春から転職などの新生活が始まる人も多いでしょう。今を時めく人気声優の中には、最初から声優を目指したわけではなく、もともとは一般企業に勤め、そこから声優の夢を追いかけた、意外な経歴を持つ人もいます。中には、警視庁機動隊員だった声優も存在します。
◆若本規夫さんは警視庁機動隊員だった──ハラハラドキドキする仕事がしたいと考えた結果……
『ドラゴンボール』のセル役や、『サザエさん』の二代目・穴子さん役などで知られる若本規夫さんは、2021年4月に『マイナビニュース』に掲載された「未来は日々の鍛錬の先に。元警視庁機動隊、声優 若本規夫のけもの道を行く孤高の精神」というインタビュー記事の中で、過去に警視庁機動隊員だったことを明かしています。
若本さんは早稲田大学法学部出身。卒業を控え、進路に迷っていたところ就職課に「ドキドキする仕事はないですかね?」と相談した彼は、警視庁を紹介されたといいます。
当時、学生運動が過激化し、日本各地で暴動が発生する中、警察学校を卒業し警察官となった若本さんは、機動隊員として学生運動の鎮圧などに従事しました。
また、2022年出版の『若本規夫のすべらない話』(出版社:主婦の友社)によると、交番勤務をしていた若本さんは、交通違反者に情が移り、何度か見逃していたところを上司に見つかってしまったといいます。
上司から説教を受けた若本さんは、「自分は法を執行する側の人間ではない」と悟り、1年で警察官を辞めることに。
その後は知人の誘いで日本消費者連盟の事務局メンバーとして働き、仕事にやりがいを感じていたものの、そこは組織内の人間関係が悪く、ある日の会議で口論となり上司に手をあげて解雇されてしまったそうです。
2007年出版の『アニメージュ』2月号(出版社:徳間書店)内に掲載された「この人に話を聞きたい 若本規夫」によると、声優を目指した経緯は「消費者連盟で上司を殴り飛ばし、解雇された後に安酒をかっくらって電車で帰る途中、シートで横になっていると上の棚に置いてあった新聞が顔に落ちてきた」ことがきっかけだったそうです。
新聞に掲載されていた声優養成所「黒沢良アテレコ教室」のオーディションの広告が目に留まり、若本さんは参加。見事合格を勝ち取って現在に至ります。
◆金田朋子さんはブルボンの社員だった──新潟の降り積もる雪を見た結果……
『アニメ おしりかじり虫』のおしりかじり虫18世役などで知られる金田朋子さんには、製菓会社ブルボンの社員だった過去があります。
2008年にNHKのポータルサイト『週刊!ハタラキング』で配信された「ぶっちゃけ大変でした!〜20代、私の仕事〜 Vol.29 金田朋子(前編)」という記事の中で、小学校から大学まで関東学院の一貫校で学び、大学では建築学科に在籍したものの、建築の世界は自分には向いていないと思い、建築関係の職を諦めたことを明かしました。
その後、ブルボンのお菓子が好きという理由だけで株式会社ブルボンに就職し、新潟本社で勤務しながら弁当の個数の確認などを担当していました。
しかし、工場人たちなどに「なんでそんな東京の方から来ちゃったんだ? 冬になったら雪に埋もれちゃうよ」と言われ「さすがに冬は迎えられないなぁ」と思い、冬が来る前に退職。
その後は新規開店したデパートに再就職し、おもちゃ売り場で勤務していたころ、姉にすすめられて夜間の青二塾東京校第二部に入所し人気声優となりました。
◆三石琴乃さんは東京都庁に勤務していた──過去にはエレベーターガールやスポーツクラブの受付も経験
『美少女戦士セーラームーン』の月野うさぎ役などで知られる三石琴乃さんは、2022年9月に『ニコニコニュース』で配信された「TV版無印『セーラームーン』最終回を27年越しに演じた三石琴乃の胸に残ったもの――養成所時代からエヴァ完結編まで、半生を振り返る彼女が語った次に演じたい役とは?【人生における3つの分岐点】」というインタビュー記事の中で、高校卒業後に声優養成所「勝田声優学院」に入所したことを明かしています。
1995年出版のエッセイ『月 星 太陽』(出版社:KADOKAWA)によると、デビュー前はサンシャイン60のエレベーターガールやスポーツクラブの受付などのアルバイトをしていたそうです。
東京都庁に勤めた経験もあり、2024年7月には、三石さん本人がX(旧Twitter)で「OL時代、都の環境保全局大気監視課と言う部署で放送業務をしてました」と投稿し、ファンを驚かせました。
◆日髙のり子さんはアイドルだった!?──目が出なかった結果……
『らんま1/2』の天道あかね役や、『名探偵コナン』の世良真純役などで知られる日髙のり子さんは、2021年出版の『昭和50年男』(出版社:ヘリテージ)にて、10歳の頃に児童劇団養成所に入所して子役として活動していたことを明かしています。
高校時代には「いとうのりこ」名義で、『ふたごのモンチッチ』の主題歌「ふた子のモンチッチのうた」を発売。
1980年に「初恋サンシャイン」の楽曲でアイドルデビューするとき、本名の「いとう(伊東)のりこ」名義で活動する計画もありましたが、同じ読みのアイドルがいたため断念。
「初恋サンシャイン」は香川県の「仁尾太陽博」のイメージソングだったため、「仁尾太陽博」の中にある「太陽」をもとに「日が高く昇るように」という意味から苗字は「日髙」、下の名前は本名である「のりこ」を残し、現在の芸名に変更となりました。
しかし思うように人気が出ず、2022年4月に『文春オンライン』で配信された「「嫌いだからやめてほしい」と「好き」が半々だった…声優・日髙のり子が『タッチ』浅倉南役を射止めた“意外な理由”」という日髙さんが綴った記事によると、「出演していたラジオ番組に届いた「日髙さんは声に特徴があるので声優に向いているんじゃないですか?」というお便りがきっかけで声優を目指し、マネージャーさんの努力の甲斐もあって『超時空騎団サザンクロス』というアニメで声優デビューをすることもできた」と、声優になった経緯を明かしています。
もしもアイドルとして大成功していたら、現在のアニメ界で日髙さんの声は聞けなかったのかもしれません。
〈文/花束ひよこ〉
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