アニメ・漫画では1話だけの登場予定だったキャラクターが、人気が出過ぎて出番が増えていくことがよくあります。以下のキャラクターたちは最初はちょい役ポジションだったのが、その後晴れてヒロインになり作中で活躍しました。

最初は1話限りのゲストキャラだった?──『うる星やつら』ラムちゃん

 今でこそ国民的アニメキャラのラムちゃんですが、『うる星やつら』初期の時点で第1話にしか登場しないキャラの予定でした。

 第1話ではあたるとラムちゃんが地球の運命をかけて鬼ごっこをしており、あたるからプロポーズをされたと勘違いします。そこでラムちゃんの出番は終わる予定でした。

 しかし作者の高橋留美子先生が、第3話の構成を考えていたときにアイデアが出なかったため「苦しまぎれ」ということでラムちゃんを再登場させ、それ以降はメインキャラクターになります。

 こうして第3話になって夫婦が同居するのは当たり前だと言い、彼女はあたるの自宅に押し掛けて来ます。

 高橋先生によれば、『うる星やつら』は当初5話短期連載の予定で、あたるが次々変な人に出会っていくオムニバス形式のストーリーをイメージしていたそうです。 第2話に1コマも出てこないのは、その名残というわけです。

 メインヒロインに据えなければ国民的ヒロインが生まれなかったと思うと、日本のポップカルチャーをも左右する英断だったといえるでしょう。

読者人気で大出世?──『地獄先生ぬ~べ~』ゆきめ

 『地獄先生ぬ~べ~』のヒロインで1番人気と言っても過言ではないゆきめですが、なんとはじめはメインのキャラクターではありませんでした。

 原作の真倉翔先生は『ジャンプ+α』の「地獄先生ぬ~べ~ 30周年記念インタビュー」で「ゆきめをゲストキャラと考え、ヒロインにするつもりはなかった」と語っています。最初の方針が変わった理由としては読者の人気が高かったからとのことで、再登場させたのちメインヒロインとなりました。

 さらにゆきめが律子先生を庇った回では死亡する予定で、作者自身もその回の巻末にて「ゆきめさんの登場はこれで終わり」だと書き記しています。しかし読者の「死なないでほしい」という声を受け、またしても予定より長きにわたって登場することになりました。

 当初、鵺野鳴介(以下、ぬ~べ~)は律子先生に好意を寄せている様子ですが、一途すぎるゆきめに押される形で結婚。

 その後の続編『地獄先生ぬ~べ~NEO』では結婚後のエピソードが描かれており、ゆきめはぬ~べ~の強い霊能力を長年浴び続け不治の病・霊力病にかかり別居してしまいます。

 しかし鬼天帝の強大な妖気が化学反応を起こし、彼女の体を再構築したため霊力病が完治。ついにぬ~べ~を含めた家族全員と暮らす夢が叶います。

 そして別居している間、ぬ~べ~はゆきめの病状を悪化させまいとあえて冷たく接していましたが、本当は誰よりもゆきめを想っていたことも明かされました。

 ゆきめがメインヒロインになったことで、人間と妖怪という異種族間の恋愛がより物語のドラマ性を引き立てているように思います。

 当初の予定のまま律子先生をメインヒロインとしていたら、ここまでドラマティックな恋愛は描くことができなかったといえるのではないでしょうか。

小悪党からヒロインに?──『ドラゴンボール』マイ

 ピラフ一味の1人として登場したマイでしたが、初期にはなんと合計3回しか登場していないにもかかわらず、のちにヒロインといえるキャラになりました。

 そうした立ち位置で登場するのは『ドラゴンボールZ 神と神』や『ドラゴンボール超』で、ドラゴンボールによってピラフ一味が全員若返り、マイも子供の姿で登場します。

 『ドラゴンボールZ 神と神』ではトランクスがマイに一目ぼれするという形で、『ドラゴンボール超』では未来世界のマイも登場。こちらも未来のトランクスと親しい間柄として描かれており、出番の少なかった初期とはうってかわってヒロイン的なポジションになります。

 初期では小学生レベルの下ネタを好む残念な美人でしたが、未来世界の苛酷さからか、そうした面はなくなりました。むしろ初期とくらべて、外見のイメージ通りのキャラクターになったヒロインでしょう。

アニメでは真逆の性格に?──『遊☆戯☆王』野坂ミホ

 原作で本田が片思いしておりセリフも一言二言しかない1話限りのキャラのミホですが、アニメ第1作目で杏子と並ぶメインヒロインに昇格しました。

 原作での彼女は先生の荷物検査で本田からプレゼントされたパズル型のラブレターが見つかったときに、うつむいてしまうほどおしとやかなキャラクターです。

 一方でアニメではどちらかというとおしゃべりかつミーハーで、少し打算的なキャラに変わっており、お金とイケメンが好きという俗っぽい面も強調されています。

 さらに爆弾発言が多く、「獏良君はトイレなんか行かないもん!」というセリフなど視聴者の笑いを誘うようなものもありました。

 アニメでは遊戯たちと一緒に行動していることが多いため「カプセルモンスター」や「モンスターワールド」などのゲームにも参加しており、相手のイカサマを暴くなどの活躍も見せています。

 原作初期はヒロインといえるキャラクターが杏子しかおらず、その杏子も出番が多くはなかったため、ミホのヒロイン化により華が生まれたといえるでしょう。

 

 ──自分の感情に正直・押しが強い・主人公に対して一途……などの特徴を兼ね備えるヒロインは時代を問わず人気が高いです。

 特にラムちゃんやゆきめは、そのような特徴が強いといえるでしょう。またもともとヒロインキャラではありますが、最近では『僕の心のヤバイやつ』の山田杏奈もそうした特徴から人気があります。

 たとえ1話限りの登場の予定だったとしても、いつの間にかストーリーになくてはならない存在になってしまうほどの人を惹きつける魅力が、彼女たちをヒロインに押し上げたといえるでしょう。

〈文/michel 編集/諫山就〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

関連する記事

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.