ラスボス戦など強敵との戦いはどんなに強い主人公でも苦戦を強いられるものですが、中にはラスボスを一撃で倒したり、事態を一発で収拾したりできたかもしれない技や装置が作中に既に登場している場合もあります。
これらの技や装置を使えば、あの魔神ブウやDIOを一発で仕留めることや、全人類の滅亡を避けることもできたかもしれません。
◆アクマイト光線──悟空が使う姿は見たくない
『ドラゴンボール』に登場したアクマイト光線は悪の心を少しでも持っていれば、その心を増幅させて相手の肉体を爆発させるという驚異的な技です。
この技を持つアックマンは初期に登場したため、フリーザやセル、魔神ブウといった強敵たちと戦うことはありませんでしたが、もしアクマイト光線をフリーザや魔神ブウに使っていたら一撃で倒せた可能性があります。
しかし技はともかくアックマンの実力は、悟空と天下一武道会で戦った時点で大きく差があり、ピッコロ大魔王を倒したあとの悟空が再戦を希望した際には、占いババから「今のお前にアイツらが相手になるか」と断られています。
このことからアックマンが直接フリーザやブウと戦っても、アクマイト光線を使う暇もなくやられてしまうかもしれません。
また、当時から多くの人から「アクマイト光線で敵を倒せばいいのでは」という質問が寄せられていたそうで、それに対して鳥山明先生は、「たぶん相手に当たらないし、もうそんなレベルの闘いじゃないんだと思います」という回答しています。
ですが、悟空がヤードラット星人などから瞬間移動を教わったように、アックマンからアクマイト光線を教わっていたら状況は変わっていたかもれません。ただし、主人公がチートのような技を使って敵に勝利する姿は卑怯で見たくないというのが読者の本音でしょう。
また、アクマイト光線をどのように強敵に当てるかという頭脳戦に近い展開も考えられますが、これも『ドラゴンボール』の修行して強敵に打ち勝つというスタンスにあわず、読者から批判が出たかもしれません。
◆紫外線照射装置──SPW財団の手配不足!?
『ジョジョの奇妙な冒険』第2部に登場したシュトロハイムが使用していた紫外線照射装置。カーズたちとの最終決戦ではドイツ軍とSPW財団の共同開発により小型化したものが使われていました。
これを3部でDIOの屋敷に乗り込む際に使っていれば、花京院の犠牲も出さずにDIOを一発で倒せたかもしれません。
DIOを倒せないまでも、ヴァニラ・アイスやヌケサクなど吸血鬼化した部下もいたので、有効に使えた可能性はあります。DIOにたどり着くまでもアヴドゥルやイギーといった頼りになる仲間を多く失っているので、小型化したものを1台でも持ち込むことができなかったのか悔やまれます。
DIOは周到なので大掛かりな準備をしていることが悟られると、潜伏先を変えた可能性もあるので実行できなかった事情があるのかもしれません。
◆死神の目──ポリシーが仇になる
『DEATH NOTE』の夜神月はデスノートのあらゆる機能を駆使していましたが、死神の目の取り引きだけは最後までしませんでした。
Lとお互いの正体を探り合う中で月はLと直接対面する機会を得ていたので、この時点で死神の目を持っていれば、Lを苦労せず倒せたはずです。
月は新世界の神として統治し続けることが目的だったので、死神の目の取り引きによって寿命が半分になることを嫌い、取り引きはしませんでした。
最終話で月はリュークによってノートに名前を書かれて落命しますが、死神がノートに名前を書いたことによって命を落とす場合は、その日が寿命として定められていたわけではありません。
むしろ死神の目の契約をしていたほうが、30代も40代も生存していた可能性があるので、結果論ですが月は長生きすることにこだわり過ぎたからこそ、ニアに追いつめられ倉庫で命を落とすことになったといえます。
◆クズラウ式翻訳機──文明の衝突を避けられたかも?
『伝説巨神イデオン』のクズラウ式翻訳機は耳栓型の何の変哲もない翻訳機ですが、双方が十分に対話をし誤解を解く努力ができていれば星間戦争なんて恐ろしい事態は避けられたはずです。
ただこのクズラウ式翻訳機も完璧なものではなく、親切にしてくれた人に対して「いい人」と言ったつもりが「いい男」と伝わっているなど頼りないところがあり、そう考えると『ドラえもん』のほんやくこんにゃくのほうが優秀だと分かります。
地球人とバッフ・クランの戦争は、誤解に端を発して戦禍が広がり、怨恨も増えて引くに引けなくなり、地球人が第6文明人の遺跡から発掘した無限のエネルギー、イデの発動によって両文明とも滅亡してしまいます。
イデはコスモとともにソロシップに乗船していたパイパー・ルウという赤ん坊と呼応するようにその力を開放して、コスモたちの窮地を救うことが多々ありました。
そしてバッフ・クラン人でありながら地球人との間の子をカララが妊娠して、イデの関心は胎児に移ります。会話によるコミュニケーションを獲得する前の段階にある生命によりそいながら、その子たちが生まれ育っていく世界を大人たちがどう形作っているのか判断していたのかもしれません。
〈文/雨琴 編集/乙矢礼司〉
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