春から新社会人となる人は不安や期待で胸がドキドキしているかもしれませんが、 世の中には理不尽を通り越して、もはや悪質としか言いようのない「ブラック企業」が存在するのも事実。近年、社会問題化したブラック企業の実態を反映したマンガやアニメ作品が増えているようです。

◆作者もブラック企業勤めだった?──『テイコウペンギン』

 とりのささみ。さんがTwitter(現X)に掲載、それが元となったYouTube漫画『テイコウペンギン』は、ブラック企業に勤めるかわいらしいペンギンが主人公。

 無理難題を押し付ける上司、理不尽なクレーマーの対応など、ブラック企業の日常が描かれ、ペンギンの機知に富んだセリフや持ち前の毒舌で巧みに困難を乗り越える姿が、支持を得ています。

 2019年5月に掲載された『FRIDAY DIGITAL』の「共感と哀愁で話題に! いま注目の「ブラック企業」漫画が描く世界」という記事で、作者のとりのささみ。さんはかつてブラック企業に勤務した経験があることを明かしています。

 ただし、作品はとりのささみ。さんの実体験の単なる投影ではなく、労働問題に関する綿密なリサーチに基づいて創作されているとのこと。

 とりのささみ。さんは「ネームを考える際には、仕事や労働について調べています。どんなことが起こっているのか、ペンギンになにを言わすと良いか」「でも、調べれば、調べるほどつらくなるんです」「働かなくていいなら、働かないほうがいいな、と思ってしまいます」「作品が本になったことはとても嬉しいのですが、個人的にはこういうコンテンツがウケなくていい社会が来てほしいものです」と本音を吐露。

 もし本作の主人公が人間だった場合、読者はより一層自分と重ね合わせ、読み進めることが苦しくなったかもしれません。

◆あえてブラックな実態を晒す──『アニメーション制作進行くろみちゃん』

 アニメ制作会社・ゆめ太カンパニーが2001年と2004年にOVAとして企画・制作した『アニメーション制作進行くろみちゃん』は、アニメ業界の過酷な労働環境を赤裸々に描いています。

 通常、職業モノの作品は視聴者や読者に夢と希望を与えるため、美化して描かれることが多いです。

 しかし、『アニメーション制作進行くろみちゃん』はアニメ業界の裏側をリアルに描き、「決して楽しいだけの業界ではない」というメッセージを伝えています。

 ストーリーは、主人公・大黒みき子が念願のアニメ業界に就職するところからスタート。しかし、入社1日目に先輩が胃潰瘍で倒れ、新人でありながら後釜として制作デスクを任されることになります。

 それから、厳しい納期、アニメーターの過酷な労働環境、作画崩壊の裏側など、アニメ制作の闇が次々と描かれていきます。

 2004年に販売された続編OVA『アニメーション制作進行くろみちゃん 日本のアニメは私が作る!2』では、会社の強引なやり方に反発した作画監督が失踪するという衝撃的な展開を迎えます。

 本作はフィクションですが、アニメ制作の仕事に興味のある人にとって、現実を知る上で貴重な作品といえるでしょう。

◆猫になって会社を変える!?──『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話』

 清水めりぃさんがTwitter(現X)に掲載していた『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話』は、猫になった主人公がブラック企業をホワイト化していくコメディマンガです。   

 ブラック企業に勤める主人公のモフ田くんは、残業代なしの14連勤で疲弊していましたが、ある朝目覚めると猫になっていました。上司に連絡するも一蹴され、そのままの姿で出社することになったモフ田くんは、猫の姿で会社員生活を送ることになります。

 本作はブラック企業の実態を描きつつ、猫のかわいらしさも満載です。

 電車の中でひなたぼっこをするように丸まって眠るモフ田くんの姿など、癒されるシーンも多くあります。

 モフ田くんの恋愛模様も見どころの一つ。応援したくなるような心温まるストーリーが人気を集め、書籍化されました。

◆ジワジワと心が削られる!?──100日後に会社を辞めるサラリーマン』

 空乃亞さめさん原作の『100日後に会社を辞めるサラリーマン』は、Twitter(現X)で公開され、話題となった4コマ漫画作品です。

 「定時間際に、納期が今日までの仕事を依頼される」「いつの間にか新人の教育係にさせられる」「上司のミスなのに自分が取引先に謝罪させられる」など、主人公の境遇はまさにブラック企業そのものです。

 2021年7月に『Warker Plus』に掲載された「じわじわ心が削られるブラック企業の日常…漫画『100日後に会社を辞めるサラリーマン』がSNSで話題に」という記事で、空乃亞さめさんは作品のアイデアについて「実体験であったり、自分と同じような環境で働いている知り合いとの会話でブラックあるあるが生まれたりしていました」とコメント。

 つらいエピソードばかりにならないよう、「せっかくの休日に読んでいる人がしんどくならないように、土日の話はなるべくゆるい雰囲気になるようにしました」と空乃亞さめさんは読者への配慮を語ります。

 

 ──ブラック企業にフォーカスしたマンガ作品は、楽しめるだけでなく社会問題を考えるきっかけを与えてくれます。

 もし、これらの作品に共感し、自分の置かれた境遇に疑問を感じたら、一人で悩まずに然るべきところに相談してみるのも良いかもしれません。

〈文/花束ひよこ〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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