1994年から、フジテレビ系の『ポンキッキーズ』内で放送された『学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!』(以下、『花子さん』)をはじめ、日本には数多くのホラーアニメが存在しますが、中でも次の3つの作品では救いようのない話や、子供向けアニメとは思えないディープな内容が、多くの視聴者へトラウマを与えました。
◆「花子さん」のルーツは岩手県にある? 『トイレの花子さん』誕生の秘話
『花子さん』のアニメは、生きていると思っていた人物が実は亡くなっていたという子供番組にしてはかなり重い話が豊富です。
第2話「かくれんぼ 地下室に眠る生徒」は、かくれんぼの途中で行方不明になり、3年間誰にも発見されなかった女の子の幽霊が「私を……見つけて……」と寂しそうに懇願したあと、フッと姿が消えて物語が終わってしまいました。女の子の幽霊は自分が生きていると思い、誰かに見つけてもらえるのをずっと待っていたのです。
また第23話「遊園地に現れる幽霊」は、ある家族が遊びに行った遊園地で、一人園内をさまよう女の子のお話です。その女の子は同世代の少女たちの乗る観覧車について行き、観覧車を指さしながら「私、あそこで死んだのよね……。パパも、ママも、みんな死んじゃった……」と無表情のまま呟きます。その後、花子さんの手によって女の子は成仏することが叶いましたが、ほかにも第13話「逆上がりを手伝う幽霊」や、第16話「お風呂場から聞こえてくる歌声」などの話も子供向けとは思えないディープな内容になっています。
『トイレの花子さん』は有名な都市伝説ですが、その発祥の地は、岩手県遠野市といわれています。
さかのぼること1937年。岩手県遠野市で両親と弟、妹とともに暮らしていた小学5年生の「いく子」という少女がいました。
警察官だったいく子の父親は、女癖が悪く不倫をしていました。そのことを知ったいく子の母親は、発狂してしまい一家心中を決意。原因を作った夫といく子の弟・妹を手にかけてしまいます。
その現場を目撃したいく子は、恐怖のあまり通っていた小学校まで逃げ、トイレの個室に身を隠します。
しかし、運悪くいく子がトイレに入るところを用務員が目撃しており、探しにきた母親に「奥から3番目のトイレにいますよ」と教えてしまったのでした。その後、いく子は母親に発見され、短い生涯を閉じることとなります。
そこからなぜ「花子」と呼ばれるようになったのかは諸説ありますが、1950年代から「3番目の花子さん」という都市伝説が流布されるようになりました。
◆子供向けとは思えない「恐怖の演出」がトラウマを植え付けた
2000年〜2001年にかけて放送された『学校の怪談』も、子供向けアニメとは思えないほど強烈なビジュアルの幽霊やお化けがたくさん登場しました。
とりわけ「ババサレ」というお化けは、多くの子供たちにトラウマを植え付けました。子供が一人で自宅にいると部屋を停電させ、ドアをガンガン叩き、子供が恐る恐るドアを開けると持っている鎌を振り下ろしてくるお化けです。黒いマントを被り、痩せこけた皺だらけの顔に赤い目を光らせている老婆のルックスが、子供たちを恐怖のどん底に叩き落としました。
第12話「死を告げる看護婦 母の想い」に登場した、「呪いの看護婦」というお化けのベッドで寝ている患者をカーテンの隙間からジッ……と見つめる演出は、得体のしれない恐怖を子供たちに与え、トラウマを植え付けました。
また、本編を観たあとさらに恐怖を誘うエンディングアニメーションも印象的です。CASCADEの曲に合わせ、リアルな妖怪絵図が流れる演出は、子供向けアニメとは思えない徹底ぶりです。
しかしながら、ヒロインの宮ノ下さつきや、恋ヶ窪桃子は、そのかわいさから子供だけでなく大人からも人気を得て、当時、多くの同人誌や、いかがわしいFLASHアニメーションが作られました。
◆少年は今でも「リプレイ!」と叫んでいるかもしれない……
さまざまな怖い話をレストランのメニューに見立てて紹介する児童文学『怪談レストラン』のアニメ(2009年〜2010年放送)第14話のCパートとして放送された「リプレイ」は、多くの少年少女たちにトラウマを与えました。
TVゲーム好きの少年があるゲームをクリアした景品として「リプレイハンバーグ」というものを手にします。「リプレイハンバーグ」を手にした少年は、「リプレイ!」というと時間を巻き戻し、同じことを何度でも繰り返せる不思議な能力を得ます。
少年はテストを受けても「リプレイ」と口にすることで前日に戻ることができるので、テストはいつも100点満点。日曜日だって飽きるほど楽しめました。しかし、調子に乗っていた少年にもついに天罰が……。
ある日、少年は幽霊団地と呼ばれる廃墟を訪れ、さびれた階段を上って屋上へと向かいました。その瞬間、老朽化した階段が壊れ、少年は地面に真っ逆さまに転落していきます。
すかさず「リプレイ!」と叫ぶ少年ですが、なぜか戻ったのは階段がバキッと壊れる瞬間でした。
パニックになった少年は、それからも何千、何万回と「リプレイ!」と叫び続けましたが、どうしても階段上る前に戻れないのです。
その後も少年は、一人ぼっちで誰の助けも得られないまま、今でも「リプレイ!」と叫んでいる……かもしれません。
──子供向けのホラーアニメと思いきや、エピソードの中には大人でもトラウマになるものや後味の悪いものも多いです。『花子』さんや『学校の怪談』などは、ふっとトラウマ回が頭をよぎり、大人になった今でも複雑な気分になっている人がいるかもしれません。
〈文/花束ひよこ 編集/乙矢礼司〉
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