現在、ベテラン声優として活躍している人たちも、かつては下積み時代を経験していますが、声優になる前やデビュー後、人知れず驚きの苦労をしていたようです……。

◆タラコのおにぎりで食中毒になる──TARAKOさん

 『ちびまる子ちゃん』のまる子役などでお馴染みのTARAKOさん。1988年の夏、愛知県名古屋市でのライブ後にファンの女性スタッフからもらった好物の「生タラコのおにぎり」を夜食に食べて眠りについたところ、深夜に腹痛を起こし、食中毒で入院することに……。

 幸いにも翌日に退院できましたが、歌が歌える程度には回復しておらず、ライブは急遽トークショーに変更されたのだとか。

 それから半年後、同じライブハウスで差し入れをくれた女性スタッフと再会しましたが、TARAKOさんは食中毒になったことを言えなかったそうです。

 このエピソードはフジテレビのバラエティー番組『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』で紹介され、TARAKOさん本人も番組に出演し事実と認めています。

 ちなみにTARAKOさんの芸名の由来は、食べ物の「タラコ」ではなく、『サザエさん』のタラちゃんです。

 専門学校に通っていたころ、タラちゃんに雰囲気が似ていたため友人たちから「タラコ」と呼ばれていたそう。このニックネームをローマ字表記にし、芸名にしたことが、20243月に公開された『NEWSポストセブン』の「【TARAKOさん・哀悼秘話】 大嫌いだった自分の声に自信が持てるようになった『ちびまる子ちゃん』、一方で「まる子しかできない」と悩んだ時期も」という記事で明かされています。

◆オーディションで審査員にミカンを配って合格!?──林原めぐみさん

 『エヴァンゲリオン』シリーズの綾波レイ役などで知られる林原めぐみさんは、衝動的に声優オーディションに応募します。

 声優を目指した経緯については、2001年出版の著書『明日があるさ SWEET TIME EXPRESS ちょっトク文庫版』(出版社:KADOKAWA)に詳しく書かれています。

 高校卒業後、看護師を目指していた林原さんは、看護学校へ願書を提出したときの学校職員の態度に腹を立て、たまたま目にしたアーツビジョンの声優無料養成オーディションに応募。

 およそ600人が参加するオーディション会場の張り詰めた空気の中、たまたま近くの八百屋で買ったミカンを審査員に配った林原さんは、「ミカンの子」として強烈なインパクトを残したのです。

 この奇抜な行動が功を奏したのか、優秀な成績のおかげか、「アーツビジョン付属日本ナレーション演技研究所」の第1期生に特待生の1人として見事合格を果たします。

 しかし、林原さん本人はミカンの件を覚えていないのだとか。

 林原さんは両親から「声優を目指すのであれば、看護学校を卒業して正看護婦免許を取得すること」を条件に出され、1985年から3年間、看護学校と声優養成所両方に通い、正看護婦免許を取得した努力家でもあります。

◆ジブリで主役を務めたのに仕事激減!?──高山みなみさん

 『名探偵コナン』の江戸川コナン役などで知られる高山みなみさんは、若手のころにスタジオジブリの人気作『魔女の宅急便』でヒロインのキキ役と絵描きのウルスラ役に選ばれ、一躍有名になりました。

 「東京専門学校オフィシャルサイト」のインタビューによると、当初、高山さんは新人の自分には責任が持てないからと、急遽決まった一人二役を断ろうとしましたが、監督の宮崎駿さんから「責任は自分が持つから安心して」と言われ挑戦。結果として、声優としての転機になった作品であったと語っています。

 以降、仕事が舞い込むと思いきや、主演の成功が「大役でないと仕事を受けてもらえない」という誤解を生み、一時的に仕事が激減してしまいます。

 レギュラーが『らんま1/2』シリーズの天道なびき役のみという時期もあり、一時は近所でアルバイトをしていたそうです。

 それでも諦めずに活動を続けた結果、1990年代には『名探偵コナン』をはじめとする数々の人気作品に出演し、現在も第一線で活躍しています。

◆女にフラれて役者を目指す──大塚明夫さん

 『ブラック・ジャック』シリーズの主人公のブラック・ジャック役や、『ONE PIECE』のゴールド・ロジャー(ゴール・D・ロジャー)役などを務める大塚明夫さんは、父親の大御所声優・大塚周夫さんと親子2代で活躍しています。

 2021年12月に『声優グランプリ』の公式Webサイトに掲載された「【声優への道】声優・大塚明夫インタビュー「声優として生きるためのヒント」という記事で、大塚さんが声優になった経緯が明かされました。

 大塚さんはもともと役者になるつもりは毛頭なく、マグロ漁業の船に乗ろうと考えていたものの、歯の治療が間に合わなかったうえ、乗る予定だった船も座礁して乗れなかったそうです。また、役者として活動する前は父・周夫さんとうまくいっていなかったのだとか。

 転機となったのは同級生の女性との再会でした。

 その女性に想いを寄せていた大塚さんは、ある劇団の準劇団員と交際していた彼女が言った「男の人は夢があるほうがいい」という言葉に強く心を打たれ、役者を目指すことにしました。

 大塚さんは200312月放送のラジオ番組『Earth Dreaming〜ガラスの地球を救え!』に出演したときもこの話題に触れ、この女性にはフラれてしまったことを明かしています。

 不純な動機ではありましたが、大塚さんはデビューを果たし、2017年放送の「人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙!3時間SP」では第10位にランクインするほどの人気声優となっています。

 大塚さんの人気は本人の努力や才能の賜物ですが、きっかけを作った女性の一言の影響も大きいものでした。

〈文/花束ひよこ〉

 

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