現在大人気の漫画家も、下積み時代は著名な漫画家のアシスタントを経験していたことがあります。中には、アシスタントとして携わっていた漫画もヒットし、漫画家デビュー後に自分の連載作品も大人気になったという人もいます。
◆『るろ剣』のアシスタントたちは続々と人気漫画家に──中には累計発行部数5億部超えの漫画家も
『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』(以下、『るろ剣』)の作者・和月伸宏先生の元で、若いころにアシスタントをしていた漫画家には、のちに連載が大ヒットした人が多くいます。
『ONE PIECE』の作者である尾田栄一郎先生もその一人です。尾田栄一郎先生は、同作のコミックス第4巻のSBSなどでアシスタント時代について言及しています。
ほかにも、『シャーマンキング』の作者・武井宏之先生、『Mr.FULLSWING』の作者・鈴木信也先生、『鬼が来たりて』の作家・しんがぎん先生も同じアシスタント仲間でした。
有名漫画家のアシスタントを経験してもデビューできるとは限らないほど、漫画家の世界は厳しい中、尾田栄一郎先生たちは4人とも『るろ剣』と同じ『週刊少年ジャンプ』で連載を持てるようになっています。尾田栄一郎先生に至っては2022年に『ONE PIECE』の累計発行部数が5億1000万部を突破し、ギネス記録を更新したと、公式サイト『one-piece.com』で発表されました。
それぞれの道を歩むことになってからも元アシスタントたちの仲の良さは変わりませんでしたが、2002年にしんがぎん先生が29歳の若さで急逝。
尾田栄一郎先生は、『ONE PIECE』のコミックス第25巻223話の扉絵の縁を黒く塗り、しんがぎん先生への追悼の気持ちを表明しました。
◆『DEATH NOTE』の作者が多大な影響を与えた漫画家とは?──「心の師匠」と仰いだ結果……
アニメも大ヒットした『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』『バクマン。』の作画を手がけた小畑健先生のアシスタントたちも、次々と漫画家デビューを果たしています。
『るろ剣』の作者・和月伸宏先生もその一人。1996年出版の『原典・るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 剣心秘伝』と、1999年出版の『全史 るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 剣心華伝』で、小畑健先生の『CYBORGじいちゃんG』を読んだことがきっかけで彼を心の師匠と仰ぐようになったことや、自ら希望してアシスタントに加入したことなどを明かしています。
和月伸宏先生は「一番好きな作家」に小畑健先生、影響を受けた作品に「小畑健先生の一連の作品」を挙げるほど、深く尊敬しているようです。
さらに、『To LOVEる-とらぶる-』の作者・矢吹健太朗先生や『アイシールド21』の作者・村田雄介先生も小畑健先生のアシスタント経験者です。
矢吹健太朗先生は、2011年出版の『ぱ~ふぇくとらぶる! To LOVEる-とらぶる-&To LOVEる-とらぶる-ダークネス公式データブック』で小畑健先生との特別対談が実現。村田雄介先生は、2003年出版の『ヒカルの碁』のコミックス第23巻の中に収録された「HIKARU NO GO STAFF CREDIT」でアシスタントであることが明かされています。
◆『こち亀』のアシスタントはプロフェッショナル集団?──「りぼん」の人気漫画家も選ばれる
40年間一度も休載することなく、『週刊少年ジャンプ』での連載を終えた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、『こち亀』)の作者・秋本治先生は、2006年出版の『超こち亀』で、アシスタントの中に駆け出しはおらず、「背景」、「人物」、「仕上げ」までこなせるプロの集団であることを明かしています。
『こち亀』のコミックス第102巻の巻末では、『りぼん』で『GALS!』などのヒット作を手がけた藤井みほな先生もアシスタントだったことが明かされました。
『GALS!』の登場キャラクターの衣装やヘアメイクにはこだわりが見られるなど、藤井みほな先生は若い女性のファッションやメイクなどの流行を取り入れることが得意。クリエイティブ集団のメンバーとして勤務していたのも納得です。
連載漫画の原稿は締め切りとの戦いのため、時には徹夜して全員で原稿を仕上げることもあるといいます。しかし、秋本治先生はアシスタントたちに徹夜をさせないそうで、基本的に日曜日は休みで昼休みもあるのだとか。
さらに、アシスタントはシフト制で勤務しているそうです。6名を2班に分け、月曜日から水曜日は全員が出勤、月末の最終週は月曜日・火曜日・水曜日と水曜日・木曜日・金曜日・土曜日に分かれて勤務する体制を採っているといいます。
秋本治先生はアシスタントの生活を支えるために漫画制作集団「有限会社アトリエびーだま」を設立し、代表取締役も務めています。
◆『GTO』のアシスタント中にデビューが決定──アニメ化して人気漫画家の仲間入りを果たす
連載終了後も高い人気を維持している『GTO』は、『GetBackers-奪還屋-』でデビューする前の綾峰欄人先生がアシスタントを務めていました。
『GTO』のコミックスの中には、アシスタントたちが自由に描いたページがあります。コミックス第1巻から5巻の中で、綾峰欄人先生は当時のエピソードなどを綴っています。
綾峰欄人先生は4年半ほどアシスタントを務めたあとにデビューが決まり、『GTO』と同じ『週刊少年マガジン』にて『GetBackers-奪還屋-』を連載。
同作は人気を集めアニメ化も実現し、綾峰欄人先生は藤沢とおる先生と同様、『週刊少年マガジン』の屋台骨を支える漫画家になりました。
〈文/花束ひよこ〉
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