バトルものの漫画には強気なセリフを言って戦いに挑んだものの、瞬殺されてしまう「かませ犬」なキャラがいますが、次の4人はセリフのインパクトなどからSNSなどでカルト的な人気を誇っています。中には、人気すぎてスピンオフ作品が作られたキャラもいるほどです。
◆主役のスピンオフまで作られた!──『ドラゴンボール』ヤムチャ
何かと負けるシーンの多いヤムチャは「かませ犬」の代名詞的な存在ですが、スピンオフまで作られるほどの人気です。
登場したばかりの頃のヤムチャはなんと、悟空に勝ったことがあります。そのときの悟空はまだ子供でしかも空腹だったとはいえ、のちの悟空の活躍を考えると輝かしい戦績でしょう。
その後、悟空らと亀仙流に入って修行を積み切磋琢磨しますが、それからは天下一武道会やサイバイマン戦で敗北、そして人造人間20号(ドクター・ゲロ)には腹を貫かれる悲惨な光景を見せています。
「きえろ ぶっとばされんうちにな」「ここらでおあそびはいいかげんにしろってとこをみせてやりたい」などの強気なセリフを吐いたあとにやられてしまうことが多く、よく死亡シーンがネタになるサイバイマンとの戦いはもはや「かませ犬」界のレジェンドともいえるでしょう。
戦闘面だけでなく、恋人同士だったブルマは自分と別れたあとベジータと結婚してしまい恋愛面でも負けてしまっています。
『少年ジャンプ+』ではヤムチャが主役の『ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件』というスピンオフが公開されています。
男子高校生が『ドラゴンボール』の世界にヤムチャとして異世界転生するというもので、ヤムチャが死ぬ未来を回避するために地球一強い戦士を目指すというストーリーであり、かませぶりをネタにされながらもヤムチャが活躍する「もしも」の世界を外伝で描かれるのは、愛されている証拠といえるでしょう。
◆専用技まであるのに瞬殺……──『ジョジョの奇妙な冒険』ダイアー
ダイアーは出番が少ないにもかかわらず芸術的ともいえるかませっぷりから、第1部のキャラの中でたびたびネタになります。
ジョナサンはツェペリの恨み晴らすため1対1でディオを倒すと宣言しますが、それを制止してツェペリと20年来の友人であるダイアーが「自分が先に恨みを晴らす権利がある」といい前線に。
早くも優位に立ち「かかったなアホが!」とディオに強気なセリフを吐き「稲妻十字空裂刃(サンダークロススプリットアタック)」という強そうな名前の技を繰り出しますが、返り討ちにあってしまいます。
この必殺技を繰り出す直前にスピードワゴンとストレイツォが「攻守において完璧だ」「これを破った格闘者は一人としていない」などと解説していることもフラグにしか見えず、ネタにされてしまうポイントでしょう。
こうしたことから登場シーンが少ないにもかかわらず、かませキャラとして強いインパクトを残しました。
ダイアーは全身を氷漬けにされて体をバラバラに砕かれるというむごい最期を迎えますが、一方で首だけになり最後の力を振り絞ってディオの左目を潰し致命傷をあたえるという活躍も見せています。
ファンからは「ダイアーさん」と呼ばれ、第1部のキャラクター内ではカルト的な人気を集めています。
◆負けすぎて路上生活?──『機動戦士ガンダム 水星の魔女』グエル・ジェターク
グエルは典型的なかませキャラですが、同時に『水星の魔女』内で最も視聴者から応援されたキャラとなりました。
決闘委員会のエースで御曹司というスペックの高さをほこるグエルですが、最初は主人公らに横暴なふるまいをするも1話の決闘で早速負けてしまいます。
このあとも2度も決闘で負け、告白したスレッタからは振られ、さらには父親に勘当され「かませ犬」街道まっしぐらとなります。
それからは路頭に迷ったのか学園の敷地内でキャンプをしていたり、「ボブ」という偽名で作業員として働き始めたり迷走する様子が目立つように。
そんなグエルですがそれだけでは終わりませんでした。数々の落ちぶれに加え、事故で父親を亡くすなど不幸が重なります。
しかし苦悩しつつもそこから這い上がろうとするさまは放送当時応援する視聴者が絶えず、グエル主人公回ともいえる第15話放送時は「グエルくん」がXでトレンドになるほどでした。
◆断末魔までも愛される?──『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』獣王・クロコダイン
魔王軍六大団長の1人でありながらハドラー以上のパワーを誇るというクロコダインですが、作中のほとんどの戦いで負けてしまっています。
最初こそ強敵の1人としてダイたちの前に立ちはだかりますが、その時の戦いで夜明けの光が目に入った隙をダイにつかれ左目を傷付けられました。
この時点で雲行きが怪しいですが、その後ポップが命をかけてダイを守る様子を見たクロコダインは改心し仲間に加わります。
頼れる仲間が加わった……と思いきや、かつての強敵の貫禄が嘘だったかのようにその後は負け続き。次第に周りの強化にもついていけなくなります。
しかしただやられているだけではなく盾として役割を果たしていることもたびたびあり、バラン戦ではギガブレイク2発などの強力な攻撃を受ける役を買って出ていました。
やられたときに「ぐわあああッ!!」という叫び声をあげることが多く、このやられ文句はSNSでもよくネタになります。
ヤムチャの死亡ポーズにも言えることですが、やられた時の言動がネタになるのはかませ犬キャラの宿命なのかもしれません。
──「かませ犬」になってしまうキャラには戦った相手が悪かった、周囲の急速なインフレについていけないなどの不運が重なってしまっている場合もあります。また、屈強な肉体を持っているのに弱いという見掛け倒しなパターンも。
しかし、それでも愛されるキャラたちは周りより弱くても、活躍がどんどん減っても決してめげることはありません。不憫でありつつも、そうしたひたむきさも兼ね備えているからこそキャラの魅力惹き込まれてしまうのでしょう。
〈文/michel 編集/乙矢礼司〉
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