国民的アニメの登場人物にもかかわらず、子供がマネしては困る振る舞いをドラえもんやカレーパンマンといった人気キャラクターがしてしまっていることがあります。その中には、もはや放送事故レベルともいえる問題行動も──。

◆作画ミスでゾロが増殖──『ONE PIECE

 アニメ第226話「最も無敵に近い奴?と最も危険な男!」では、作画ミスによってゾロが2人登場しているシーンがあります。一瞬のことだったので自分の目を疑った視聴者も多く、まさかの出来事に「ゾロが2人いたの見間違い?」と疑心暗鬼の声が挙がっていました。

 この事件が起こったのは、海賊団フォクシーの船でした。落とし穴に落とされたルフィたちは壁を壊して脱出しますが、そこには変装したフォクシーの姿。ルフィの隙をねらってフォクシーが剣で斬りつけようとしますが、それをゾロが自らの刀で受け止めます。

 問題のシーンは、引きの映像になったときでした。フォクシーの剣を受け止めるサンジ、その傍にいるルフィ、そしてこの2人から少し離れた後方にナミ、サンジ、ウソップとともに2人目のゾロの姿が。

 確かに一瞬なので自分の目がおかしくなってしまったのではないかと疑ってしまいますが、青い目立つ髪に腹巻をしている姿は、まぎれもないゾロです。原作ファンにとっては作画ミスとすぐ判断できるかもしれませんが、アニメ派のファンからするとゾロが分身の術を覚えたのか、もしくはこの後のストーリーの伏線なのかと思ってしまうでしょう。

 どうしてこのような事態になったのかは不明ですが、ゾロの増殖に思わず笑ってしまった視聴者も多かった模様。この後、無事に1人に戻っていましたが、ゾロがぞろぞろ出て来てしまったらルフィたち麦わらの一味が強くなりすぎてしまいそうです。

◆謎過ぎるとネットで激アツ! 実写メンチカツ──『あたしンち』

 アニメ第569話「母、ちょっとさみしい」の冒頭で母が夕食のおかずとして差し出したのは、なんと実写のメンチカツ。ご飯やみそ汁、付け合わせの線キャベツやトマトなどほかはすべてアニメーションなのに、メンチカツだけいきなりの実写登場に謎過ぎるとネットで話題になりました。

 料理の作画が難しい、手間がかかるという理由も考えられますが、次の引きの映像ではメンチカツもしっかりアニメーションで描かれています。開始早々の実写登場というインパクトも手伝って、「なんでメンチカツだけ実写なんだ?」と謎に思う視聴者は多かったです。また、絶妙な揚げ色だったこともあり、おいしそうという感想も多く見られました。

『あたしンち』では、これまでにもたびたび実写映像が登場しています。第174話「母、罪悪感っ」では、母が水島さんと買い物に行ったときにスーパーに貼ってあったチラシが実写でした。イチゴやお肉、野菜などの食材に加えて、お総菜コーナーにはジャンボフランクバイキング(1100円)、チキンスナックバイキング(160円)もあって、実写だけにチラシの内容もリアリティがすごいです。

 また、アニメ第202話「母、見せたくないっ」では、ユズヒコが読んでいた握り寿司の写真集が実写でした。大トロや中トロをはじめ、コハダやサバ、イカなどの握り寿司すべてが実写で登場しています。

 スーパーのチラシや握り寿司はストーリーに絡む重要なアイテムだったので、しっかり描く必要がありました。食材や寿司の種類や数も多かったので、アニメで描くのは大変だったからではないかと推測されます。

 しかし、メンチカツは特にストーリーに絡みません。しかもアップだけ実写だったのは謎過ぎると、ファンの印象に強く残っているシーンとなっています。

◆ロボットだから注意テロップなんて気にしない──『ドラえもん』

『ドラえもん』のような子供向け番組では、「テレビを見る時は、部屋を明るくしてはなれて見てください」というテロップが表示されることが当たり前になっています。しかし、タイミングが悪いことに、ドラえもんが至近距離でテレビを観ているシーンでこのテロップが出てしまったことがありました。

「テレビを見る時は、部屋を明るくしてはなれて見てください」のテロップが出るようになったのは、1997年に発生した「ポケモンショック」がきっかけです。これ以降、テロップが出たり、アニメのキャラクターがこのセリフを言ったりすることで子供たちに注意喚起するようになりました。

 とはいえ、このような事情に合わせて、のび太の家の構造や居間の広さが変わるわけではありません。アニメでは画角やキャラクターの配置の関係で、間近でテレビを観てしまっているシーンもいまだに多いです。

 また、何の番組を観ているのか、登場人物が熱意を持って映像を観ていることを視聴者に伝えるためには、キャラクターがテレビの真ん前に集まって視聴したほうが分かりやすいという事情もあるでしょう。

 ただ、時代の流れに合わせて、『ドラえもん』のアニメにも薄型テレビが登場しています。そのため、広いリビングでテレビから離れたソファに座ったドラえもんが、優雅にテレビ番組を観ているシーンが放送される未来もやってくるかもしれません。

◆子供がマネしたらアウトのカレーパンマンのカレー作り──『アンパンマン』

 アニメの第3話「アンパンマンとカレーパンマン」でカレーパンマンが初登場しますが、このときのカレーの作り方が完全にアウトでした。鍋で材料を炒めた後、カレーパンマンはなんと口からカレーを注いで完成させます。

 このほかにもカバオくんたちと一緒にカレーを作ったときも同じ作り方をしていますから、これがカレーパンマンのカレー作りの王道なのでしょう。いくら中に詰まっているのがカレーであり、アンパンマンのように顔を食べるのがOKだとしても、口から出すのは放送事故レベルといっても過言ではありません。

 そもそもカレーパンマンの得意技には口から出した激辛カレーを浴びせる、カレー攻撃というものがあります。つまり、中に入っているのは激辛カレーのはずなので、カバオくんたちに振る舞うには刺激が強すぎです。

 水の量で辛さを調整しているのか、それともカレー作りをするときはジャムおじさんに適度な辛さのカレーを中に入れてもらっているのでしょうか。いずれにせよ、このエグいカレー作りはさすがに観ていて気持ちがいいものではないです。

 そのため、現在はコンプライアンス的に鍋をかき混ぜるだけの描写になっている模様。しかし、裏では今もカレーパンマンが自らの身ならぬ、中身を削ってカレーを作っているのかもしれません。

 

 ──国民的アニメともなれば放送回数が多いだけに、作画のトラブルなどが生まれてしまうのは仕方ないのかもしれません。また、放送期間が長いだけに、キャラクターの行動が時代にそぐわないケースが出ることもあり、コンプライアンスに合わせて変わっていくことも大切なのでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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