漫画やアニメでは作中でキャラクターの性格や行動が真逆に変わることがあり、そのギャップの大きさからファンにネタとして扱われることも……。次の4人は視聴者にひどいアダ名を付けられてしまったキャラクターたちです。
◆孫悟空が黒化した「クズロット」──『ドラゴンボール』
『ニコニコ動画』に投稿された2次創作ネタのMAD動画で、姑息な手段を使ったり息子である悟飯を捨て駒にしたり小悪党ムーブをする悟空が話題に。このダメ親父ぶりにカカロットをもじって、「クズロット」というアダ名を付けられてしまいました。
目つぶしや背後からのかめはめ波などとにかく戦い方が汚く、敵の隙をついて不意打ちをするのは当たり前。それでいて不意打ちが失敗して反撃をくらうと、自分のことを棚に上げて怒り出す始末。
さらには自分のほうが強いと分かれば「オラ弱ぇやつ見るとワクワクすんだ!」と言い放ち、敵が強ければ「オメェの出番だぞ!」とベジータやピッコロ、悟飯たちを捨て駒にして逃げようとするクズぶりです。
たとえ盾にした味方が死んだとしても、「でぇじょうぶだ。ドラゴンボールで生きけぇれるさ!」ととことん性根が腐っています。
原作での悟空も老界王神の助けを借りるため、ビーデルやブルマの体の一部を触らせることを交換条件にしようとするなどトンデモ発言はしていました。しかし、それはあくまでも強敵を倒したり地球の危機を救ったりするという目的があったからです。
そんな悟空が最大の力を発揮する戦闘において、小悪党ムーブをしたり逃亡をはかったりしていては「クズロット」と呼ばれても仕方ないでしょう。悟空が純朴で実直なキャラだからこそ、2次創作の黒化(闇落ち)ネタが人気となったといえます。
◆一方通行の読み方が「アクセロリータ」に──『とある魔術の禁書目録III』
一匹狼で暴力的だった一方通行(アクセラレータ)は、幼女姿の打ち止め(ラストオーダー)と出会って彼女を大切な存在として最優先で守るようになります。そのロリコンともとれるキャラクターの変わりっぷりが原因で、ネットでは「アクセロリータ」と呼ばれるようになりました。
一方通行(アクセラレータ)は学園都市に7人しか存在しないレベル5の超能力者の第1位。最強の能力者で人相も悪く、挑発行為や悪態も多いキャラクターです。
しかも、御坂美琴のクローンである2万人の妹達(シスターズ)の命を奪うことで、レベル6に進化するという実験に協力していました。実際に1万人の妹達(シスターズ)の命を奪っており、表向きは完全な悪役キャラとして描かれています。
その実、誰かを助けようとする者は見捨てられず、レベル6への進化を目指したのも人類最強になることで、誰も自分と戦う気が起きなくなれば、誰も傷つけることがなくなるという想いからでした。
そのような本質もあって残りの1万人の妹達(シスターズ)を守ることを決め、なりふり構わず打ち止め(ラストオーダー)のために行動するようになります。
また、彼女を守るために頭に銃弾を受けたことが原因で、電極と打ち止め(ラストオーダー)がいないと日常生活を送るのも難しいという事情もありました。
しかし、これまでの一方通行(アクセラレータ)のふるまいと彼女への対応の変わりようは、インパクトが大きかったです。
そのため、「アクセロリータ」という不名誉な呼ばれ方をされることとなってしまいます。もし、打ち止め(ラストオーダー)が幼女でなければ、普通にツンデレキャラとして認識されていたでしょう。
◆「ゲスミン」すぎて単行本で修正されたアルミン──『進撃の巨人』
アルミンは調査兵団の参謀役を担うようになると次第に目的のためなら手段を選ばなくなり、アニメのWebサイトで公開されている『4コマ訓練兵団』でも、腹黒キャラとして描かれることが多かったです。その結果、アルミン・アルレルトという名前から「ゲスミン・クズレルト」と呼ばれるようになってしまいます。
特に決定的となったのは、原作『進撃の巨人』第49話で見せたアルミンのゲス顔です。アニに好意を寄せるベルトルトに対して、調査兵団に捕らえられている彼女が酷い拷問を受けているというウソを告げたときの表情が腹黒すぎたことで話題となりました。
このコマに関しては作者の諫山創先生自身がアルミンをゲスミンと呼んだことで、このひどいアダ名がまさかの公式化。その後、単行本ではこのシーンのアルミンは描き変えられて、邪悪さがマイルドになりました。
なまじ頭が良すぎてエルヴィン亡き後、調査兵団の参謀役を任されることになったアルミン。人類の滅亡を防ぐために必死になりすぎたが故に、「ゲスミン・クズレルト」というアダ名を付けられるハメとなってしまいました。
彼はただ最善を尽くしたかっただけであり、自分がやるしかなかったため率先して損な役回りを担ったのだと思われます。それなのに、視聴者からこんなひどいアダ名で呼ばれていることを知れば、きっと「世界は残酷だ」とつぶやいたでしょう。
◆モブキャラ鬼殺隊士「サイコロステーキ先輩」──『鬼滅の刃』
「那田蜘蛛山編」で登場した竈門炭治郎の先輩隊士。彼は本名不明のモブキャラなものの、登場時のイキり具合とあまりに凄惨な死に様から「サイコロステーキ先輩」というふさわしいアダ名を付けられることとなりました。
そのイキり具合は、十二鬼月の下弦の伍である累をガキの鬼と侮って、「お、丁度いいくらいの鬼がいるじゃねぇか」と言ってしまう始末。さらには制止しようとする炭治郎に「ひっこんでろ」と言い放ち、「俺は安全に出世したいんだよ」とゲスな本音を発します。
これには「相手、十二鬼月だから」「お前じゃ勝てないから」とツッコミを入れた視聴者も多いハズ……。出世するためにそこそこの鬼を倒して下山するはずが、累の攻撃によって賽の目切りにされて昇天することになりました。
見た目で相手を侮り、勝手に自分の目標を語り出すなど死亡フラグを立てまくって、すぐさまそのすべてを回収。このようなモブキャラ小物ムーブが視聴者に強いインパクトを与えたからこそ、「サイコロステーキ先輩」というふたつ名をもらえるに至ったのでしょう。
しかし、隊がほとんど全滅状態にもかかわらず焦って逃げようとせず、このような強気な発言をできる彼はある意味スゴイといえるでしょう。あまりの体たらくぶりなものの試験に合格できるだけの実力はあり、あれだけ自信満々になれるということは同期の中では強かったのかもしれません。
「サイコロステーキ先輩」はたった4ページの登場にもかかわらず、第2回人気投票では35位を獲得。アニメ放送時にはSNSなどでお祭り騒ぎとなり、X(旧Twitter)のトレンドで1位になるなど愛されぶりもハンパないです。
──リアルな世界でも親しくなると呼び方が変わったり、ニックネームで呼んだりします。ひどい愛称だとしても、アニメのキャラクターが視聴者にアダ名を付けられるのはそれだけ愛されているということなのでしょう。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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