Prime Video、Netflix、Disney+、U-NEXT……最近ではYouTubeなどでも配信が活発になり、アニメーション本編を気軽に見られるようになりました。

 少し前は放送の度に録画を予約したり、リアルタイムで観たりすることが一般的だったので、あっという間にアニメーションに限らず、テレビ番組や映画を観る環境が変わったことを感じます。

 アーカイブを気軽に参照できるようになった現代で、Blu-rayであったりDVDといったソフトを買う意味はどう変化しているのでしょうか。

◆今、映像ソフトは売れているのか?

 印象として配信サービスの普及のせいでソフトの売り上げは下がっていそうですが、日本映像ソフト協会が発表しているビデオソフト月間売上統計報告などを参照すると2023年には前年から売上高はわずかに増えていたりと購入されていないわけではありません。

 2024年もまだすべての期間が発表されているわけではないながらも、9月度時点で個人向けのソフトの販売売上に関しては数パーセントほどではありながらも上昇傾向にあり、今年も依然その傾向は変わっていないようです。

 ただ、売上こそ微増していながらも売上数量は下降が続いていることから、高額なソフトが多く売れたことで売上高の上昇を生んでることも分かります。

 高額な商品といえばBOX商品であったり、豪華特典付きバージョンであったりと、今、映像ソフトはコレクション性を突き詰めたような高額商品で成立していると分かります。

「配信サービスで観れるならソフトなんて買わなくても良い」という考え方もできる一方、配信がいつされなくなってしまうかも分からなければ、フォーマットも配信サービス独自であったりと、こだわりや作品を自分の手元に置いて置きたい人からすると、ソフトの需要はまだまだあるし、なくなることはないのでしょう。

◆ファンサービスはどんどん増していく? 最近の販売促進のための施策とは?

 こうしてコアなファンのための物である点が強くなってきたソフトたちはすっかりファンサービスを増していくようになってきています。

 TV放送したバージョンからブラッシュアップしたバージョンを収録することは以前からありましたが、ただ発売するだけでなくPRの仕方も大胆になってきています。

 たとえば『呪術廻戦 渋谷事変』は追加カットや修正を加えるだけでなく、発売に合わせてソフトに収録するバージョンを今年3月にわざわざセレクションイベントで劇場上映を行なって披露しています。

 これまでは買わないと観れないものだったソフト限定のバージョンも、お手軽な価格で体験できるのは嬉しい試みですし、映像を確かめてから買いたいという人にも嬉しい施策でした。

 今年公開された映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』も大胆なソフト限定の試みを用意しています。

 2025年2月19日発売予定のBlu-rayとDVDには通常版とは異なる“プルスウルトラ版”を用意。このバージョンでは本編とは別の特典アニメーションとして、映画公開時に入場者プレゼントとして配布された小冊子に収録の『A PIECE OF CAKE』という読み切りエピソードを丸々映像化してくれています。

 ケースのビジュアルを描き下ろしたり工夫する例は多いですが、まさか丸々完全新作アニメが付いてくるというのは、ファンほど嬉しい話です。

◆ソフト限定だと思ったのに! 後出し発表に反感を買う例もあり

 一方でこういったソフトの情報の出し方が、ファンにとって後悔を生んでしまう例もあります。

 今年、前後章で公開された『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、映画版とは異なるラストとなっている全18話構成のアニメシリーズ版をGAGA★ONLINE STORE限定コンプリートBOXにのみ収録すると発表しました。

 このアニメシリーズ版は当初は海外に向けて展開されたバージョンで、日本で視聴するのは困難な状態でした。そんなレアな映像が観られるなら──と、コレクターズ・エディション版よりもこの限定のコンプリートBOXを予約した人もいるでしょう。

 しかし、この発表のあとに件のアニメシリーズがソフトの発売日である12月4日に、Prime Videoで先行配信、18日から各配信サービスでも配信されると発表されました。アニメシリーズ版がコンプリートBOX限定の体験だと思って予約した人の中には、この後出しの発表に怒りや残念がる声を上げる人もいます。

 コレクターズ・エディション版とコンプリートBOXでは2.5倍以上の金額の差があるわけで、特典を目的とするような人も現われるであろう目玉となる要素は、いくら発売前と言えどしっかり順序やタイミングを加味して情報を出してほしいところ。たとえ悪意がなくても、熱心なファンにこそ心象を悪くさせることになりかねません。

 ただでさえ高額化しているソフト事情。限定的な特典を用意してくれるのは嬉しいですが、売る側についても情報の発表の仕方には気をつけて欲しいです。こういった例が続くと、本当に「今ソフトを買う人」が買わなくなる事態を引き起こしてしまうでしょう。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:Amazonより

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.