作品において「伏線回収」は読者を大いに盛り上げる重要な要素の一つです。伏線回収が秀逸なほど、「こういうことだったのか!」と読者に驚きと興奮をもたらします。次の3つのアニメも1クールという短さで見事な伏線回収を見せて、視聴者から高く評価されました。

◆最終回で怒濤の伏線回収——『オッドタクシー』

 『オッドタクシー』は最終話で怒濤の伏線回収を見せ、多くの視聴者を驚かせました。

 本作はP.I.C.S.OLM.が共同制作したアニメオリジナル作品です。登場人物が全員動物という愛らしい姿をしていますが、内容はかわいい姿と反して本格ミステリーもの。セイウチの姿をしたタクシー運転手の主人公・小戸川は、とある人を乗車させたことで女子高生行方不明事件の犯人とうわさされ、事件に巻き込まれていくのです。

 そんな本作には1話から多くの伏線が張られていました。たとえば、タクシーのお客から「なんでタクシー運転手になろうと思ったの」と聞かれたときには、なぜか人間のシルエットの回想が映ります。ほかにも、唐突に小戸川が通院する主治医から「俺は何に見える?」と聞かれ、「ゴリラだ」と答えるシーンがありました。

 ほかにもさまざまな伏線が張られ、それらの伏線は最終回で見事に回収されます。女子高生行方不明事件の犯人や、動物の姿で描かれている理由も判明し、怒濤の伏線回収は多くの視聴者を驚かせました。

 しかし、もっとも視聴者を驚愕させたのが不穏なラストです。誰も予想しなかったラストには「ラストがすっごい怖いんだが」「バッドエンドのホラー映画を見た感じ」と声が上がりました。

 そんな衝撃のラストの続きは映画にて描かれています。また、YouTubeで公開されているオーディオドラマには、犯人が所持していたとあるものの正体が描かれていました。

 アニメだけでなく映画、オーディオドラマを見ることでさまざまな謎が解けるので、アニメオーディオドラマ映画の順番で観てみるといいでしょう。

1話から伏線が張られていた——『僕だけがいない街』

 『僕だけがいない街』は中盤で主人公が追っていた事件の犯人が発覚するのですが、実は第1話から伏線が張られていました。

 このアニメは『ヤングエース』で連載されていた同名マンガが原作です。主人公の藤沼悟はタイムリープ能力を持っており、母親が殺害されたことをきっかけに時間をさかのぼります。そして、小学生時代までさかのぼった悟は、過去に起きた連続誘拐殺人事件を阻止しようと動き出すのです。

 本作は中盤で連続誘拐殺人事件の犯人が発覚し、犯人は彼にしか見えていない「蜘蛛の糸」が頭上に張った人を狙うと語っています。しかし、実はこの蜘蛛の糸は第1話から登場していました。

 第1話で悟の母親はとある男と目を合わせたことで誘拐事件を未然に防ぎ、この犯人が連続誘拐殺人事件の犯人と同一人物だと気づきます。そして、かつてテレビ局で働いていたころの同僚に電話してこのことを伝えますが、実はこのとき母親の頭上には蜘蛛の糸が張ってありました。

 このほかにもいくつもの伏線が張られ、犯人が発覚する中盤に伏線が回収されます。さらに最終回では本作のタイトルの意味も回収され、キレイに終わりを迎えました。

 なお、本作は全9巻を1クールでまとめたことや、途中で原作に追いついてしまったことで、一部の内容がカットされたり原作と結末が違ったりします。アニメはストーリーを12話にまとめた良さがありますし、原作は登場人物の背景がしっかり掘り下げられています。それぞれに違った良さがあるので、どちらも見てみるといいでしょう。

◆緻密な構成で1クールにまとめ上げた——『彼方のアストラ』

 『彼方のアストラ』はスケールの大きい話にもかかわらず、伏線を残さず回収して見事に1クールで描ききりました。

 このアニメは『少年ジャンプ+』で連載されていた同名漫画が原作です。宇宙旅行が当たり前になった2063年を舞台に、ケアード高校の9人の学生が学校主催の惑星キャンプに向かいます。

 しかし、到着した惑星で謎の球体に襲われた主人公らは宇宙空間に放り出され、近くを浮遊していた宇宙船に避難しました。船に乗りいくつかの惑星を経由して帰還しようとする主人公たちですが、9人の内の誰かが宇宙船の通信機を意図的に壊したことが発覚します。主人公らは仲間の中に黒幕がいると疑惑を抱えながら、元いた惑星を目指すのです。

 そんな本作には、9人のメンバーや世界にかかわる重大な伏線が張り巡らされていました。

 このように本作はスケールの大きい話でありながら、伏線を見事に回収して、ストーリーもキレイにまとめ上げています。これには視聴者からも「キレイに終わってよかった」「壮大にちりばめた伏線を見事に回収した」と高く評価されました。

 

 ——優れた伏線回収は視聴者に衝撃と感動を与え、「知ったうえでまた見たい」と思わせてくれます。見返すことでまた違った気持ちで作品を楽しめますし、作品を飽きさせない重要な要素といえるでしょう。

〈文/林星来 @seira_hayashi

《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。

 

※サムネイル画像:Amazonより

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