断していて出会い頭で負けました。また、ミキサー大帝とは連戦で疲れていたうえ、邪悪五大神が相手に力を貸しています。
それに対して、シシカバ・ブーはキン肉マンに真っ向勝負で勝っています。それなのにシシカバ・ブーの評価が低いのは、キン肉マンがテコ入れされる前の「怪獣退治編」として扱われることが多いからでしょう。また、あくまでビビンバをめぐる戦いは私闘であり、公式戦ではありません。
しかし、この時点のキン肉マンは第20回超人オリンピックに優勝しており、プリンス・カメハメから技も伝授されていました。つまり、すでに格闘技マンガにシフトし始めている頃です。
そして、キン肉マンがコンディション万全のタイマン勝負であり、直後に第21回超人オリンピックにも優勝しています。その実力は間違いなく超人界でもトップであり、そのキン肉マンに勝ったシシカバ・ブーの強さはかなりのものでしょう。
その後の悪魔超人との戦いやタッグトーナメントに出場していたら活躍していたと思いますが、残念ながら出番はありませんでした。シシカバ・ブーが登場していた時期は本格的に格闘技マンガにシフトしつつも、ラブコメ路線も模索していたのかもしれません。
また、シシカバ・ブーの超人強度は、キン肉マンと同じ95万パワーです。3枚目キャラ扱いされる設定も同じで、もともとキン肉マンの原型となった超人ともいわれています。キン肉マンとキャラがかぶっていたのも、その後の出番がなかった原因の一つでしょう。
ただ、シシカバ・ブーは『キン肉マンⅡ世』で、バーベキュー族の代表としてキン肉星の超人評議会に出席しています。自分やキン肉マンとは真逆の戦闘スタイルを持つ、ザ・ニンジャにサインを求めているのは興味深いところです。
◆病人のようなやつれ顔の城戸亜沙斗──『幽☆遊☆白書』
城戸亜沙斗は見た目はやつれた感じで不健康そうな中学生ですが、浦飯幽助に完勝した1人です。魔界の扉が開く影響で能力に目覚めた城戸は、影(シャドー)によって幽助の影を踏んで動きを止め、まったく何もさせませんでした。
城戸は幻海の命令で動いていたため、その後幽助は解放されます。しかし、城戸に影を踏まれると霊力による抵抗、攻撃もまったくできないため、動けない幽助の口と鼻を塞ぐだけ命を奪うことはできました。
もちろん単純な殴り合いであれば、城戸が幽助にかなうはずはありません。また、能力のネタが割れてしまえば、城戸が幽助の影を踏むことはできないでしょう。
しかし、不意をつけば幽助にすら勝てる能力者です。そして、城戸によって領域(テリトリー)を使う者の怖さを知っていなければ、幽助がほかの能力者にやられていた可能性もありました。
条件を満たせば弱くても相手を倒せるという意味では、のちに連載されることになる冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』の操作系を思い起こさせる能力です。
城戸は医者(ドクター)神谷実との戦いで、負傷したうえ能力を使い過ぎたため衰弱します。気の弱い性格もあって、アニメでは幻海の言いつけを守ってその後、能力を使うことはなく、一般人としての生活を送りました。
──見た目が弱そうなのに強いキャラクターは、主人公が快進撃を続けているときに、ひょっこり現れるイメージがあります。強くなった主人公を戒める役を担っていることも多く、もとから出番が少ない想定で登場している場合もあるでしょう。
そのため、人気が出すぎないようにあえて外見が3枚目キャラだったり、メタボだったりするのかもしれません。また、主人公を苦しめるキャラとして、意外性を強調する効果もありそうです。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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