書籍『漫画がはじまる』(出版社:スイッチパブリッシング、20085月出版)で『SLAM DUNK』の作者・井上雄彦先生が「そもそも三井はバスケをやる予定ではなかった」と語ったように、漫画やアニメには“想定外”がつきもの。中には、キャラクターのあまりの人気ぶりに、その後の展開を変えざるを得なかったケースも……。次の4人のキャラクターも、作者の想像を大きく超えた飛躍をみせました。

◆当初は死ぬ予定だった『ドラゴンボール』の人気キャラ

『ドラゴンボール』で予想外の活躍を見せたのは、ベジータです。

 彼は当初の予定では、早くに死ぬ構想だったそう……。『30th Anniversary ドラゴンボール超史集 ―SUPER HISTORY BOOK―』(出版社:集英社、20161月出版)に掲載された描き下ろし漫画では、その驚くべき秘話が明かされました。

 登場したのは、鳥山明先生、悟空、ベジータ、フリーザ。漫画の中では、鳥山先生が「おまえなんて悟空にやられて死ぬはずだったのに生かしてやったんだぞ!」と言うと、ベジータが「ほうそれはこのオレが予想外に人気だったので読者が怖くて殺せなくなったと聞いたけどな」と反撃する姿が描かれています。

 また、そんなベジータの代わりにやられ役として誕生したのがフリーザだったそう。鳥山先生はベジータの想定を超えた人気に対し、「だってそんな変なヘアスタイルのヤツが人気になるって思わないじゃん」とコメント。息の合った掛け合いをみせながら、ベジータの生死が読者人気によって左右されたことが語られました。

 ちなみにベジータは、第1回キャラクター人気投票(『週刊少年ジャンプ』199312号)で第4位を獲得。続いて10周年&連載500回記念に行われた人気投票(『週刊少年ジャンプ』199556号)では第2位に輝くなど、ランキングでも不動の人気キャラとしての実力を見せつけました。

◆人気すぎてゲストキャラからヒロインに?

『地獄先生ぬ~べ~』のキャラクターである雪女のゆきめ。始めの頃は序盤から登場していた童守小のマドンナ・高橋律子がヒロインの筆頭格と思われていましたが、物語が進むにつれ、ゆきめが徐々にヒロインの頭角を現していきます。

 ゆきめに関する事実は、『ジャンプ+α』(『少年ジャンプ+』オリジナルコミックエッセイ・ブログ記事)に掲載された「地獄先生ぬ~べ~30周年記念インタビュー」で明かされました。原作担当の真倉翔先生の話によると、男女ともに人気があったゆきめは実は当初ただのゲストキャラのつもりだったそう。

 しかし、原作コミック第30話「なごり雪-季節はずれの雪女の巻」で描かれて以降、ゆきめの人気は上昇。すぐに再登場を果たすことになりました。真倉先生的にはゆきめをヒロインにするつもりはさらさらなかったそうですが、最終的には主人公のぬ〜べ〜と結婚するほどの立派なヒロインに……

 そんなゆきめの人気は、アニメでも変わらない様子。Blu-ray BOX発売記念で行われたエピソード総選挙では、ゆきめの初登場回「スクープ! ぬ~べ~が雪女と婚約!?」が第1位に。読者の応援により、ゆきめの運命は大きく変わったのでした。

◆「なぜ人気に……」作者もびっくりの『NARUTO -ナルト-』の超人気キャラ

 うずまきナルトら第七班の担当上忍として登場するはたけカカシ。読者人気が高いキャラクターとしても知られるカカシですが、その人気は作者の岸本斉史先生にとっていまいち納得できないものだったようです。

 カカシについて語られたのは、漫画専門番組『漫道コバヤシ』第13回「NARUTO完結!岸本斉史SP」でのこと。「カカシの人気にはなんとなく予感があったのか」という質問に対し、岸本先生は「全然なかった。こんなやつが何で人気出るのか全然わからなかったです」と回答。

 さらに、「何で片目しか見えてないのに人気あるんだろうと思って」と続け、カカシの人気が想定外だったことを明かしました。逆に、サイや春野サクラは人気が出ると思って描いていたところ、あまりうけなかったそう……

 ちなみにカカシは、第1回(コミックス第7巻掲載)、第3回(『週刊少年ジャンプ』20035号掲載)のキャラクター人気投票で第1位を獲得。また、アニメ20周年を記念した人気投票「NARUTOP99」では、全488キャラクターのなかから第5位に(『NARUTO OFFICIAL SITE』)。岸本先生の思惑に反して、カカシは絶大な人気を誇るキャラクターとなりました。

◆脇役のつもりがライバルに!

『はじめの一歩』に登場する主人公・幕之内一歩の最大のライバル・宮田一郎。一歩が鷹村守に連れられ鴨川ボクシングジムを訪れた際、スパーリング相手としてあてがわれたのが宮田でした。

 作者の森川ジョージ先生によると、連載当初、宮田は一歩と練習試合を行うだけの脇役で終わる予定だったとか……

 その詳細は、『漫道コバヤシ』第60回 「祝!『はじめの一歩』30周年!森川ジョージSP 1983-1995 前編」で明かされました。「宮田が生涯のライバルと最初から決めていた?」の質問に対し、森川先生は「決めていなかった」とのこと。

 そもそも『はじめの一歩』は、スタッフに10週だけお付き合いくださいと挨拶されて始まった漫画だったそう。そのため宮田もただのジムメイトか、そのままいなくなるキャラだと考えていたようです。

 また、人気アンケートでV字回復をした要因には宮田の人気がありました。これに気づいたとき、宮田を徹底的に描くことを決めたそう。

 宮田の想定外の人気に森川先生は、「漫画って本当にわからない」とコメント。脇役のまま終わると予想されていた宮田が、ライバルになり、作品の人気を支えていた……そんな貴重な裏話が語られました。

〈文/繭田まゆこ〉

 

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