原作漫画をアニメ化するにあたり、原題からアニメ用にタイトルを変更することは珍しくありません。

 しかし、その裏には原作タイトルが「卑猥すぎて」そのまま放送は厳しいと判断された作品や、「大人の事情」によってタイトル変更を余儀なくされた作品も存在します。

◆「卑猥すぎて」原題での放送はムリ!?──『しょうたいむ!~歌のお姉さんだってしたい~』

画像引用元:Amazon.co.jpより

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 202110月から11月、20231月からの2期にわたり、5分間のショートアニメとして制作された『しょうたいむ!~歌のお姉さんだってしたい~』は、アニメ放送にあたり原題が「卑猥すぎて」タイトル変更された作品です。

 原作のタイトルは『歌のお姉さんだってHしたい~こんな顔、TVの前のみんなには見せられないよ』でしたが、あまりにも直接的かつ「TVの前のみんなには見せられない」というワードが含まれていたため、タイトルの変更が必要だと判断されたようです。

 若くして妻を亡くし、まだ小さい一人娘・カナを男手一つで育てる主人公の藤本翔二が、カナが元気を取り戻すきっかけになった教育番組『お姉さんとうたおう!』の公開ショーに親子で見に行った時のこと。

 機材トラブルでショーは中止となり、2人はファミレスへ。そこで偶然にも相席することになったのは、ショーに出演するはずだった「歌のお姉さん」高崎三奈美。彼女にカナが懐いたことをきっかけに三奈美は翔二宅へ。女性関係はご無沙汰だったシングルファザー・翔二と、歌のお姉さんとして制約だらけの中孤独を抱えていた三奈美は、我を忘れて求め合うことに……。

 ひねりが効いたタイトルも多い大人向け漫画の中でも、かなりストレートに物語の内容を表現した作品ゆえに、タイトル変更はやむを得なかったと言えるでしょう。

◆大手企業の商品とバッティングでタイトル変更?──『アスタロッテのおもちゃ!』

画像引用元:Amazon.co.jpより

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 20114月から6月まで、独立UHF局にて放送された『アスタロッテのおもちゃ!』も原作からタイトルが変更されたアニメです。

 原作タイトルは『ロッテのおもちゃ!』でしたが、アニメは「アスタ」が追加されており、公式から理由は説明されていないものの『コアラのマーチ』や『パイの実』などで有名なロッテが、既に『ロッテのおもちゃ』という商品を発売していたため、その点に配慮して「アスタロッテ」に改名されたのでは? といわれています。

『アスタロッテのおもちゃ!』のヒロインの名前はアスタロッテ・ユグヴァール(通称、ロッテ)。登場キャラのかわいらしくもキワどいコスチュームや、昼ドラのように複雑で背徳的な人間関係、下ネタなどを盛り込みつつも、嫌みがなく憎めない登場人物たちのかわいらしさなどが描かれた、明るく楽しいラブコメディです。

 同じく商標問題によってアニメ化の際に原作からタイトル変更した作品に『金色のガッシュ!!』があります。アニメタイトルは『金色のガッシュベル!!』でしたが、不透明水彩絵の具に『ガッシュ』という商標登録された商品があり、版権問題によって変更を余儀なくされたといわれています。

◆すべては壮大な伏線だった!?──『ハイスクール・フリート』

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『ハイスクール・フリート』は、プロダクションアイムズ制作による日本のテレビアニメ作品で、20164月から6月までBS11TOKYO MX他にて放送されましたが、放送開始となる第1話は『はいふり』というタイトルで放送されていました。

 多くの国土を水没により失われてしまった日本。「海の安全を守る“ブルーマーメイド”を目指すべく、海洋高校に入学した岬明乃たちの活躍を描く」というのが第1話のあらすじですが、事前PVではメインキャラの女の子たちが仲良さそうに戯れていたり、公式サイトには「にゅ~す」「きゃらくた~」など緩い字体が並んでいたりと、日常系アニメにしか見えない様相でした。

 ところが、放送が始まるやまったく描かれていなかった戦艦武蔵をはじめとするガチな軍艦類が次々と登場し、メインヒロインたちが次々と艦に乗り込んでいくなどシリアスな展開に……。

 エンディングを迎え、ゆるいロゴで書かれた「はいふり」の名は取り払われ、シリアスな印象の『ハイスクール・フリート』という新たな番組タイトルが掲げられたのでした。

 番組タイトル変更と同時に、公式サイトも全面的に改められ、本来の姿が出現。公式ツイッターも、『はいふり』改め『ハイスクール・フリート』に変更され、JR秋葉原駅前のラジオ会館に掲げられていた「はいふり」の巨大広告は一夜にして『ハイスクール・フリート』へと変更されるなど、壮大な伏線回収が行われました。

◆やはり「あのマーク」は世界的にNG……──『東京リベンジャーズ』

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 原作の人気上昇に伴い2021年には実写映画化され、その後も舞台化やミュージカル作品として公開され、知名度が急上昇した『東京卍リベンジャーズ』も、アニメでは『東京リベンジャーズ』へとタイトルが変更された作品です。

 理由について公式から発表はありませんでしたが、「卍」(まんじ)は古代よりアジア・西洋で用いられてきた鉤十字「ハーケンクロイツ」の記号に似ており、ハーケンクロイツは、ナチスドイツの党章にも使用されていました。

 このことから、ハーケンクロイツには反ユダヤの差別的意味合いが込められているといわれており、世界的にもネガティブなイメージが強いマークです。

「今後、アニメ作品が世界進出することなども視野に入れ世界的にネガティブなイメージを持たれている“卍”を取り除いたのではないか?」とする見方がSNSでは有力です。

 

 ──コンプライアンスの巨大な波が作品業界にも押し寄せている昨今、さまざまな事情でアニメ作品のタイトルが変更されています。

 今後はタイトル変更理由も多様化し、そのハードルもジリジリと下がっていくことが予想されます。原題のままアニメ化される作品は、いっそう稀有な存在になっていくのかもしれません。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

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