新作アニメ制作中の『北斗の拳』や、105日より放送が始まった『らんま1/2』などリメイクアニメがブームになる一方で、ファンからは「描写はコンプラ的に大丈夫なのか」と心配の声も。コンプライアンスが厳しい現代では、「不適切」とされる描写は容赦なくカットや改変しなければ、放送自体が危ぶまれることだってあるのです。

 次の4つの描写も、今では見かける機会がめっきり減ってしまいました。

◆『ドラえもん』から消えつつある“お決まりのシーン”

『ドラえもん』のお決まりのシーンといえば、しずかちゃんの入浴中にのび太が誤って侵入してしまう場面。

「どこでもドア」で目的地に行こうと扉を開けると、なぜかしずかちゃんの家のお風呂場。「キャーッ! のび太さんのエッチ!」と叫ばれるいわゆる“ラッキースケベ”な場面は、大山のぶ代さん版や水田わさびさん版初期の『ドラえもん』には多々見られました。

 しかし、近年ではしずかちゃんの入浴シーンは以前よりカットされる傾向にあるようです。

 たとえば、202210月に放送された「のび太、ジャイアンとくっつく? むすびの糸」(水田わさびさん版)。コミックス31巻に収録されている原作では、むすびの糸を持ったのび太がしずかちゃんの入浴中に乱入する場面があります。しかし、アニメでは入浴シーンがまるまるカットされ、しずかちゃんが脱衣場で服を脱ぐ寸前の場面に差し替えられているのです。

 ほかにも、あまり見られなくなったのが、学校でのび太が廊下に立たされるシーン。

 国民的アニメである『ドラえもん』の視聴者のほとんどは子供たちであるため、どちらの描写も彼らへの影響を考えてのカットなのでしょう。

◆『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』にもあった喫煙シーン

『サザエさん』の波平とマスオも、『ちびまる子ちゃん』の友蔵も、昔はタバコを吸っていました。

 波平に至っては、20186月に放送された「傘とやさしさ」での「タバコを買いに来た」発言により喫煙者であることが発覚し、一時SNSで話題に。それほど、彼らの喫煙者のイメージは薄れていたのです。

 このように、現代ではコンプライアンスに配慮した結果、喫煙キャラがタバコを吸わなくなる例が増えています。

 たとえば、『NARUTO-ナルト-』の奈良シカマル。彼は本来タバコを吸うキャラクターであるにもかかわらず、アニメでは彼の喫煙に関するシーンはすべてカットされています。

 さらに暁のメンバー・飛段との戦いでは、原作通りであれば火のついたタバコを投げ込んで起爆札に着火させるところを、タバコが「ライター」に改変されることに(アニメ『NARUTO-ナルト疾風伝』第308話「風遁・螺旋手裏剣!」より)。

 未成年であるシカマルはともかく、成人の喫煙シーンも現代では避けられつつあります。アニメを視聴する少年少女たちが、容易にタバコに興味を持たないための抑止の意味もあるのでしょう。

◆『ちいかわ』でも差し替えられた“飲酒シーン”

『じゃりン子チエ』で小学生のチエがお酒を飲まされるシーンがあったり、『海がきこえる』で未成年の武藤里伽子がコークハイを飲んでいたりしました。

 しかし、令和ではコンプライアンス的にNGにあたるといわれる飲酒描写。その影響は、幅広い世代から人気を誇る『ちいかわ』にも及んでいました。

『ちいかわ』に登場するくりまんじゅうは、いつも何らかのお酒を飲んでいる“のんべえキャラ”。しかし、原作では日本酒らしきお酒を飲んでいたシーンが、アニメではお茶に変更されていたのです(20232月放送「焼きしいたけ」より)。

 また、『プロゴルファー猿』では小丸が抱える一升瓶の中身が原作ではお酒だったものの、アニメではミネラルウォーターに変わっています(アニメ『プロゴルファー猿』第1話「華麗なる世界の一匹狼」より)。

『ちいかわ』の場合は朝の情報番組内の放送であるからなどさまざまな理由がありますが、これからも飲酒描写は減少していくのではないかと予想されます。

◆そういえば減った『クレヨンしんちゃん』のお仕置きシーン

『クレヨンしんちゃん』で印象に残る場面といえば、みさえのお仕置きシーン。しんのすけが破天荒な行動をとるたびみさえの「げんこつ」や「グリグリ攻撃」「お尻叩き」が繰り広げられましたが、それらのシーンは近年減少傾向にあります。というのも、現代ではみさえのお仕置きシーンを「体罰」や「幼児虐待」と捉える視聴者もいるようなのです。

『クレヨンしんちゃん』はほかの子供向けアニメに比べお下劣描写や過激な描写が多く、PTAから嫌われているとの逸話も。そういった背景もあり、お仕置きシーンは最小限に控えハートフルな描写が目立つように転換を図ったのではないでしょうか。

 また、『サザエさん』にも最近見なくなったお仕置きシーンが存在します。それは、20079月に放送された「小さなジェントルマン」などに登場する、カツオを納屋に軟禁するシーン。こちらも「虐待」にあたると考えられており、近頃のコンプライアンスによる規制の厳しさがうかがえます。

 

 ──ほかにも、「オカマ」や「セクシー描写」も不適切表現とされ、アニメから消えつつあります。ファンの本音としては、オリジナルを尊重してほしいところ。しかし、コンプライアンスが優先される昨今、改変なしにアニメを放送することはますます難しくなってくるのかもしれません。

〈文/繭田まゆこ〉

 

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