春アニメは特に“オープニング(OP)主題歌”の映像への力の入れ具合が顕著な作品が多めです。いったいアニメ業界に何が起きているのでしょうか?
◆まずは主題歌から! 観ておきたい必見のオープニング映像
今季スタート作品でまず観ておきたいのが4月6日(日)からスタートしたばかりの『ウィッチウォッチ』のOP映像。昨年に放送した『夜桜さんちの大作戦』と同じく『週刊少年ジャンプ』発の原作作品が日曜夕方枠への登場となりました。
OPにはYOASOBIの「Watch me !」が起用されています。ヒットアーティストが起用されているポイントだけでなく、その映像にも力が入ってます。
『ウィッチウォッチ』のOP映像では、ポップで楽しい音楽に合わせて、主人公のニコと守仁たちが魔法でいろんな人物たちとの事件や日々を過ごしている様子が描かれます。
それぞれの場面は原作ファンであれば「あれは原作のあのエピソードだな」と想像できるような切り取り方をされており、引用元を考察していくような楽しみ方ができます。
見事なのが視線誘導の仕方で、いくつもシーンがコロコロ変わっていくのですが、前後の場面でキャラクターたちの動きの方向を合わせているので、その一連の映像として観られる気持ち良さがあります。
本作の絵コンテ・演出を担当しているのが、アニメーターの石谷恵さん。『ONE PIECE』のエッグヘッド編の「あーーっす!」でも同セクションを担当されていた方です。タイトルの使い方や場面の転じ方などの傾向から映像で気づいた人も多いでしょう。
映像のスピード感では負けていないのが4月5日から土曜の夕方を担うことになった『真・侍伝YAIBA』です。OPにはBLUE ENCOUNTの「BLADE」が起用されています。
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『真•侍伝 #YAIBA』
オープニングの場面カット公開✨
\🎵OPテーマ
BLUE ENCOUNT
「BLADE」(Sony Music Labels Inc.)毎週土曜夕方5時30分〜放送📺
読売テレビ・日本テレビ系全国ネットにて
※一部地域を除く@BLUEN_official#YAIBAヤバイ pic.twitter.com/g3GtGHA73e— TVアニメ『真•侍伝 YAIBA』公式 (@YAIBA_PR) April 5, 2025
原作者の青山剛昌先生の当時のタッチを意識したキャラクターデザインであることは放送前から明らかになっていましたが、OP映像も一定層には懐かしさを感じさせるような少年漫画らしいパワフルなものとなっています。
冒険をする主人公。続々と登場する仲間たち、そしてライバル。挫折を経ての迫力あるバトルシーン。一周回って最近では珍しいというぐらい正統派でありつつ、そこに全力が注がれた映像になっていました。
こちらのOPの絵コンテ・演出には、10+10さんと共同で『ブルーアーカイブ The Animation』のOP制作も務めた、げそいくおさんが担当しています。
これら2作品とも一線を画す作り方をしているのが4月5日から第2期がスタートした『小市民シリーズ』です。OPにはヨルシカの「火星人」が起用されています。
場面が目まぐるしく移り変わっていくのは前述の作品とも同じなのですが、本作では絵のタッチや実写映像などを交えた実験的ともいえる映像になっています。
一見TVアニメのOPらしからぬ内容に思えますが、ミステリー作品の本作にはその異質さや不穏さが内容とマッチしていて、曲も相まって絶妙なバランスを実現できています。
◆どんどん力を増していく主題歌映像の重要性
これらの作品に共通していえるのが、映像としてのカロリーが本編映像と変わらないどころかそれ以上と言わんばかりのクオリティーになっている点です。
OP映像は1話限りでなく何度も流れるものなので、しっかり作品の“顔”として機能していくようになっているわけです。
毎シーズンに何本もの新作アニメがスタートするこの日本では、少しでもフックとして視聴してもらえるよう、主題歌映像に力を入れてくるのでしょう。そういった傾向は、あえて本編とは違った製作陣を起用する例が多くなってきたことからも明確です。
また主題歌アーティストもドラマや映画などで活躍するアーティストがTVアニメに名を連ねるのがもはや多勢側になってきたのも、TVアニメを長い歴史で追っていくと見過ごせない変化です。
近年では「クランチロール・アニメアワード」がオープニング映像やエンディング映像などに個別に賞を与える例も出てきており、TVアニメを構成する一つの要素として主題歌映像の力がはっきりと強くなってきているのが分かります。
気軽に動画が観られるようになった現代において、主題歌映像は“本編をいかにして観てもらうか”という問いに対する一つの回答どころか、手落ちにはできない重要な要素になってきているのかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:https://x.com/YAIBA_PR/status/1908444750685798615より
©青山剛昌/小学館/真・侍伝YAIBA製作委員会