漫画やアニメのキャラクターの中には、初登場からずっとあだ名で呼ばれていたり、名前を偽っていたことで本名が知られていない意外なキャラクターがいます。
また、本名と思われていた名前が「まさかの勘違いだった!?」というものまで……。
◆花京院の本名は“ノリアキ”じゃない!?──『ジョジョの奇妙な冒険』
『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」に登場し、承太郎たちと行動を共にする花京院。彼の名前といえば「花京院 典明(かきょういん のりあき)」ですが、実は「てんめい」が真の名前の読みだということは、あまり知られていません。
というのも、現在では公式な読みも「のりあき」となっており、結論からいえば「のりあき」が正しいためです。
ところが、原作者である荒木飛呂彦先生は「てんめい」として描いたつもりだったそうで、原作でも花京院たち一行がエンヤ婆のホテルに宿泊した時に書いたサインには、はっきりと「Tenmei Kakyoin」と書かれていました。
『ジョジョニウム』12巻後書きによれば、作者自身は花京院の名前を「てんめい」と名付けたつもりでしたが、当時の集英社・担当の方が勘違いして訓読みで連載を進めてしまったことで「のりあき」となり、これを知った荒木先生は「あだ名のようなもの」として受け入れたそうです。
しかし『ジョジョニウム』公式サイトの誕生秘話では「本当の名前は“花京院典明”です 公式では“のりあき”となっていますが、僕の中ではずっと“てんめい”なんです。実は、エンヤ婆が待つホテルの宿帳にもサインを残していますからね(JoJoniun11巻参照)」と、あくまで本名は「てんめい」であり、「のりあき」ではないという本音が綴られています。
花京院典明というキャラは、荒木先生によって「てんめい」として生まれ、担当の勘違いによって「のりあき」として生き、そのまま生涯を終えた、まさに「奇妙な」運命をたどったキャラだったといえます。
◆人造人間17号と18号のホントの名前は?──『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール』で敵役として登場し、悟空たちを苦しめた人造人間17号、18号の双子は、本編では一貫して「17号、18号」と型番で呼ばれていましたが、実は原作終了後に本名が明かされました。
2014年5月に出版された『ドラゴンボール フルカラー 人造人間・セル編6』の鳥山明「DRAGON BALL 龍球問答 鳥山明先生がお答え!!」にて、17号は「ラピス」、18号は「ラズリ」であることが明かされました。
2人合わせると「ラピスラズリ」となりますが、これは青色の美しい宝石の名称で、日本では「瑠璃(るり)」と呼ばれ、仏教の七宝の一つとされています。元は人間の双子の兄弟であった17号、18号を、まるで宝石のようだという想いから名付けた親の心境が窺えます。
ちなみに、「人造人間編」で登場したミスター・サタンも、連載終了後に本名が明かされました。
『マンガ「DRAGON BALL」の真実〜トリヤマはこう考えていたよスペシャル〜part2』によれば、本名は「マーク」で、原作者の鳥山明先生曰く、由来は「悪魔」をもじったものであることも明かされ、本名も娘であるビーデルとの関連性があることも分かりました。
ミスター・サタンとはただのリングネームで、本名は「マーク」のみ。これはサタンの住む地域は苗字と名前に分かれていないという設定によるものだそうです。
◆ポニョはあだ名で本名は……──『崖の上のポニョ』
スタジオジブリの作品の中でも、とりわけかわいい世界観でチビッ子たちに人気の作品『崖の上のポニョ』ですが、主人公のポニョには実は何とも見た目の印象からは想像もつかない本名があります。
映画『崖の上のポニョ』公式サイトによれば、ポニョの本名は「ブリュンヒルデ」。これは北欧神話に登場する人物の名前で、戦死した兵士をバルハラへ連れて行き戦士化すると言われているワルキューレの1人とされています。
何とも神々しい名前ですが、ポニョの母親が「海なる母」と言われる神であることを考えると、作中でのポニョがまだ幼く好奇心旺盛な時期であるだけで、実はふさわしい名前なのかもしれません。
また、作品に深いメッセージ性を持たせる宮崎監督ならではの、人間のエゴと自然破壊に対する風刺と警鐘の意味が込められているのかもしれません。
◆のちに判明した「L」の本名──『DEATH NOTE』
名前をノートに書いた者は死ぬ──。そんな名前が重要なカギを握る『DEATH NOTE』において、主人公である夜神月と壮絶な頭脳戦の末、死神の目の契約を交わしたミサミサによって本名を知られ命を落としたLですが、彼の本名は作中で明かされませんでした。
しかし、連載終了後に出版された『DEATHNOTE HOW TO READ 13』で、本名は「エル=ローライト(L Lawliet)」であることが分かりました。
あれだけ用心深かったLが、実は本名の一部であった「L」と名乗っていたことや、奇しくもライバルであり自分の命を奪うことになった夜神月と、本名の一部が同じであったことにファンは衝撃を受けました。
ちなみに、「エル=ローライト(L Lawliet)」という名前は、戸籍上の姓名かは不明であり、彼の出身地はイギリスであるものの、親など家族や出自についての情報は一切明かされませんでした。
原作者の大場先生曰く、コミックス13巻で「日本人が1/4、イギリス人が1/4、ロシア人が1/4、フランス人かイタリア人が1/4というイメージ」と、その出自には多くの謎が残ったままとなっています。
──「名は体を表す」という言葉がありますが、作中での呼び名がキャラのイメージに馴染んでいる一方、知られざる本名も、時を経るごとにそのキャラの名前として馴染んでくるのも不思議なものです。
もしかすると、原作で明かされなかったキャラの本名こそ、原作者がもっとも苦心して名付けた名前なのかもしれません。
〈文/lite4s〉
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