少年誌では師匠ポジションのキャラがスケベで、とんでもないセクハラを連発しているのが当たり前でした。しかし、そんな達人たちも時代の流れ、コンプラには逆らえず、アニメ化するにあたってマイルドなスケベキャラに変わって来ています。

 次の4人は強さとスケベさをあわせ持つキャラクターたちです。果たして、再アニメ化が発表された『らんま1/2』の八宝斎はどのようなキャラになるのでしょうか。

◆悟空の師匠で武術の達人・亀仙人──『ドラゴンボール』

 亀仙人はスケベ師匠の代表的な存在でブルマに胸をつんつんさせて欲しい、パンチーを見せて欲しいとセクハラし放題でした。アニメがスタートした時期が1986年だったため、このようなシーンも原作のまま放送されていました。

 亀仙人はいかがわしい本やビデオを観るのが大好きで、あのウーロンにも「おれよりスケベだぜ……」と呆れられるほど。ランチに「亀仙流の道着」と称していかがわしい服をを着せたり、アニメでは成長後のチチや18号にもセクハラしたりするなど、もはやスケベに命をかけているといってよいでしょう。

 そんな亀仙人のセクハラは、2015年から2018年に放送された『ドラゴンボール超』でも健在です。第89話では天津飯の道場に入門を希望してきたユーリンに対して、名誉師範という立場を利用してミニスカートをはかせたり、お尻から邪心があふれていると言って触ろうと追いかけまわしたりしていました。

 さすがにもはや直接的なセクハラ描写が許される時代ではないと判断されたのか、亀仙人が実際にお尻を触っているシーンはありませんでした。しかし、ユーリンは体をベタベタ触られたと証言しています。

 そして、BPOに「20175月に視聴者から寄せられた意見」として紹介されている「性的表現に関する意見」(https://www.bpo.gr.jp/?p=9121&meta_key=2017)が、この『ドラゴンボール超』第89話の亀仙人のことをさしているのではないかと話題となりました。

 アニメの放送に影響はありませんでしたが、人気作品ほど注目度が高いので放送中止といった事態を避けるためにも、より一層コンプライアンスには気を配っていく必要があるでしょう。

◆ポップの師匠で魔法の達人・マトリフ──『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-

 マトリフはマァムの胸やお尻を触るなどセクハラじじい師匠であり、1991年版のアニメではこのようなシーンも放送されていました。しかし、2020年に放送された再アニメではセクハラシーンがマイルドになっており、マァムの胸を揉むシーンは揉もうとして殴られて未遂に終わっています。

 ネットでは大魔導士もコンプラには勝てないと話題になりましたが、2020年版アニメの放送時間が朝930分だったため当然の対応だったといえるでしょう。

 マトリフのセクハラは番組存続の危機につながる可能性もあるため、最後まで無事に観たいファンからはこのまま彼には自重しておいて欲しいという声も多かったです。

 しかし、これによってマトリフのキャライメージが少し変わります。以前のマトリフはポップから「横暴が服着て歩いてるような人」と評価されており、マァムには「いつもならなるべく会いたくない人」と溜め息を吐かれていました。さらに、旧知の仲であるカノンからは「傲慢で自分勝手で女となると見境がない」と散々の言われようです。

 そこからセクハラキャラのイメージがマイルドになったことで、2020年版アニメのマトリフは理不尽な厳しさはあるものの貫禄のある師匠というイメージが強くなっています。

 堅苦しいことが嫌いな本人としては不本意かもしれませんが、周りのキャラクターからすれば大歓迎のイメチェンだったでしょう。

◆未来が見えるエリートボーダー隊員・迅悠一──『ワールドトリガー』

 迅悠一には女性のお尻が好きという設定があり、実際に原作では背後から近づいてセクハラするシーンがありました。

 2014年から放送されたアニメではカットされており、原作でも同時期あたりから迅のセクハラ設定はなかったかのようにされています。

 迅のお尻好きのターゲットになったことがあるのは、荷物で両手がふさがっている沢村響子や自販機で飲み物を買っている熊谷友子です。それぞれローキックや顔面パンチといった制裁を受け、お詫びとして荷物を持ってあげたり有用な情報を教えてあげたりしていますが、沢村に「セクハラは犯罪」と言われたように許されるものではありません。

 迅には未来予知のサイドエフェクトがあるため、問題にならない相手を選んでいたのかもしれません。しかし、相手が嫌がっている以上は立派はセクハラです。

 迅はほかの隊員と同世代ですが、未来予知のサイドエフェクトによって幹部からも頼りにされています。そして、所属やチーム関係なしにボーダー隊員に的確なアドバイスをして成長の手助けをしており、皆を導く師匠キャラといってもよいでしょう。そんな彼にセクハラ設定があるとむしろ株が下がることになります。

 そのため、今後もこのセクハラ設定が復活することはなさそうです。迅からセクハラ設定がなくなってもイメージが変わることはないですし、ファンにとってもプラスしかないキャラ変更といえるでしょう。

◆乱馬の師匠で元祖無差別格闘流の師範・八宝斎──『らんま1/2

 八宝斎は亀仙人やマトリフとは比べ物にならないほど女性へのお触りに積極的で、セクハラの権化ともいえるスケベキャラクターです。

 セクハラ常習犯というだけでなく下着ドロやノゾキ、食い逃げや窃盗といった犯罪行為も当たり前で、周りに迷惑をかける問題爺となっています。

 1989年から放送されたアニメでも八宝斎のセクハラは猛威を振るっていました。そもそも『らんま1/2』は、原作でもアニメでも女性キャラの胸があらわに描かれています。

 1981年版のアニメ『うる星やつら』にも、同じように胸がモロに描かれているシーンがありました。しかし、深夜帯に放送された再アニメではそのようなシーンはなかったため、『らんま1/2』もその点は確実に規制対象となるでしょう。

 作中ではもはや人間ではなく妖怪扱いの八宝斎ですが、だからといってコンプラの規制対象から逃れることはできないでしょう。

 また、10月5日から放送が始まる新作アニメの主要キャラクターは前作からの続投が発表されましたが、八宝斎は『サザエさん』で磯野波平の声を長く務めていた永井一郎さんでしたから、声優が変更されるのは確実です。あのスケベ爺の声を誰がやるのか、どう演じるかによっても再アニメの八宝斎のイメージに大きな影響を与えるでしょう。

 

 ──『HUNTER×HUNTER』のネテロ会長はメンチを見て「チチ、でけーな」とは考えていましたが、作中でセクハラ行為はしていませんでした。それでも十分強くかっこいい、魅力あるキャラクターに描かれています。

 これからは時代の流れに応じて、セクハラのない魅力ある達人キャラが当たり前となっていきそうです。タレントと同じように生き残っていくためには、アニメキャラも時代に合わせて変わっていく必要があるということでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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