去年、TVドラマ『不適切にもほどがある!』がヒットし、略称の『ふてほど』が「2024ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞にも選ばれました。

 同作は2026年にスペシャルドラマ化することが発表されていますが、『ふてほど』と同様に、昨今の厳しいコンプライアンスのもとでは放送できないようなアニメエピソードもいくつかあります。

◆ゴールデンタイムで長時間モザイクが放送される──『こち亀』

 過激な演出の多い『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、『こち亀』)。その中でも、1997413日放送のTVアニメSP1「噂の海パン刑事登場」は、長時間にわたってモザイク処理が施された伝説回です。

 この回では特殊刑事課の海パン刑事(デカ)こと汚野武が初登場。海パンの中からバナナを取り出して食べ始め、派出所は阿鼻叫喚の嵐。

その後、連続強盗犯による立てこもり事件が発生し、汚野とペアを組まされた両津勘吉が出動するのですが……。なんと汚野は強盗犯と対話するためすべての武器を捨て、海パンまで脱いでしまう始末。その姿に強盗犯も人質の女子高生も絶叫し、女子高生は助けにきた汚野に怯え、強盗犯にしがみつくほどでした。

 生まれたままの姿となった汚野の下半身にはモザイク処理が施されましたが、強盗犯のパンチを避けるたび、キワドいポーズを連発。

 両津も海パンを脱がされ、その姿を見た女子高生はついに気絶してしまったのです。

 作画・脚本ともに完成度が高い『こち亀』ですが、いくらモザイクがあっても、すぐに脱いでしまううえに、いつまでも服を着ない汚野の登場回はもう放送できないかもしれません……

◆ひみつ道具の中でも倫理的にヤバい?──『ドラえもん』

 画期的な未来のひみつ道具が次々と登場する『ドラえもん』ですが、1979713日放送のTVアニメ第89話「人間製造機」は倫理的に問題となり、2009年放送のリメイク版は内容が大幅に変更されたほどでした。

 「人間製造機」は身の回りにある物を材料にして人間を作り出す道具。ある日、この道具が未来からのび太の元へ誤配送されてきます。

 出来心で勝手に道具を使ったのび太。すると、生まれたのは超能力を持つ非常に凶暴なミュータントでした。

 駆け付けたドラえもんでも手に負えず、ミュータントはしずかちゃんに襲いかかろうとします。

 最後はドラえもんが「逆時計」というひみつ道具を使ってミュータントが生まれる前まで時間を巻き戻し、問題はなんとか解決しましたが、このエピソードをリアルタイムで視聴していた人たちの中には、トラウマになったとの声もあるのだとか。

 一方、リメイクされた2009918日放送の第157話「大あばれ!のび太の赤ちゃん」では、ミュータントはのび太としずかちゃんの愛情を受けてスクスクと成長し、やがて仲間を探して平穏に暮らせる環境を求めて宇宙へ旅立つという心温まる結末に変わっています。

 同じひみつ道具でありながらまったく違う結末を迎えた同エピソードから、倫理観の変化を感じます。

◆熱帯魚が全滅した驚きの理由は……──『ちびまる子ちゃん』

 『ちびまる子ちゃん』は、まる子が最後に何か失敗をするのがお決まりのパターンですが、199099日放送のTVアニメ第36話「「まるちゃん熱帯魚を飼う」の巻」は、笑えるオチとは言い難い、失敗の域を超える内容でした。

 ある日、姉・さきこが友人から熱帯魚を分けてもらい、熱帯魚を飼えることになったまる子は大喜び。

 まる子は親友のたまちゃんにも熱帯魚を見せ、調子に乗った二人はなんと水槽にザリガニを数匹投入。

 そして、別の遊びに夢中になっているうちにザリガニが熱帯魚をすべて捕食し、全滅させてしまったのです。間もなく事実を知ったさきこはまる子に激怒します。

 実は、原作者のさくらももこ先生も1993年出版のエッセイ『たいのおかしら』(出版社:集英社)に収録されている「グッピーの惨劇」で、自らの過失によりグッピーを全滅させた過去があると告白しています。

 当時中学生だったさくら先生はレコードの楽曲を録音するために、雑音をシャットアウトしようと水槽の電源を一時的に切りました。

 しかし、そのことを数日間忘れてしまい、やっと思い出したころにはグッピーが全滅していたのです。

 家族に罵倒されることをおそれたさくら先生は水槽内で病気が流行ったのではないかとウソをついてごまかしたそうです。

 悪意がないとはいえペットを全滅させるエピソードは、コンプライアンスに厳しい現代では放送NGかもしれません。

◆過激すぎて公式YouTubeでも公開できない?──『笑ゥせぇるすまん』

 謎のセールスマン・喪黒福造が欲望渦巻く大人たちの心の隙間を埋める『笑ゥせぇるすまん』。19891017日放送のTVアニメ第1話「たのもしい顔」は、その過激なオチで視聴者を啞然とさせました。

 会社で部長職を務める頼母雄介は学生時代から誰からも頼りにされるものの、実は周囲からの期待に応えようと疲れ切っていました。

 ある日、頼母が喪黒に悩みを打ち明けると「あなたが安心して甘えられる人を紹介しましょう」と告げられます。

 その後、仕事中に妻が電話で嫁姑問題について愚痴をこぼし、部下が社用車で事故を起こすなどトラブルが続出し、頼母はますます追い詰められます。

 我慢の限界を迎えた頼母は絶叫し、喪黒に助けを求めます。

 優しく受け入れた喪黒は「すばらしい女神を紹介してあげますよ。ドーーーーーーン!」と決めゼリフを口にし、頼母を不思議な空間へと誘います。

 後日、頼母を探しに行った妻子が目にしたのは……ふくよかな中年女性に赤ちゃんのように甘え、生まれたままの姿で抱き合う頼母の姿。

 頼母にはその女性が観音様に見えており、「バブバブか、かんのんちゃま」と言って甘え続けるのでした。

 このエピソードはオチが過激すぎたためか、公式YouTubeでも公開されていません。

 

 ──もしも今放送されたら「不適切にもほどがある!」と炎上必至の、キワドいアニメエピソードの数々。『ドラえもん』のように、大幅に内容を変えて現代に蘇るケースは極めて稀で、多くは二度と地上波では見られないのかもしれません。

〈文/花束ひよこ〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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