今、ミュージックビデオとアニメーションの組み合わせが熱い──!
誰もが知るようなヒットアーティストがアニメーションを用いたミュージックビデオを作ったり、むしろアニメーションを使ったミュージックビデオをきっかけにさらに人気を獲得していく人たちも出てきています。
中でも特に顕著な例として、大きく分けて2つのアニメーションミュージックビデオの流れを紹介します。
◆本人出演しない例の方が主流に? 近年のヒットソングのミュージックビデオ
YOASOBI、ヨルシカ、Ado、ずっと真夜中でいいのに。……いずれも近年多くのタイアップ主題歌を歌ってきたヒットメイカーばかりですが、これらのアーティストには共通点があります。それは自身のミュージックビデオの多くに自身が登場せず、アニメーションを用いることが多いという点です。
少し前は新型コロナウイルス感染症の流行によって、対面での実写のミュージックビデオ撮影が困難なことなども輪をかけて分業のしやすいアニメーションのミュージックビデオが増えてきたと思っていたのですが、そんなソーシャルディスタンスの流れが緩和されて以降もやはり、前述のアーティストたちを中心に登場するのはアニメーション映像でした。
さらに近年ではTVアニメとのタイアップも多いのもその流れに拍車をかけています。
たとえば、YOASOBIの「勇者」のようにオフィシャルのビデオにそのままアニメーション映像が使われたり、SEKAI NO OWARI の「最高到達点」のようにわざわざアニメーションを用いたバージョンのミュージックビデオを作る例も出てきました。
かつてはミュージックビデオよりもプロモーションビデオの呼称の方が一般的で、店頭や音楽チャンネルなどの限定的な範囲でしかミュージックビデオは観られませんでした。しかし、インターネットの普及や動画サイトの普及が状況を変えていき、誰もがミュージックビデオを気軽に楽しめるようになってきたわけです。
その結果、誰が歌っているかやどう音楽を作り出しているかなどよりも、映像としてのインパクトやタイアップ力、映像自体にカタルシスがあるかといったことが重視され、アニメーションが重宝されているのかもしれません。
直近のヒットで顕著なのは、こっちのけんとさんの「はいよろこんで」。かねひさ和哉さんが手がけたレトロな雰囲気の映像は、公開から2ヵ月で既に5000万回再生を超え、TikTokを中心に派生動画などが作られたりとヒットソングとなっています。往年のニコニコ動画を思わせる二次創作文化を思い出す流れですが、そういった広がらせ方をしやすいという点でも“アニメーション”は強い武器なのかもしれません。
◆アニメーションとの親和性は抜群? Vtuberのミュージックビデオ
前述の流れとはまた別で熱いのがVtuberが発表するアニメーションミュージックビデオです。
Vtuberといえば2Dや3Dアニメーションのアバターを用いて配信をしている人たちのことを言いますが、そもそも実写ではないという点からもアニメーション化との相性は抜群。新たなファンの獲得の手立てであったり、そのVtuberのイメージの訴求の手段としてだったりで近年多くのアニメーションが制作されています。
中でも顕著なのがホロライブプロダクション。Vtuberのキャラクターにあった楽曲に加えて、高品質な映像を制作して多くの再生数を獲得する動画が日夜発表されています。
これらのミュージックビデオは、Vtuberに馴染みがないという人もそのVtuberに触れやすいうえ、どんなキャラクターなのかも浸透させやすかったりするという点でも相性が良いです。
しかも、前述のアーティストたちのミュージックビデオ同様、これらの映像作品があること自体がTikTokなどでの派生もさせやすかったりと良いこと尽くし。
動画文化も配信文化もどんどん拡大している現在、Vtuber発のアニメーションミュージックビデオは今度も増え続けていくでしょう。
すっかりメジャー側になってきたアニメーションとミュージックビデオの組み合わせが果たして、今後どんな変化を見せていくのか。新たな時代を迎えているのは確かです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『Ayase / YOASOBI』より