アニメを観て好きになったキャラが、原作にはまったく登場していなかった……。そんな大きな衝撃を与えるアニメオリジナルキャラクターは、『サザエさん』や『忍たま乱太郎』など多くの作品に存在しています。原作から入った視聴者には賛否両論を巻き起こす要因ですが、中には予想外の支持を得たり、アニメから原作へ逆輸入を果たしたりしたケースも。
次の4作品の登場人物たちも、実はアニメから誕生したオリジナルキャラクターでした。
◆モブから出世した『名探偵コナン』のレギュラーキャラ
『名探偵コナン』に登場する警視庁捜査一課強行犯三係の刑事・高木渉。今や『コナン』に欠かせないレギュラーキャラとして活躍する高木刑事ですが、彼は意外にもアニメオリジナルキャラクターでした。
高木刑事のプロトタイプが初めて登場したのは、アニメ第21話「TVドラマロケ殺人事件」(1996年6月)。当時は「高木」の名前もなく、完全なるモブキャラとしての出演でした。
役名が付いたのは、アニメ第66話「暗闇の道殺人事件」(1997年7月)から。この経緯については、高木刑事役の声優・高木渉さんが劇場版第25作『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の完成披露宴舞台挨拶で明かしています。
高木さんはもともと少年探偵団・小嶋元太の声優を担当しており、元太の出演がない時に兼ね役として“警官A”を振られたとのこと。両方の役で呼ばれたいと思った高木さんは、警官Aのセリフにアドリブで「高木です」と名乗っていたそう。その結果、そのまま「高木渉」の名が採用され、定着することに。
さらにコミック第18巻「同じはずなのに…」では原作へ逆輸入され、高木刑事はモブから異例の大出世を果たすことになりました。
ちなみに、高木刑事以外にも捜査一課刑事・白鳥任三郎や同じく捜査一課の千葉刑事、妃英理の秘書・栗山緑などがオリジナルキャラとして登場しています。
◆原作には登場しない「こち亀」の婦警コンビ
アニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の名物婦警コンビといえば、小野小町と清正奈緒子。両津勘吉と対立する立ち位置の二人は、メインエピソードが作られるほどの存在感を放っています。しかし、彼女たちはアニメ第1話から登場するものの、原作には一切描かれていません。
原作では、コミックス第85巻「ザリガニ合戦!?の巻」で初登場を飾った婦警・早乙女リカが両津の天敵として描かれています。彼女は警察官であるにもかかわらずプリクラ機を無断で持ち出すなど傍若無人な振る舞いが多く、時には両津よりたちが悪いことも……。
リカはアニメ放送前から存在していたものの、初めて映像化されたのは第68話「対決!美女一本釣り」(1998年1月)。そのため小町・奈緒子のコンビは、リカのポジションを担うために新たに生まれたキャラクターだったのではないかと読者の間では考察されています。
なお、原作には小野小町と同姓同名の婦警の存在が(コミックス第29巻「洋子の春!の巻」)。しかし、表記は同じものの読みは「おののこまち」、元女子プロレスラーで容姿もまったく違うため、アニメの小町とは別キャラクターとなっています。
◆『らんま1/2』の双子はアニメオリジナルキャラ
アニメ『らんま1/2 熱闘編』に登場する双子・桃色髪のリンリンと青髪のランラン。シャンプーを“姉御”と慕う印象的な役どころですが、実は彼女たちは原作に描かれていないアニメ由来のキャラクターだったのです。
とはいえ、原作には二人によく似たキャラクターが存在します。それは、お団子ヘアの玭珂(ピンク)と琳珂(リンク)です。しかし、リンリン&ランランと同じく双子ではあるものの、キャラクター的にはまったくの別人。シャンプーを慕うどころか過去の因縁から恨んでおり、役回り的にも違いがあります。
また、リンリンとランランのアニメ初登場回は1990年8月に放送された第58話「暴れん坊娘 リンリンランラン」、ピンクとリンクの原作初登場回は1994年7月に発売されたコミックス第29巻「悲劇の種子」。時期的にはリンリンとランランが先に登場していますが、ピンクとリンクが二人をモチーフに作られたキャラなのかは定かではありません。
ちなみに、九能家の御庭番である猿隠佐助もアニメから生まれたキャラクター。10月5日から放送される新アニメ『らんま1/2』では、かつてのオリジナルキャラたちが登場するのか否かに注目が集まっています。
◆テレビスペシャルから誕生した『ドラゴンボール』悟空の父
1990年10月に放送された『ドラゴンボール』のスピンオフ作品『ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜』。その主人公である悟空の父・バーダックも、実はアニメオリジナルキャラクターです。
原作には、悟空を見たラディッツが「成長したな…だがひと目でわかったぞ カカロットよ…父親にそっくりだ…」(コミックス第17巻「カカロット」)と父親の存在に触れる場面はあるものの、キャラクターが描かれたのはテレビスペシャルが初となりました。
『DRAGON BALL大全集』第6巻によれば、当時の放送は作者の鳥山明先生も視聴しており、その完成度にいたく感激したそう。コミックス第26巻「超決戦の火ブタ切る!!」ではフリーザの回想場面にバーダックがアニメから逆輸入されており、アニメが原作に影響を与えた貴重なワンシーンとなりました。
また、バーダック以外にもブロリー、クラウ、グレゴリーなどがアニメオリジナルキャラとして挙げられます。原作には未登場ですが、視聴者の記憶に残るキャラクターとなりました。
〈文/繭田まゆこ〉
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